前回の続きです.まずは,グラフの概形から.
iii) のときのグラフの概形
ポイントとなるのは,
- であること
- (最小値が 0以下)であること
- と の大小関係
の3つです.そして,グラフの概形を描いた後に,そもそも の範囲で大小関係を考えていることに立ち戻っていきます.
2. であること
ベタに最小値を書き下すと,
ここで,なる関数を考えると,であることが示されます.よって,となり,は 0以下の値をとることが示されます.
3. と の大小関係
そもそも なので,
のとき,
のとき,
のとき,
となります.の範囲を考えるとき,一番目のケースで の値による場合分けが,さらに発生します.二番目,三番目のケースについては,bの値に関係なく(の条件により),であることがわかります.
「一番目のケース」の場合分け
前回示したグラフの概形にて,すでに記していますが,方程式:の自明ではない解(とは異なる解)を *1とおきます.
ということで,
のとき,
のとき,
のとき,
となります.
この様子を確認できる簡単な具体例を挙げておきます.のとき,方程式:の自明ではない解は,と与えられます.このことから,
のとき,
のとき,
のとき,
となっています.
結局,答えは
以下のようになります.
のとき,
のとき,
(ただし,は,方程式:の ではない解)
2016/10/05追記:いまさらなのですが,この条件式は単に を書き換えただけなんですよね.そう思うと,なんかがんばった割にはいまいちな感じもしなくもなく…
の概形(2016/04/13追記)
ちょっとグラフを描いてみました.
グラフは,おおよそ の範囲で描いています.また,緑色の点線は直線:を表しており,これは自明な解です.
このグラフの特徴としては,以下のようなことが挙げられます.
- 次の3点を通っています.
- と を入れ替えても同じ式が与えられるので,このグラフは直線:に線対称になっています.そして,このグラフの漸近線は,,となっています.
このグラフの描き方については,そこで使ったある方法と合わせて,次回書きたいと思います.
この問題を考えるに至った経緯
はじめは,次の内容について書こうと思っていました.
問題 と の大小関係を示しなさい.
ただ,これだけを書かれると,実は大変な問題になってしまいます.というのも,という大小関係を示さないといけないからです.これは,以下のような例題でも同じことです.
例題 の小数部分を示せ.
いきなり,「の整数部分は 2だから」なんて書くとバッテン(か,減点か)を喰らうことになります.「より,となるから」とでも書かないといけません.上の と についても同じことです.「だいたいの値は,これぐらいだから」なんてするといけないわけです.
そこで,2016年東大前期理系数学第1問の内容がいい働きをしてくれます.
2016年東大前期理系数学第1問(概要)
を示せ.
ここに,を代入すると,あっさりと ということが言えてしまいます.先に,長々と大小関係を示したので,と答えを出すことができます*2.
さらに, と と書きましたが,と と書くと,どこかで見たことありませんか?そうです,今年京大で出た素数の問題に出てきた項です.そのイメージが残っていたのも,このネタを書いた理由になっています.
へびの足(2016/04/05追記)
そもそも という条件であったのに,となる値が存在することは最初ちょっと意外でした.しかし,底が小さいときには であり,底が大きくなってくると となるのであれば,どこかで等号成立となるところがあるはずですよね.簡単な具体例があったのは,このことを理解するのにいい助けになりました.
最大値や最小値を考えるときにも,同じような考え方(どこかで「均衡」や「転換」となるところが存在する)は,感覚的ですが役に立つと思います.