むかしTRFがこんな曲を歌っていました。明日はセンタ試験2日目、冷え込むようです。そして、晴れていると星空がきれいに見えるものです。しかし、冬の夜にはこんなこともまま起こります。
遠くの音がよく聞こえる
昼間だと近所でしか聞こえないような音が、夜になると遠くから聞こえるときがあります。わかりやすいのはサイレンの音だと思います。この現象の説明をするために、サイレンの音が聞こえることにはどのような物理的要因があるのかを考えてみます。
以下の 3つです。
- 振動の伝わる速さ(音速)の変化
- 振動を伝える物質(媒質)の移動
- 障害物の存在
1.音速の変化
この現象にもっとも寄与している要因です。冬の夜には、地上が冷え込み、上空の方が気温が高くなることがあります。空気中における音速は、
(は摂氏温度)
と表されます。気温が高いほど、音速は速くなるという構図です。
つまり、地上よりも上空の方が音速が速くなるため、音の強さが減衰する前に届いてくる(減衰する時間が経つまでに、遠くへ届くようになる)という結果になります。
音を光に置き換えると、「蜃気楼」という現象として観測されます。いま考えている現象は、音の蜃気楼ということもできるわけです。
2.媒質の移動
これはずばり「風」のことです。音を伝える媒質は空気であり、その空気の移動は風ということになります。流れている川に石を投げ込んだときの波紋が、流れとともに移動しながら広がっていく様子を想像してもらえればいいかと思います。
これは高校物理でもドップラー効果を扱うときに、風速を考慮すること同じです。
冬にはある程度強い風が吹くので、風下にいる場合は遠くの音が伝わりやすいという特徴があります。(強すぎると、風切り音が強くなりすぎますが)
3.障害物
建物があれば、そこで音が反射されるため、音が弱くなります。障害物というのはそれだけではありません。
減衰というのは、
- 音波が球状に広がっていくことで「薄まっていく」こと
- 空気中を伝わっていく中で「吸収されてしまう」こと
の 2つが考えられます*1。前者は、距離に依存しています。後者は、空気の「澄み具合」によって変わってきます。
冬の空気は乾燥しています。つまり、水分が少ないということです。すると、水分に吸収される量が少なくなり、遠くに伝わりやすくなるという特徴が現れると考えられます。
図にすると、以下のようになります。
この事象で一番効果が大きいのは、やはり1.音速の変化です。2.は風が吹くか吹かないか、風上か風下かという条件によりますし、3.は効果の大きさが他に比べれば小さいだろうと考えられます。
このように、考えられる要因を挙げ、その効果の大きさ(影響度)を考えることは理解を深める上で大事だと思います。物理では、影響が小さいと判断されると切り捨てるという考え方をします。しかし、はじめから切り捨てるのではなく、まずは考えて評価してその結果切り捨てるという結果になるだけです。
「答えは一つとは限らない。」社会でもよくあることです。
*1:減衰と吸収と明確に分けている場合もあると思います