みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

どっちが大きい?~「aのb乗」と「bのa乗」~ (前半)

唐突ですが,a^bb^aの大小関係を考えてみたいと思います.数に対する条件も含めて,問題として書くと

問題

0 < a < bである2つの実数 abについて,a^bb^aの大小関係を示せ.

指数関数の基本と問題への準備

底が同じであれば,指数法則の大小関係を使いますよね.って,一応,書いておくと,

m < nなる実数について,底を aとして,
 0 < a < 1のとき,a^m > a^n
 a = 1のとき,a^m = a^n = 1
 1 < aのとき,a^m < a^n

と底の値が 1よりも小さいか大きいかで場合分けになります.
「底が 1より小さいとグラフは右下がり,1より大きいと右上がり」とグラフの形で覚えておくといいかなあと思います.

さて,いまの問題では底が異なっています.となると,やはり「底をそろえる」のが基本となってきます.指数関数と対数関数が逆関数の関係*1になっていることを思い出せば,
  a^{\log_{\ a} x} = x

と底をそろえることができるようになります.b^aについても同じようにすると
  b^a = a^{\log_{\ a} {b^a}} = a^{a \cdot \log_{\ a} b}

となります.ということは,ba \cdot \log_{\ a} bの大小関係を調べていくことになります.

回答の方針

まず,底 aの値で場合分けすることを考えると,
 i) 0 < a < 1のとき,b > a \cdot \log_{\ a} b ならば  a^b < b^a
 ii) a = 1のとき,1^b = 1 = ab^1= b の大小比較となるから  a^b < b^a
 iii) a > 1のとき,b > a \cdot \log_{\ a} b ならば  a^b > b^a

i)とiii)については,ba \cdot \log_{\ a} bの大小関係自体を慎重に調べる必要があります.さらなる場合分けになってくることを考えておかなければなりません.場合分けの中で,さらに場合分けとなってくるので,実際の試験であれば,上のように大枠から整理しておくことが大事です.

ba \cdot \log_{\ a} bの大小関係なのですが,a < bという条件はあるものの対数も含まれているので,単純ではなさそうです.で,どうするのかというと,
  \displaystyle{ f(x) = x - a \cdot \log_{\ a} x = x - \frac{a}{\log a} \cdot \log x }

という関数を  x > aの範囲で考えます.底の書いていない対数は,自然対数 eを底としたものを表しています.
大小関係ということは,当然微分を使うわけです.x微分すると,
  \displaystyle{ f'(x) = 1 - \frac{a}{\log a} \cdot \frac{1}{x} }

となります.先に自然対数に底を変換していたのは,この微分を出しやすくするためです.あと, f(a) = 0 であることも忘れずに.

i)  0 < a < 1のとき

 \log a < 0であることに気づけば,つねに  f'(x) > 0(単調増加)となることがわかります.よって,大小関係もつねにb > a \cdot \log_{\ a} bであり,bが 1よりも大きい・小さいに関係なく, a^b < b^aとなります.

iii)  a > 1のとき

今度は単純ではありません.方程式: f'(x) = 0の解は  x = a/\log a(この値を \alphaとおく)となります.この点は最小値を与える点となるのですが,この点が  x = aとどういう位置関係にあるのかがポイントになります.というもの,いま,大小関係を  x > aという範囲で考えているからです.覚えていましたか?
つまり, \log aが 1よりも大きいのか,小さいのかという話になってきます.先に,グラフの概形を示してしまいます.
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グラフが描ければ,大小関係はほぼわかったも同然なのですが,今回はここまでにします.グラフの概形がこのようになることは,次回書いていきます.そして,なぜこんな(面倒くさい)問題を考えてしまったのか.その理由についても書こうと思います.

*1:今年のセンター試験にも出てましたよね