理系男子の独り善がり

仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

植木算の立体バージョン?~オイラーの多面体定理~

「人は多面体である.」なんて言葉は,人の性格を説明するときに使われるものだったりしますが,今回は多面体(平面で囲まれた立体図形であり,かつ穴がなく凹んでいないもの)に関するネタです.

話のきっかけ

先日,Eテレを見ていたら「又吉直樹のヘウレーカ!」という番組で,話のメインではなかったのですが正多面体の話が出ていました.そこからこのネタを書こうと思った次第です.

小学生でも理解できるかも?

先にオイラーの多面体定理を以下に記しておきます.

平面で囲まれ,かつ穴がなく凹んでいない多面体について,以下の式が成り立つ.
  \color{red}{V - E + F = 2}

ここで,Vは頂点(Vertex)の数, Eは辺(Edge)の数, Fは面(Face)の数を表している.

わたしの中で,このオイラーの多面体定理は「植木算の立体バージョン」というイメージを持っています.1次元から3次元へ発展させていきながら,この内容を追っていきます.

Step1:1次元

これが,まさに植木算です*1.1次元では面というものがなく頂点と辺しかないですが,点の間に辺があるので,
  V - E = 1

という式に書き下すことができます.面の数について  F = 0とすれば,
  V - E + F = 1

と書き下すこともできます.

Step2:2次元

1次元で出てきた折れ線の両端(両端の頂点)をくっつけると,1つの「面」が出来上がります.このとき,頂点が 1つ減って,面が 1つできる(増えた)ことになります.ちょっと違った見方をすれば,頂点が 1つ減ることで頂点と辺の数が同じになり,新たに面が 1つできたという表現もできます.
この様子を 1次元の式に当てはめてみると,
  \begin{align} (V-1) - E + (F+1) &= 1 \\ V - E + 1 &= 1 \end{align}

となります.
このとき,この 2次元の図形は「多角形」になっています.この多角形についても,穴のない,凹んでいないものを考えることとします..

Step2.5:三角形の張り合わせ

2次元のときに記した式は,当然のことながら多角形の一つである三角形についても成り立ちます.1つの三角形に,もう 1つ三角形をくっつけてみると*2,もとの三角形に対して,頂点が +1,辺が -2,面が +1となるので,
  \begin{align} (V+1) - (E+2) + (F+1) &= 1 \\ V - E + F &= 1 \end{align}

で関係式は変わりません.
さらに,くっつけた辺を取り去ることを考えると,頂点が±0,辺が -1,面も -1となるので,
  \begin{align} V - (E-1) + (F-1) &= 1 \\ V - E + F &= 1 \end{align}

とやはり関係式は変わりません.

上でしたことは,2つの三角形をくっつけて,くっつけた辺を取り除いたという操作なので,できている図形は四角形です.しかし,この操作を繰り返すと,五角形でも六角形でもこの関係式が成り立つことがわかります.さらに,五角形に六角形をくっつけるような操作をしても,上の関係式は変わらず成り立ちます.
ここまできて,やっと 2次元の話が完了です.

Step3:3次元

上の Step2.5でしている「くっつける」操作を繰り返していきます.ただし,ちょっとずつ角度をつけて曲げながらくっつけることで,立体にしていきます.完全に立体(多面体)にするまでの間(閉じた図形になるまでの間)は,上の関係式が成り立ちます.
そして,「最後の 1枚」をくっつけるときがクライマックスです.

最後の 1枚をくっつけるとき,頂点も辺もすでにできている図形に存在するものなので,増えるのは面だけです.「空いている穴に最後の面をつけた(ピースをはめこんだ)」という見方でもいいと思います.面が +1されただけなので,
  \begin{align} V - E + (F+1) &= 1 \\ V - E + F &= 2 \end{align}

となり,オイラーの多面体定理の式が現れました.

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辺の端と端をくっつけて 1次元→2次元,面の端と端をくっつけて 2次元→3次元というように,植木算の式から「くっつける」ときの増減を考えることで,この多面体定理の式が出てきています.

正多面体は 5種類しかない.

正多面体は,正四面体,正六面体,正八面体,正十二面体,正二十面体の 5種類しかありません.
このことを示すのは,さほど難しくはありません.といっても,高校数学までの範囲で示せますよ.って意味でです.以下の 2つの方針があります.

  1. 上の多面体定理の式を利用する.
  2. 1つの頂点でくっつけることができる正多角形の数を調べる.

内容がわかりやすいのは 2.の方なのですが,「正〇面体」であるということを知るには 1.の内容も理解する必要があります.

わかりやすい 2.の方から

1つの頂点でくっつける(寄せ集める)ことができる頂角の和が 360度以上にならないことを調べます.
n角形の頂角の大きさは, \displaystyle{ \frac{180(n-2)}{n} }であるので*3,それを 1つの頂点に  k個くっつけるとすると条件式は
  \begin{align} \frac{180(n-2)}{n} \cdot k &< 360 \\ (n-2)(k-2) &< 4 \end{align}

 n \geqq 3, \ k \geqq 3であることも考慮すると,この不等式を満たす整数解は,
  (n,k) = (3,3), \ (3,4), \ (3,5), \ (4,3), \ (5,3)

となり,5種類しかないことがわかります.

ちょっと難しい 1.の方は

多面体定理の式だけでは,ちょっともの足りないので,それぞれの面をバラバラにしたときの「のべの数」と合わせて考えます.

辺の「のべの数」
バラバラにしたときの辺の「のべの数」は, nF個である.
2つの辺をくっつけて正多面体をつくるので,正多面体全体での辺の数は  nF/2個となるから
  \begin{align} \frac{nF}{2} &= E \\ F &= \frac{2E}{n} \end{align}

頂点の「のべの数」
バラバラにしたときの頂点の「のべの数」も  nF個である.
1つの頂点に  k個くっつける(バラバラだった  k個の頂点が重なる)とすると,正多面体全体での頂点の数は  nF/k個となるから,
  \begin{align} \frac{nF}{k} &= V \\ V &= \frac{2E}{k} \end{align}
 ( nF=2Eを代入しています)

これらを多面体定理の式に代入して,
  \begin{align} V - E + F &= 2 \\ \frac{2E}{k} - E + \frac{2E}{n} &= 2 \\ -nk + 2n +2k &= \frac{2nk}{E}  \\ (n-2)(k-2) &= 4 - \frac{2nk}{E} \end{align}

左辺が 4より小さいことが条件となり,上で記した 2.と同じ不等式が現れました.
あとは,導き出された整数解のそれぞれに対して, Fを求めれば正〇角形であるかを示すことができます.

「正多面体」であるという条件は,すべての面が合同な正多角形であり,バラバラの面における頂点の数,辺の数が同じであるという内容に言い換えられています.


スポーツで使ういろいろなボールで多面体定理を調べてみても面白いかもしれませんね.

*1:ときに植木「等」と見間違えたことが何回かあります

*2:くっつける辺の長さは同じであるとします

*3: n角形は, (n-2)個の三角形に分割できるから