みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

重力加速度を測る,頭の中で考えるだけだけど

暑さでバテてたわけでもないのですが,なかなか筆(?)が進みませんでした.といっても,気になることはいろいろと調べたり考えたりはしてます.またまとまったら,そのネタは書こうと思います.*1
以前に重力加速度についてネタを書きましたが,場所(緯度)によってその大きさが変わることに触れました.じゃあ,それをちょっと自由研究調に測ってやろうじゃないかという話です.とはいえ,実際にやるわけではなく,どんな測り方があって,どんなことに注意しないといけないかという内容です.
過去のネタはこちら.

まあ  gを求めるわけですから

高校物理で言えば, gを使って求めている物理量から逆算することを考えればいいわけです.もっともシンプルであろう例として自由落下を考えると,
  \begin{align} h &= \frac{1}{2} g t^2 \\ g &= \frac{2 h}{ t^2} \end{align}

という具合です.
実際に測定(実験)するときには,

  •  hを固定して  tを計測する.逆に, tを固定して  hを計測する.どちらが測りやすいか?
  •  h tが大きくなるときには,空気抵抗も考えなければならない.
  • 空気抵抗の影響を少なくするために,物体の形状も考える.いっそのこと,真空状態にしてみる.

といった考慮が必要になります.
そして,一番考慮しなければならないのは,「(測定の)誤差」です.正確に測定できればできるほどいいのですが,必ず誤差はついてきます.正確にというのは「有効数字を多く」ということを指しています.そして,一つでも有効数字が少ないものがあれば,結果はそれに引きずられてしまいます.

空気抵抗がある場合の変位の式
  \displaystyle{ h = \frac{mg}{k} \left\{ t - \frac{m}{k} \left( 1 - e^{-kt/m} \right) \right\} }

を考えると, h tの組を 2組求められれば  g kを決定することができます.
ただ,この式には  mが含まれています. m自体の測定に重力加速度が関わると堂々巡りになってしまうので,

  • そうならないように,てんびんで測るようにする.
  •  mも未知の数として扱ってしまう(3組のパターンで調べる)

ことを考えてもいいかと思います.
さらに,上の式に近似を用いて*2,以下のように変形します.
  \displaystyle{ h = \frac{1}{2} g t^2 - \frac{1}{6} \frac{k}{m} g t^3 }

こうしておけば, k/mがある程度小さくなることを調べて「無視してもいいですよ~」と言ってしまうのもアリだと思います.ちなみに, k/mが小さくなることと書きましたが,空気抵抗の影響は抵抗の係数(物体の形状に依存)とその物体の質量(の比)により決まるということを表しています.落下する物体を粘土で作って,その形状を変えて測定してみるというのも面白いかもしれませんね.
このあたりの話は,今年の京大物理第1問にかぶってくる内容です.

自由落下を工夫する

文字どおり「フリーフォール」なわけですから,なかなか計測は難しいです.スローモーションを使えば計測はだいぶ楽になるでしょう.といっても,ハイスピードカメラを用意するというのはお金が大変です.でも,工夫すればお金をかけなくてもスローモーションを実現できます.
 「斜面を利用する」

ただこれだけです.斜度 30度の斜面であれば,斜面に沿った加速度は  ma = mg \sin{30^\circ}より  a = g/2と重力加速度の半分になります.「斜面は重力加速度が  \sin{\theta}倍になった世界を実現している」と考えることができます. \sin{\theta}=1/6となる斜面を作れば,そこには「月の世界」が広がるわけです.実際,ピタゴラスイッチピタゴラ装置にも,この考えを応用した装置が出てきます.
計測は楽になりますが,斜面に沿った長さだけ抵抗(空気抵抗や摩擦)のことも考慮しなければならなくなります.あちらを立てれば,こちらが立たずな感じですね.

もう一つ,スローモーションを実現する方法として,「アドウッドの装置」と呼ばれる装置を用いる方法があります.思いっきり質量が登場してしまいますが,次のような装置です.

  • 両端に質量  M m \ (M > m)をもつおもりを付けた軽くて丈夫な糸を用意し,
  • それを滑らかな滑車にかけた.

ただ,これだけです.こうすると,重い方のおもりはゆっくりと落下するようになります.
この装置は,エレベーターやケーブルカーで用いられている仕組みになっています.エレベーターの滑車の向こうにはおもりとなる板が取り付けられています.また,ケーブルカーは反対側にいるケーブルカー自体がおもりの役割をなしています.

他に考えてみる

なるだけシンプルな仕組みの方が,計算も測定も簡単になります.振り子系で挙げてみると,

  1. 単振り子
  2. サイクロイド振り子

1.の単振り子はシンプルなのですが,そもそも周期を求めるときに近似を用いているので,いい結果は得られない(精度も落ちる)と考えられます.
その点,2.は近似を用いずに導くことができますし(空気抵抗を無視した上で),装置をつくることもそんなに難しくはないのでいいのでは?と思います.こちらについては,過去のネタ(細工だらけのサイクロイド~問題編~ - 理系男子の独り善がり)なんかを参考にしてもらえばと思います.

同じ装置を違う場所で用いて,重力加速度の違いを調べてみるというのもいい研究になるのでは?(もう夏休み終わりますけど…)と思います.装置を作って,測定して,結果をまとめるというのも面白いですが,上で書いたようにちょっと突っ込んだ議論をした上で実験に臨むと,装置の作り方を工夫したり,結果に対する考察がしやすくなったりできると思います.

*1:ネタとしてまとめるために,調べたりしているというのが正しいのかも

*2:式の評価~その1~ - 理系男子の独り善がりの後半でおこなった近似を3次までとったもの