今夏の自由研究というわけではないですが,高校物理の波動で出てくる「うなり」についてです.公式も「うなりの回数」を求めるぐらいにしか使わないので,あまり注目されないところではあります.今回は,ここを突いてみようと思います.
途中,三角関数の加法定理についても凝縮した感じで触れています.
まずは,基本から
うなりは,言葉で表すとこんな感じでしょうか?
「振動数のわずかに異なる音波が重なって,周期的な音の大きさの変化が聞こえる現象」
下図のように,ほとんど同じに見える 2つの音波でも重ね合わせると,一番下のように振幅の強弱(大小)が現れるようになります.音の大きさは振幅の大きさの 2乗に比例するので,この様子がうなりとなって聞こえることになります.
2つの音波の周波数をそれぞれ とすると,うなり(beat)の振動数(1秒あたりに起きるうなりの回数):は
と求められます.
この式の導出過程を以下に記しておきます.
1. わかりやすいところで,2つの音波の「音波1の山 と 音波2の山」が出会うところから考えます.
2. 次に「音波1の山 と 音波2の山」が出会うまでの間,2つの音波の山は徐々にずれていきます.(周波数が異なるから)
3. 次に山と山が出会ったときには波打つ回数の差がちょうど「1」となるようになっています.もし,差が「2」とか「3」のときは,その前に「1」となっているところがあるはずです.
4. このことを式に表してみます.うなりの周期(=うなりの山から山までの時間)を とすると,
音波1が波打つ回数は
音波2が波打つ回数は
となり,これらの差が「1」となるので,
うなりの振動数は であるので,先に示した結果となります.
本題に入る前の準備運動(?)
ここからは,2つの音波を正弦波として扱います.つまりは,の関数として扱うということです.
準備として,三角関数のおさらいをしておきます.
正弦波でうなりの様子を探る
2つの音波を表す式を
とおいてみます.振幅を ,2つの音波の周波数をそれぞれ とし,わかりやすいように原点 を位相がそろった点の一つとしています.
合成波は,単純な足し合わせなので,和積公式を用いて,
赤字の部分が合成波の「振幅」に該当する部分になります.そして,この振幅も時刻とともに変化するものとなっています.最初に書いたように音の大きさは振幅の 2乗に比例するので,倍角公式を用いて,
となり,音の大きさは周波数:で変化することがわかります.
と式の上では導かれましたが,なんか気持ち悪くないですか?確かに「2乗」すると周波数は になりましたが,合成波の式における振幅の周波数は と半分になっています.これはどういうことでしょうか?
この問いへの答えと続きの発展は,次回に記すことにします.