前回予告した「懐かしい話」というのは,そうブブゼラのことです.覚えてますか?サッカーW杯南アフリカ大会(2010年)で一躍有名になった楽器です.長さが 1mぐらいの細長いラッパのような形をしています.そして,これを鳴らすと非常に大きな音がします.この「大きな音」について少し考えてみます.もちろん物理的にです.
特徴的な「低音」
あのなんとも言えない「ブー」という低音が特徴的ですが,あの音の周波数はどうなっているのでしょうか?気柱の共鳴の考え方を用いて調べてみます.長さの閉管における固有振動数(周波数)は
(は自然数,は音速)
単純に,ブブゼラの長さとして ,音速を を代入すると,固有振動数は と求められます.そこで Wikipediaを見てみると,ちゃんと周波数スペクトルが載っていました.
この「山」となっているところを見てみると,(ちょっと強引なところは置いといて)おおよそ合っているように見えます.で,山はどんどん周波数の大きい方へ連なっていきますが,音の大きさが小さければ大きいものにかき消されてしまいます.どのくらいからかき消されるかは,「デシベル」という量を理解しなければなりません.
「デシベル」は「デシ」+「ベル」
「デシ」は小学校の時にしか使わないであろう「デシリットル」のデシと同じで,「1/10倍」を表す接頭語です.逆に「10倍」は「デカ」といい,「デカメロン」の「デカ」も語源としては同じです.
そして,「ベル」とは物理量の比の常用対数()をとったものを指します.ですので,基準となる物理量の大きさを ,対象となる物理量の大きさを とすると,
ベル
と表されます.が,これだと 2倍()で 0.30 ベル,3倍で 0.48 ベルと値が小さいと感じられたようで,単位を 1/10倍することで数値の方は 10倍されるようにしました.というわけで,
デシベル(dB)
とされたわけです.1 リットル = 10 デシリットルとするのと同じですね.
デシベルは音の大きさだけでなく,無線LANの電波の強さなんかでも用いられているので,
「dBが 3増えると,大きさは2倍」
と覚えておくと便利だと思います.
ちなみに,「ベル」とは電話の原型を普及させた人の名前です.*1
というわけで,上の周波数スペクトルのグラフ,実は横軸も縦軸も対数目盛になっているというわけです.そして,もっとも大きい -18 dBから大きさが 1/100となるのは,より -38 dBのラインとなります.図には,-28 dB(大きさ1/10)と合わせて,赤線を入れました.山がここより上になっている周波数が主だったものになると思われます.いずれにしても,1,000 Hz程度より小さい低い音がメインになっていることがわかります.このように周波数スペクトルは,どの周波数がどのくらいの強さで含まれているのか*2というのを示してくれるものとなります.
同じように,地震の大きさを示すマグニチュードも常用対数を用いた量で,以下の式で与えられます.
(はマグニチュード,はエネルギーの大きさ)
が 1大きくなるとエネルギーは 倍となりますし,が 0.2大きくなるとエネルギーは 倍となります.
ブブゼラの固有振動数はおおよそ閉管のモデルに当てはまっていることを気柱の共鳴の式を用いて,その中でも低音部分が主となっていることを周波数スペクトルの様子から見てみました.あと,音の大きさを見るためには対数計算が必要になることにも触れました.前回よりはスペクトルの見方がわかるかな?(前回は図がなかったので)と思ってますが,どうでしょうか?
*1:アレクサンダー・グラハム・ベル - Wikipedia
*2:逆に,あまり影響していないのはどこかという見方もある