みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「歩く」を物理してみる

いろいろと気になるネタはあるのですが,更新が滞ってます.今回は歩くことを物理してみたいと思います.とはいっても,大雑把な内容です.

「歩くのが,ほかの人よりも速いですか?」

健康診断のアンケートで,このような問いを見かけます.みなさんは,こう聞かれるとどう答えますか?一言で「速い」といっても,

  • 歩くピッチが速い(1歩1歩の時間間隔が短い)
  • 歩く速さが早い(道のり÷時間が大きい)

という2とおりのイメージに分かれるのかな?と思っています.

やはり,(速さ)=(道のり)÷(時間)?

End-to-End(たとえば,駅から会社・学校まで)の時間を考えるのであれば,こちらではないかと思います.これを運動の要素に置き換えれば,

 (速さ)=(歩幅)×(ピッチ)

ということになります.マラソンでは,ピッチ走法やストライド走法という呼び方で区別されますね.
歩幅が大きくなれば,足運びの分だけ1歩の時間間隔も長くなります.歩幅が小さくても,ピッチが速ければ,その分だけ有利になります.どちらが有利とは決められません.でも,まわりを見ていると,歩幅は小さ目でピッチが短い人が多いように思います.なぜでしょうか?

1歩の大きさの違い

1歩が大きくなると,それだけ蹴り出す力も大きくなければならないと考えられます.1歩が大きくなるというのは,後ろ足を蹴り出すときにおける脚と地面の角度が小さくなる(それだけ足を大きく開いている.または,後ろ足がそれだけ置いて行かれる)ことになります.蹴り出すための摩擦力を稼ごうと思うと,大きな力を要することになります.わたしは大きめの歩幅で歩くタイプなのですが,滑りやすい路面だと,たまに後ろ足が空回り気味になるときがあります.
そう考えると,筋力が小さくて済むので,歩幅の小さい人が多いのかな?というのも納得という感じです.逆に,脚の筋力をつけるには,大股で歩くことが効果的とも考えられます.


ピッチが速いことの欠点

これは,実体験からの結論なのですが,ピッチが速いと

  • 制御が効かない(急に止まれない)
  • 腕の振りが大きくなる

ということが挙げられます.1つ目については,男女問わずピッチが速ければ速いほど制御が効かない感があります.避ける行動すらできないぐらいなので(笑).
2つ目についてですが,これ自体が欠点というわけではありません.ただし,腕の振りが「横振り」になる人がいるのです.個人的な感覚ですが,このような振り方は女性に多いようです.おそらく,肩の構造(なで肩)によるものではないかとみています.

腕の振りが大きくなることを物理っぽくしてみる

腕の長さは身長からほぼ決まるようで,身長160cmならば腕の長さは68cmぐらいになるそうです.68cmの振り子(単振り子)の周期を計算してみると,

 \displaystyle{ T=2 \pi \sqrt{\frac{\ell}{g}} \simeq 1.66}[秒]

となります.また,ピッチの間隔は1[秒]が平均的だそうです.腕が前に出て,後ろに行って,また前に戻るまでに2歩進みます.もしピッチの間隔が0.8[秒]ぐらいだとすれば,2歩で1.6[秒]と上の値に近くなります.つまり,強制振動によって,腕の振りが増幅された結果かもしれないということです.*1


ちょっと強引ですが,「歩幅」を車に置き換えると

タイヤ1転がりというところでしょうか?タイヤの直径が大きければ,「歩幅」も大きくなるということです.そして,タイヤの直径が大きくなると,転がすために必要となる力(トルク)も大きくなります.
むかし,車屋さんの人に,「レンタカーのタイヤは標準品のままで,大きくしたり(インチアップ)はしない.それは燃費のため.」ということを聞いたことがありました.停車している状態からの出だしのパワーが違うからなんでしょうね.このネタを書いていて,ちょっと思い出したので,オマケ的に書いてみました.


通勤・通学では,まわりの「流れ」というのもあるので,どうしてもこのような歩き方になってしまうのだと思います.たまには,ゆったり歩いてみると,違った発見があっていいのかな?と思います.もちろん,歩きスマホはダメですよ(笑).

*1:ここでは周期で考えていますが,振動数:\omega = 2 \pi /T =\sqrt{g/ \ell}が腕の固有振動数であり,歩く振動数に近くなっているという解釈です