みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

ちょっと面倒くさい 1次変換の問題 ~その2~

前回の続きです.問3を考えていきます.まずは,問題文を改めて.

 3. 直線 \ellが原点を通らないならば,点 P_1は直線 \ell上にあることを示せ.

なんか,似たような文章がすでに出てきてましたよね.

 2.  f : P_0 \rightarrow P_1となる点 P_0が存在すれば,点 P_1は直線 \ell上にあることを示せ.

2つとも後半は同じことが書かれているので,前半部分をくっつけて,

 直線 \ellが原点を通らないならば, f : P_0 \rightarrow P_1となる点 P_0が存在する.

これを示せばよいことになります.

「直線 \ellが原点を通らないならば」という条件をどう扱う?

問3を解く上での第一のポイントです.直線  \ellを直線  P_2P_3と言い換えて,これが原点を通らないと考えれば,
 2つのベクトル  \overrightarrow{p_2} \overrightarrow{p_3}は,1次独立である.

ことがわかります.すると,点  P_0が存在するならば,この点は原点とはならないので,
  \overrightarrow{p_0} = \alpha \cdot \overrightarrow{p_2} + \beta \cdot \overrightarrow{p_3}

と表すことができます.そして, \alpha, \ \betaがともに 0とならないような値をもつことが示されれば,点  P_0が存在することが示されます.結果,点  P_1が直線  \ell上にあることが示されます.

とりあえず,わかっている条件に当てはめてみる.

上で示した 1次結合の式に  A^2を左からかけて
  \overrightarrow{p_2} = \alpha \cdot \overrightarrow{p_4} + \beta \cdot \overrightarrow{p_5}

とし, \overrightarrow{p_4}, \ \overrightarrow{p_5}をそれぞれ以下のように書き直します.
  \overrightarrow{p_4} = \overrightarrow{p_2} + s \cdot \left( \overrightarrow{p_3} - \overrightarrow{p_3} \right) = (1-s) \cdot \overrightarrow{p_2} + s \cdot \overrightarrow{p_3}
  \overrightarrow{p_5} = \overrightarrow{p_3} + s \cdot \left( \overrightarrow{p_4} - \overrightarrow{p_3} \right) = s(1-s) \cdot \overrightarrow{p_2} + (s^2-s+1) \cdot \overrightarrow{p_3}

これらを代入すると,
  \{ (1-s) \alpha + s (1-s) \beta -1 \} \cdot \overrightarrow{p_2} + \{ s \alpha + (s^2-s+1) \beta \} \cdot \overrightarrow{p_3} = \overrightarrow{0}

となります.すると,2つのベクトルが 1次独立であることから, \alpha, \ \betaは実数  sに対して,
  \begin{cases} (1-s) \alpha + s (1-s) \beta = 1 \\ s \alpha + (s^2-s+1) \beta = 0 \end{cases}

を満たすことになります.

解が存在することを示す

実数  sに対して, \alpha, \ \betaが存在することを示します.この連立方程式が解を持つには, \alpha, \ \betaの係数の比が等しくならないことが条件になります.*1 ここが第二のポイントになります.
式に表すと,
  (1-s) : \left\{ s(1-s) \right\} \neq s : (s^2-s+1)

となります.この式を整理すると  (s-1)^2 \neq 0となり,そもそもの条件から  s \neq 1なので,上の式はつねに成立します.結果,この連立方程式はつねに解をもち,かつ  (\alpha, \beta) \neq (0,0) であるので,点  P_0が存在することが示されます.
具体的に解を示すという方法もありますが,解の存在までが示されればよいです.
ちなみに s=1のときは,\overrightarrow{p_2} = (\alpha + \beta) \cdot \overrightarrow{p_3}となり,直線 P_2P_3は原点を通ることになります.


1次独立や連立方程式の解の存在など,先の問いとは少し異なるところから攻めないと落とせない問いでした.前回,今回とある程度式は書いてますが,きちんとした解答にはなってません.そのあたりをきちんと書いていく練習も大事だと思います.いつものことながら,もっとうまい解法があるかもしれません.

*1: \alpha \beta平面において,2直線の傾きが等しくならない.すなわち,平行にならないことを考えている.いまの場合,定数項が異なっている(y切片が異なっている)ので,傾きだけを考えればよい.同じような話は, 1次変換の補足~その2~ - 理系男子の独り善がりでもしています.