みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「鉛直振り子の問題」の補足

だいぶ前に書いたネタの補足です.扱う入試問題自体も少し前のものなのですが,いつものごとく備忘録として記しておきます.
miwotukusi.hatenablog.jp

サイドバーの「よく読まれているネタ」にも常に入っていて,いまでもちょくちょく見ていただいているものです.
このネタでは,鉛直振り子の球を支えるものが棒なのか,ひもなのかで立てる式が変わることを見ていきました.そして,ひもの場合に円運動を逸脱するときについて考えました.実は,これとほぼ同じような話をしてくれていた大学入試問題がありました.

2017年京大物理第1問

振り子の代わりに,二重レールを用いています.これを見たときに,「うまいこと説明してくれるなあ」と感心しました.問題の図を先に挙げておきます.

2017年京大物理第1問の図

実は,上のネタを書いているときに持っていた感覚として,棒の場合に「球が飛んでいかないように棒が引っ張っている」「棒の上に乗っかっている」という 2つの違いがあるんじゃないかとずっと思っていました.それを見事に二重のレールで説明してくれているわけです.
この問題の後半(図2)では,最下点:Aで球が持っていた運動エネルギーを  E_2,円の中心方向への力を  Fとし,

  • 円の中心方向の運動方程式 \displaystyle{ m \frac{v^2}{r} = F - mg \cdot \cos{\theta} \ \ \cdots (1) }
  • 力学的エネルギー保存則: \displaystyle{ \frac{1}{2} m v^2 = E_2 - mgr \cdot (1 - \cos{\theta})  \ \ \cdots (2)}

を考えています.
問題文中にもあるのですが, F > 0ならば外側のレールから抗力を受け, F < 0ならば内側のレールから抗力を受けることを意味しています.これが先に書いていた「棒が引っ張っている」「棒に乗っかっている」に対応しています.
問題では,この境である  F = 0となるときの角度( \theta_F)と  v= 0となるときの角度( \theta_v)について, \displaystyle{ \frac{\cos{\theta_F}}{\cos{\theta_v}} }の値を計算しています.そして,これが  \displaystyle{ \frac{2}{3} }と定数になることを確認します.

「棒の場合」は内側・外側両方のレールがあるときに対応しています.そして, \theta_v > 90^{\circ}のときには,必ず  F = 0すなわち「支えられているレールが切り替わる点(引っ張っていると乗っかっているが切り替わる点)」が存在することを記しています. \theta_F = f(\theta_v)としたときのグラフは下のようになります.

 \theta_F(縦軸)と  \theta_v(横軸)のグラフ(点線は 0^{\circ} \leqq \theta_v \leqq 90^{\circ},実線は 90^{\circ} \leqq \theta_v \leqq 180^{\circ}),オレンジ色の点線は  \theta_F = \theta_vのグラフ

「ひもの場合」は外側のレールだけのときに対応し, F = 0で円運動を逸脱することになります. \theta_v = 180^{\circ}のときが以前のネタの後半(「もうちょっと考察」のところ)に対応して, \theta_F \fallingdotseq 180^{\circ} - 48.2^{\circ} = 131.8^{\circ}となっています.
この問題では, \theta_v > 90^{\circ}であれば,必ず  F = 0となる点が存在し,それが一定の関係として与えられることを示してくれています.


棒の場合とひもの場合をまとめて扱っている「全部入り」な問題なわけで,鉛直振り子の練習問題としてもいい問題だと思います.逆に,この問題から棒の場合とひもの場合を区別(外側レールか内側レールか)できるようになれば,より理解が進むんじゃないかなとも思います.