今回は,完全順列を考えます.別名,攪乱順列とも呼ばれるもので,こちらの方が意味を理解しやすいようにも思います.問題として考えることにします.メインは場合の数ですが,数列や数学的帰納法の内容も含んでいます.
問題
人が参加するクリスマス会でプレゼント交換をおこなう.それぞれの参加者が,自分が用意したプレゼントには当たらないように配りたい.
(1) のとき,このようなプレゼントの配り方は何とおりあるか?
(2) 人のときにおけるプレゼントの配り方を とおりとする.数列 は,以下の漸化式を満たす.これを示せ.
(3) 数列 の一般項は,以下のように与えられる.これを示せ.
まずは,(1)から
これは,順当に数え上げることを考えます.ただ,やみくもに羅列すると,重複したり,条件を満たしていないものを含めてしまったりします.「辞書式」に挙げていくのがよいかと思います.
4人をA,B,C,Dとし,それぞれが配られるプレゼントの組を(A,B,C,D)のように表すとする(この場合,各自が自分の用意したプレゼントを配られている).題意を満たす組合せは,以下の9とおりである.
(B,A,D,C),(B,C,D,A),(B,D,A,C),(C,A,D,B),(C,D,A,B),(C,D,B,A),(D,A,B,C),(D,C,A,B),(D,C,B,A)
今回のメインは(2)
証明すべき対象は漸化式ですが,完全順列の「並べ方」を考えることで証明をおこないます.参考書やWebなどで,アプローチの仕方が多少異なるものもあります.ここでは,「すでに完全順列になっている 個の並びに,番目を追加する」ことから考えていくことにします.
たとえば,小問(1)で4つの文字の並びを考えていますが,3つ(A,B,C)の並びに4番目(D)を加えることを考えてみてください.は,具体例を挙げて示せばよいです.
i)すでに完全順列になっている 個の並びに,番目を追加する場合
このままでは,番目に数「n」があることになるので,完全順列になりません.数「n」をここから動かすために,前にある 個の数のいずれかと交換します.どの 個の数と交換しても,完全順列ができあがります.交換する数の選び方は,とおりですから,この場合の並べ方の数は とおりとなります.
ii)1個だけ「かぶった」数のある 個の並びに,番目を追加する場合
上の場合だけでは,このパターンが漏れてしまいます.交換する数自体が「番目にk」となっている場合です.このkの選び方は とおりですから,この場合の並べ方は とおりとなります(個の数は完全順列になっていることに注意).
2個以上「かぶった」数がある場合は,番目の数とは1個しか交換できないので完全順列にはなりません.よって,これで場合分けは網羅したことになります.
(3)は計算するだけとはいえ…
一般項の形が与えられているので,漸化式を用いて正しいことを示します.つまり,数学的帰納法を用いることになります.「隣が成り立つこと」を示すことがメインですが,「先頭」も大事だということを忘れないでください.
いまの問題では,一般項がn≧2で成り立つ形になっているので,
- の場合は,自明として示す.
- の場合は,素直に代入をして式を満たすことを示す.
- の場合について,の場合を仮定して,の場合を示す.
という流れになります.
補足(2014/11/15)
上で書いている内容を表にしておきます.
以下に,のときの計算過程を細かめに示しておきます.記号の上限や指数,階乗の計算をきちんとおこなわないといけません.おおまかには,2か所出てくる の和を取る範囲を一度 〜 に合わせておき,余った項をまた に取り込むという離れ業を使います.
記号は「についての和」を計算しているので,は定数項扱い(わかりにくければ,記号の外へ出してしまう)になることにも注意が必要です.
ちなみに,一般項の式の両辺を で割ると,左辺の は「すべての配り方のうち,自分の用意したプレゼントには当たらない配り方になる確率」を求めていることになります.一度,どこかで勉強してないと,解くのは難しい問題かもしれませんね.