みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

1次変換について,つらつらと・・・~その2~

前回も,大学入試レベルだと結構濃いめの内容だったかもしれませんが,今回はもっと濃くなっていきます(笑).

 

5.線形性

ほんとはこれから始めないといけないのかもしれません.1次変換の「1次」って何?に対する答えになるところです.1次変換は別名「線形写像」とも呼ばれます.ちなみに,Wikipediaで「1次変換」と検索しても,「線形写像」の内容が表示されます.また,線形は英語でlinearと言います.リニアモーターカーのリニアと同じです.

線形性をすごくいい加減でかつ平たい言い方で説明をると,「定数倍の考えと分配法則が成り立つ」ということになります.式で表した方がわかりやすいかと思います.

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そして,この性質を用いると,次のような式を書き下すことができます.

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変換前と変換後だけを抜き出して書いてみると,

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というように,x軸方向とy軸方向の単位ベクトルがそれぞれ変換されているものであることがわかると思います(係数は,それぞれxとyで変わっていない).

ベクトルの問題で「平面上のある点の位置ベクトルは,1次独立である2つのベクトルを用いて表すことができる」というのがありますよね.変換前はx軸,y軸に沿った単位ベクトルで表し,変換後はそれらの単位ベクトルを変換したベクトルを用いて表しているということになります.このとき,変換後の2つのベクトルが直交している必要はありません.

 この単位ベクトル(基底ベクトルと呼ぶ場合もあります)が変換されているというところをちょっと掘り下げてみると,次の固有値固有ベクトルに繋がっていきます.

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6.固有値固有ベクトル

1次変換は「軸が変換されているもの」というイメージを上で述べてみました.たとえば,変換しても,その方向が変わらないベクトル(大きさは変わってもよいとして)を見つけられれば,

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のように,その1次変換に対して「軸がブレない」座標を設けることができるようになります.このときの軸の傾きを表しているベクトルが固有ベクトルであり,大きさを何倍にしているかを表しているものが固有値になります.

さて,この「軸がブレない」ための条件は,変換前・変換後のベクトルの関係から

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が自明ではない解(ベクトルx=(x,y)=(0,0)以外の解)をもつ条件となります.この条件を端的に言い換えると「行列:A-λIの行列式が0になる」となるわけですが,これについて少し突っ込んでおきたいと思います.

 

なぜ行列式が0になればよいのか?

「逆に行列式の値が0でなければ,ベクトルx=(0,0)となるので,条件に反する.」というのが答えの一つです.でも,これでは,なんかしっくりしませんよね.

ここは一度,行列での表現を「ベタな」表現に書き直してみます.

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この「連立方程式」について,(x,y)=(0,0)以外の解が存在するとき,λの値はどうなるか?と考えてみます.2元1次連立方程式の解が,2直線の共有点の座標として与えられることはいいと思います.いまの2直線はともに原点を通るので,共有点のとり方は

  • (x,y)=(0,0)の解をもつか
  • 無数の解をもつか

のいずれかになります.無数の解をもつときとはどういうときか・・・,2直線が一致するときになりますね.2直線が一致するというのは,もとの2つの方程式が同じになってしまうということであり,これはx,yの係数の比が等しいことになります.ということを式に表すと,

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となって,これは行列式の値が0になることと同じになります.

当然,変数が3つ以上の場合もありうるわけですが,2つ以上の方程式が一致するという条件から行列式の値が0になるという条件が得られることになります.

 

さて,このλに関する2次方程式(固有方程式)を解き,それぞれのλに対するx→=(x,y)の関係を求めることで固有ベクトルを求めることができます.さらに,固有値固有ベクトルが求められると,行列のn乗:A^nを求められるようになります.

 

A^nの計算:対角化のカラクリ

A^nを計算するために,対角化という操作をおこないます.行列Aに対して,対角化行列:Pを固有ベクトルを用いて以下のように定義してあげます.

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上の式にはちょっと変な表現を入れています.固有ベクトルを並べて書いていることを強調したくて,このような書き方にしています.当然のことですが,この行列の逆行列と積をとれば,

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単位行列になります.

行列を対角化するには,P^(-1)APという行列を計算します.ここで,先にAPだけを計算してみると

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となります.赤字の箇所は,そもそも固有ベクトルが満たすべき式ですよね.これを強調したくて,ちょっと強引な表現を用いたわけです.さらに,これにP^(-1)をかけるわけですが,先の単位行列になった計算と見比べてみれば・・・

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と対角化され,そこには固有値が現れてくるわけです.

対角化された行列:Dのn乗は簡単に計算できるため,D^nを用いることで,以下のようにA^nが求められます.

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ただ,いつも対角化ができるわけではないです.そんな場合は,推測から数学的帰納法により導くといった方法で求めることができたりします.次回では,このようなものの例として,固有値が特殊な値をとる例を挙げてみます.