いままであまりちゃんと見てはいなかったのですが,なかなか濃い問題ですね.先に書いた式の評価という点でも,いい問題かと思い,少し解いてみました.
総合科目II 第1問A
問題と解答は河合塾さんのサイトから.
http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/14/t02.html
大学で経済学を学び始めた学生さんを相手にしているかのような問題ですね.見慣れない用語があちこちにあるので,意味を解釈するのに一苦労という印象です.冒頭の説明部分をわたしなりに書き下してみると,ざっと以下のようになります.
- 「財の価格:」とは普通に「商品の価格(price)」のことであり,市場の総生産量(quantity)が多くなれば安く,少なければ高くなるという特徴を持っている.その関係は1次関数的になっている.
- 企業iにとって,売上高は ,生産コストは となっており,利潤(もうけ)は となる.
- それぞれの企業について,単位あたりの生産コストは であり,企業1の方がコストが高い(または同じ)という状況にある.
あと,問題文には「所与」という言葉がでてきます.これは,「与えられた条件」とでも読み替えればよいかと思います.
(A-1) 企業2の生産量がわかっているとき,企業1の最適な生産量は?
最適な生産量とは,問題文のとおり利潤を最大化する生産量いうことです.考えるのは2次関数の最大値を求めるだけのことですが,「軸の位置」がどこにあるのかで場合分けが必要になることがポイントです.
場合分けの結果として,
ならば,で企業1の利潤は最大になる
ということがわかります.不等式の各辺を見てみると,
- 左辺は「企業2の生産量によって(企業2だけが生産しているときの量によって)決められた商品の価格」であり,
- 右辺は「企業1における生産コスト」である.
となっています.つまり,「企業1のコストだけで企業2の価格を上回っているようじゃ売れませんぜ.旦那.」ということであり,作るだけ無駄になるので が最適という結果を与えています.至極当然ですよね.
これ以降の問題を解く上でも,この感覚がないと機械的な操作だけで解くのは難しいように感じました.
(A-2) 「均衡」状態の生産量は?
企業2の生産量についても,(A-1)と同様に求めます.よって,同じような場合分けが出てきます.上でも説明したように,や というのは一方の独占状態であって「均衡」と呼べるものではありません.解答では「条件を満たさないので不適」となりますが,実際には「そのような状態は排除される」という解釈の方が正しいかと思います.
(A-3) カルテルが結ばれると,市場ではどうなる?
2つの企業の利潤和は,2変数の関数として与えられます.その組は,だったり,だったり,だったりと選ぶことができます.ここは「2変数の選び方」と「うまい式変形」によって答えを導き出すことになります.
ただ,ヒントはあります.それは上でも出てきている生産コストの優劣です.カルテルを結べば,互いの手の内(生産コスト)を知ることができ,コストのかかる企業1で生産する意味はないと判断されるはずです.ということは,の下で利潤和は最大になるという結果が予測されます.これと変形のしやすさを加味すれば,という2変数を選択することがよいことが見えてきます.
そして,カルテルによって自由な競争がなくなるので,
- 価格は高くなり,
- 生産コストを抑えるため,生産量も抑えられる
という「最小の努力で最大の結果を得る」という結論が導かれます.
(A-4) 正直,これはややこしい問題(>_<)
なんかごちゃごちゃしてややこしいです.そのごちゃごちゃの最後に書かれている文
「各企業iが,他企業jの生産量の組 を所与としたときに,自己の利潤の期待値を最大化する生産量を生産している状態を「均衡」という.」
ですが,ここはその上に書かれている「独立性」「観測できない(企業秘密)」という内容も考慮して,
「相手の企業の生産量は確率による「期待値」として知ることができる.その条件の下で,利潤を最大化する生産量を決める.」
ということになります.また,「生産量の期待値」はあくまでも期待値なので,どの企業でも変わらないという考えも使います.難しいですね.
※2014/4/1:以下の記述は式自体を見間違えていたので,内容も誤りです.すみません.新たな解釈がつけられれば,追記したいと思います.
結果についてですが,
- コストがHigh&Lowという 2つの価格を確率的に選択する場合と
- 特定のコスト(=Low)に決められた場合
とでは,コストが低く抑えられる方がより生産量も少なくなる(それで利潤を確保できる)ということになっています.
他の問題にも手を出してみたいと思ってはいますが・・・