みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

プレゼント交換会の数学~完全順列~

今回は,完全順列を考えます.別名,攪乱順列とも呼ばれるもので,こちらの方が意味を理解しやすいようにも思います.問題として考えることにします.メインは場合の数ですが,数列や数学的帰納法の内容も含んでいます.

 

問題

  n人が参加するクリスマス会でプレゼント交換をおこなう.それぞれの参加者が,自分が用意したプレゼントには当たらないように配りたい.

(1)  n = 4のとき,このようなプレゼントの配り方は何とおりあるか?

(2)  n人のときにおけるプレゼントの配り方を  D_nとおりとする.数列  \{ D_n \}は,以下の漸化式を満たす.これを示せ.

  D_1 = 0, \  D_2 =1,

  D_n = (n-1) (D_{n-1} + D_{n-2}) \ \ (n \geqq 3)

(3) 数列  \{ D_n \}の一般項は,以下のように与えられる.これを示せ.

  D_n = \begin{cases} 0 \ \ (n=1) \\ \\ \displaystyle{ \sum_{k=2}^n \frac{(-1)^k}{k!} n! } \ \ (n \geqq 2) \end{cases}

 

まずは,(1)から

これは,順当に数え上げることを考えます.ただ,やみくもに羅列すると,重複したり,条件を満たしていないものを含めてしまったりします.「辞書式」に挙げていくのがよいかと思います.

4人をA,B,C,Dとし,それぞれが配られるプレゼントの組を(A,B,C,D)のように表すとする(この場合,各自が自分の用意したプレゼントを配られている).題意を満たす組合せは,以下の9とおりである.

(B,A,D,C),(B,C,D,A),(B,D,A,C),(C,A,D,B),(C,D,A,B),(C,D,B,A),(D,A,B,C),(D,C,A,B),(D,C,B,A)

 

今回のメインは(2)

証明すべき対象は漸化式ですが,完全順列の「並べ方」を考えることで証明をおこないます.参考書やWebなどで,アプローチの仕方が多少異なるものもあります.ここでは,「すでに完全順列になっている  n-1個の並びに, n番目を追加する」ことから考えていくことにします.

たとえば,小問(1)で4つの文字の並びを考えていますが,3つ(A,B,C)の並びに4番目(D)を加えることを考えてみてください. D_1, \ D_2は,具体例を挙げて示せばよいです.

i)すでに完全順列になっている  n-1個の並びに, n番目を追加する場合

このままでは, n番目に数「n」があることになるので,完全順列になりません.数「n」をここから動かすために,前にある  n-1個の数のいずれかと交換します.どの  n-1個の数と交換しても,完全順列ができあがります.交換する数の選び方は, n-1とおりですから,この場合の並べ方の数は  (n-1) \cdot D_{n-1}とおりとなります.

ii)1個だけ「かぶった」数のある  n-1個の並びに, n番目を追加する場合

上の場合だけでは,このパターンが漏れてしまいます.交換する数自体が「 k番目にk」となっている場合です.このkの選び方は  n-1とおりですから,この場合の並べ方は  (n-1) \cdot D_{n-2}とおりとなります( n-2個の数は完全順列になっていることに注意).

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2個以上「かぶった」数がある場合は, n番目の数とは1個しか交換できないので完全順列にはなりません.よって,これで場合分けは網羅したことになります.

 

(3)は計算するだけとはいえ…

一般項の形が与えられているので,漸化式を用いて正しいことを示します.つまり,数学的帰納法を用いることになります.「隣が成り立つこと」を示すことがメインですが,「先頭」も大事だということを忘れないでください.

いまの問題では,一般項がn≧2で成り立つ形になっているので,

  •  n=1の場合は,自明として示す.
  •  n=2, \ n=3の場合は,素直に代入をして式を満たすことを示す.
  •  n \geqq 4の場合について, k-2, \ k-1の場合を仮定して, kの場合を示す.

という流れになります.

 

補足(2014/11/15)

上で書いている内容を表にしておきます.

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以下に, n \geqq 4のときの計算過程を細かめに示しておきます. \Sigma記号の上限や指数,階乗の計算をきちんとおこなわないといけません.おおまかには,2か所出てくる  \Sigmaの和を取る範囲を一度  k = 2 n-2に合わせておき,余った項をまた  \Sigmaに取り込むという離れ業を使います.

 \Sigma記号は「 kについての和」を計算しているので, nは定数項扱い(わかりにくければ, \Sigma記号の外へ出してしまう)になることにも注意が必要です.

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ちなみに,一般項の式の両辺を  n!で割ると,左辺の  \displaystyle{ \frac{D_n}{n!} }は「すべての配り方のうち,自分の用意したプレゼントには当たらない配り方になる確率」を求めていることになります.一度,どこかで勉強してないと,解くのは難しい問題かもしれませんね.