みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

ガウス記号のおまけ~その2~

では,濃い目の2問目です.

問題2

 q > pを満たし,互いに素である自然数  p, \ qに対して,数列: \{ a_n \}
  \displaystyle{ a_n = n \cdot \frac{p}{q} - \left[ n \cdot \frac{p}{q} \right] \ \ \ (n = 1, \ 2, \ 3, \cdots) }
で定める.
(1) 自然数  n, \ mについて, n-m qで割り切れるとき, a_n = a_mであることを示せ.

(2)  a_1, \ a_2, \ \cdots , a_qは相異なる  q個の数であることを示せ.また,
  \displaystyle{ a_1 + a_2 + \cdots + a_q = \frac{q-1}{2} }
となることを示せ.

(3) 次の値を求めよ.
  \displaystyle{ \lim_{n \to \infty} \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n} }

確か,赤チャートかなんかに載ってた問題だったと思います.どちらかというと,ガウス記号以外の考え方がいろいろと出てくる私が思うにいい問題です.

まずは「大きく」とらえて

数列の一般項は, x - [ x ] = x - ( xの整数部分)という形をしています.つまり,一般項は  \displaystyle{ n \frac{p}{q} }の小数部分を表していることになります.ですので,一般項は0以上1未満の間の値をとることになります.

問1

単純に,n=m+kq ( k自然数で, n > m)とおくことで簡単に示すことができます.
「差が  qの倍数であれば,いつも同じ値になるということ」を意味しており,数列は周期: qでグルグルと回っていること(周期性)を表しています.

問2の前半

まずは,前半部分の「相異なる  q個の数であること」を示します.ひとまず  1 \leqq m < n \leqq qと置いて,差:a_n - a_mを考えてみます.
  \displaystyle{ a_n - a_m = (n - m) \cdot \frac{p}{q} - \left( \left[ n \cdot \frac{p}{q} \right] - \left[ m \cdot \frac{p}{q} \right] \right) }

これが 0にならないことを示せればいいわけです.たとえば,後ろの括弧は整数,前の項は非整数となりそうなので,そのあたりを示せれば「0という整数にはならない」ことが示せそうです.ただ,ちょっと論証に弱い感じもあります.
そこで,ある意味「都合のいい置き方」をしてみます. np mp自然数ですから,これを  qで割ったときの商とあまりを考えてみます.
  \begin{cases} np = Q_n \cdot q + R_n \ \ (1 \leqq R_n < q) \\ mp = Q_m \cdot q + R_m \ \ (1 \leqq R_m < q) \end{cases}

このようにすると,差は以下のように書き換えられます.
  \begin{align} a_n - a_m &= \frac{R_n - R_m}{q} - \left( \left[ \frac{R_n}{q} \right] - \left[ \frac{R-m}{q} \right] \right) \\ &= \frac{R_n - R_m}{q} \end{align}

後ろの項は 0 \leqq R_n/q < 1,\ 0 \leqq R_m/q < 1であることから,0となります.
そして,この差が0になるならば R_n=R_mとなるわけですが,そうすると  n-m qで割り切れることになってしまいます.((1式)と  p, \ qが互いに素であることより)
よって背理法により,a_n \neq a_mであることが示されます.

問2の後半

実は,上で考えた(1式)の形が効いてきます.この形を代入すると,一般項は
  \displaystyle{ a_n = \frac{R_n}{q} - \left[ \frac{R_n}{q} \right] \frac{R_n}{q} }

と,(なんとか)/qという形になることがわかります.a_q=0であることは明らかなので,
 a_1, a_2, \ldots ,a_{q-1}相異なる  q-1個の数は,
 1/q, 2/q, \ldots , (q-1)/q  q-1個の数のいずれかの値をとる

ことになり,順番はどうであれ,1:1対応していることがわかります.
よって,求める和は以下のようになります.
  \begin{align} a_1 + a_2 + \cdots + a_q &= \frac{1}{q} + \frac{2}{q} + \cdots + \frac{q-1}{q} + 0 \\ &= \sum_{i=1}^{q-1} \frac{i}{q} \\ &= \frac{1}{q} \cdot \frac{1}{2} (q-1)q \\ &= \frac{q-1}{2} \end{align}

問3

問2では,a_1, a_2, \ldots , a_qの和を考えているだけで,一般の  nについて考えているわけではありません.「一般の n」というのは, qで割ったあまりが決まっていないということです.その形を置いて,まずは書き直してみることにします.
問1と似ていますが,n=kq+r\ (0 \leqq r < q)と置いてみます.すると,分子部分は
  \begin{align} & a_1 + a_2 + \cdots + a_n \\ &= a_1 + a_2 + \cdots + a_{kq+r} \\ &= \{ a_1 + a_2 + \cdots + a_q \} + \{ a_{q+1} + \cdots + a_{2q} \} + \cdots \\ & \ \ +\{ a_{(k-1)q+1} + \cdots a_{kq} \} + \color{blue}{\{ a_{kq+1} + \cdots + a_{kq+r} \}} \\ &= k \cdot \frac{q-1}{2} + \color{blue}{\{ a_{kq+1} + \cdots + a_{kq+r} \}} \end{align}

となります.「 q個のパックが  k個できている」ことに注目です.あとは,青い部分の和が求まればいいのですが,問2の後半でも書いたように,順番が決まっていないので単純に書き下すことができません.
そこで「はさみうち」を用いるわけです.
  \displaystyle{ k \cdot \frac{q-1}{2} \leqq a_1 + a_2 + \cdots + a_n < (k+1) \cdot \frac{q-1}{2} }

あとは, k nの式に書き換え,両辺を  nで割って極限値を求めれば終わりです.
結果は,以下のようになります.
  \displaystyle{ \lim_{n \to \infty} \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n} = \frac{q-1}{2q} }

ちょっとコメント

問1の解答に入る前に,「一般項は  n \dfrac{p}{q}の小数部分を表している」と書きました.そして,それは (なんとか)/qの形をしていると問2で示しています.ところどころで,商とあまりの式を出しているのでピンとくる人もいるかと思いますが,
この一般項は「 qで割ったあまり」を表しているととらえることができます.

「あまり」であることを意識すると,

  • 問1の結果→あまりの「周期性」
  • 問2前半の結果→あまりの「一意性」(周期の中では同じ値をとらない)

ということもすんなり理解できるようになります.逆に,このことが意識できていないと,問3のような解答を導くのは難しいようにも思います.

そして,「異なる  q-1個の数に, q-1個の入れ物(候補となる数)があると,1:1対応の関係になる.」という点も大事な考え方です.1:1対応を使って,集合を数え上げるというのは,しばしば用いられる手法です.

この問題は,ガウス記号の問題というよりは,あまりに関する問題という方が正しいのかもしれません.ガウス記号を扱う問題では,この小数部分という形で出てくるものがしばしばあるようです.そして,具体的に書き下すなどの遠回りをしつつ,その数本来の性質(意味)を理解しながら解いていくことが多いような印象を持ちました.