みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

電車の乗り方を物理する~その1~

ちょっと変なタイトルですが、電車のうまい(?)乗り方を物理的に考えてみたいと思います。少し車内マナーにも関わる内容です。

 

つり革はきちんと持ちましょう

その1では「立って乗る」ことについて考えていきます。子供の頃には、つり革を持たずにどれだけその場にじっとしていられるか。なんてことをやったりしました。しかし、やはりつり革はきちんと持つべきです。急停車時のリスクが持たない人に比べて 1/50になるとのデータもあるそうです。
 

「前向き」と「横向き」

たまに、進行方向に対して前向きに立っている人がいます。こういう人は「横揺れ重視」になっていると言えます。それに対して、横向き(つり革に正対している)に立っている人は「縦揺れ(進行方向の前後)重視」になっています。さて、どっちが有理なんでしょうか?

揺れというとゆらゆらした運動のように聞こえますが、電車の中では加速度の大きさがどうなのかということになると思います。実際に計測をしたわけではないのですが、

  • カーブやポイントを通過する際の横揺れ
  • 発車や停車をするときの縦揺れ

では、縦揺れの方が加速度が大きいと感じています。カーブやポイントを通過する際にはある程度の減速をすることも加速度が小さい理由になるのでないかと。

ということで、まずは横向きに立つのが揺れに強いと考えます。

 

つり革の持ち方

つり革の「にぎり方」ではなく、つり革を「どこで持つのか」ということを考えます。つり革をきちんと持っていても、揺れたときに予想外に振られている人もいます。何がいけないのでしょうか?

ここは、モーメントを使って考えることにします。一言で言うならば「ある軸を中心とした回りやすさ」ということになります。理科の授業で言えば「てんびんのつり合い」として習うところです。(てんびんの腕の長さ)×(吊るされたおもりによる重力)が等しければ、てんびんはつり合います。この積がモーメントになります。

これを電車の中で置き換えて考えていきます。

 

ポイントは「軸」

軸の先にかかる力を先に考えます。体の上半身が電車の揺れ(加速度)によって振られることになります。大雑把になってしまいますが、この力は

  ma - \mu mg = m(a - \mu g)

 ( m:その人の体重、 a:電車の加速度、\mu:静止摩擦係数、 g:重力加速度)

とします。式まで書きましたが、この力は制御できるものではないと考えます。

すると、人が工夫できるのは「軸との距離」ということになります。軸はつり革のつり下がっている点になります。実際、電車に揺られたときには、ここを中心にグリンとまわってしまいます。そして、軸の先になるのは、体の重心です。この距離をなるだけ小さくできれば、モーメントを小さくできるわけです。

 

体の大きさによっても答えは変わるかも

わたしなりの「答え」は、体の正面につり革を持ち、なるだけ体に寄せるです。体に寄せるというのは、つり革との正面の距離を詰めるという意味です。

本を読んでたり、スマホを触ってたりする人は、つり革の位置がもう片方の手に寄っています。この状態はやはり振られていることが多いと思います。

 

「両手持ち」が最強?

なら、両手でつり革を持っていれば、体に対して線対称になっているし、支える点も 2つになるから強いでしょ。という方もいるかと思います。しかし、わたしの考察からすると「No」です。

というのも、電車が揺られたときには、揺られた方の手しか「軸」としての役割をなしていないからです。結局、片手で持っているのと同じ結果になります。また、両手で持った時点で、正面の距離が空いている状態になりがちです。

 

ちょっと窮屈そうな持ち方にはなってしまいますが、実はこの状態、電車の中でコンパクトになる持ち方(立ち方)にもなっています。背筋が伸びるので、姿勢もいい形になります。マナー的、スタイル的にもおすすめだと思います。

わたしも席が空いていたら、座らせてもらいます。次回は、座り方について考えてみたいと思います。