2017/10/02追記:TeX(MathJax)で書き直したものが↓にあります。(内積に関する追記も含んでいます)
今回はベクトルです。
ベクトルは「大きさと向き」をあわせ持った量であり、特に物理を勉強する人にはずっとつきまわってくるものです。とはいえ、はじめての人には三角比と同様にとっつきにくいものだと思います。たいていは、内分点・外分点と証明問題が出てくるあたりから「わからない」「嫌い」といった言葉が出てくるように思います。
なぜ嫌われるのか
「スカラー量と同じように計算しようとしたらできない」というのが、その一つではないかと思います。スカラーとは、通常扱っている数字のように大きさのみを持っている量のことです。ベクトルに対して使う言葉です。
また、ベクトルの演算には割り算はありません。足し算や引き算、かけ算*1は定義されています。ベクトルの足し算もスカラーとは異なるのですが、一番「違和感」を覚えるのは引き算ではないでしょうか?わたし自身、ベクトルの引き算にはなかなか慣れませんでした。
引き算って何?
わたしが慣れなかった引き算というのは、AB→= OB→ー OA→というような表し方です。引き算なので、順序を逆に書くと間違いになってしまいますし、いやな感じがしてました。
ベクトルの引き算って何でしょうか?わたしが出した答えは、「単に、足し算の逆算(逆演算)」だということでした。そして、「引き算は足し算に置き換えられる」ということです。
BA→(ベクトルには、横に→をつけることにします)は、-AB→と同じです。極力、足し算だけで計算をし、始点・終点を入れ替えたところだけ「-(負号)を前につける」ということにしました。
以下、ベクトルの問題を考える上で基本となる事項を挙げていきます。
ベクトルの基本1:ベクトルは始点と終点だけで決まる。
言い換えれば、途中の経路には寄らないということです。小学生の算数の表現を借りれば「道のりではなく、距離を考えている」イメージです。
始点と終点さえ同じであれば、途中の「寄り道」はOKなのです。
AB→に対して、AC→+CB→であろうが、AC→+CD→+DE→+EB→であろうが、同じベクトルを表しているわけです。ちょうど、AとBの間に中継する点を割り込ませているイメージになります。
先に書いた AB→=OB→-OA→については、
AB→
=AO→+OB→ (AとBの間にOをはさみ込む)
=-OA→+OB→ (始点と終点が入れ替わると、負号がつく)
と考えるようになりました。足し算だけで片付けてしまおうということです。
ベクトルの基本2:直線上の点は、定数倍で表せる。
AB→とPQ→が平行であれば、AB→=k・PQ→と表される。点Pが点Aに一致すれば、3点 A、B、Qは一直線上にある。これが基本のその2です。
直線L上の動点Pを表す。ことを考えるのであれば、
- 直線上の点Aまで移動し(OA→)、
- 直線に沿ったベクトル(方向ベクトル)の定数倍だけ移動する(t・AB→)
という考え方で、OP→= OA→+t・AB→と表すことができます。
点Aは一次関数でいうところの「y切片」に似ているかなあ。とも思います。
というわけで、内分点・外分点の公式は覚えていません(苦笑)。
内分点・外分点とそれぞれ「公式」があります。しかし、わたしはきちんとは覚えていません(単なる面倒くさがり)。公式を導き出す過程の方が、図形的な意味をきちんととらえられると思っています。下図の内容で言えば、先の直線の例を真似て
- OM→は、点Oから点Mへ向かうベクトルを考えている。
- 点Oから点Mへ向かうには、まず点Aへ行き、そこからAB→の定数倍だけ移動する。たとえば、下図において AM:BM=s:tであれば、AM→= s/(s+t)・AB→として与えられる。この方が図形的な意味がきちんととらえられる。
というイメージだけを覚えています。
ベクトルの基本3:1次独立
ここでは深く触れませんが、1次独立であることを利用すれば「係数比較」ができるということです。(本当は、係数比較ができるようなベクトルの関係を 1次独立であるというのですが・・・)
よく2つの直線の交点を表す問題として用いられますね。この手の問題を解くときにも、基本2の内容を用いて係数比較するための式を導き出すことになります。
平面上の点(空間図形)
例題というほどではないですが、平面上の点を表すことを考えます。原点Oと一直線上には存在しない3点A,B,Cを考えます。このとき、△ABCを含む平面上の点PをOA→、OB→、OC→を用いて表してみます。
上の直線の場合と同様に考えます。
- 原点Oからとりあえず点Aまで進む。
- 点Aから見れば、点PはAB→、AC→で張られた平面上に存在する。
先に 2.から考えてみます。上の例では、点Aから点Bまで進んでから定数倍でしたが、今度は点Aから点BまでもAB→の定数倍となります(この辺りは図を描いて考えてみて下さい)。その点をLとすると、
AL→= s・AB→
そこからBC→に沿って移動するので、LP→= t・BC→となり、
AP→= s・AB→+ t・BC→
= s・(AO→+OB→)+ t・(BO→+OC→)
= -s・OA→+ (s- t)・OB→+ t・OC→
と表されます。
あとは、これに 1.を付け足すだけですから、
OP→= OA→+ AP→
= (1- s)・OA→+ (s- t)・OB→+ t・OC→
となります。このままではわかりにくいのですが、1- s=α、s- t=β、t=γとおくと
OP→= α・OA→+ β・OB→+ γ・OC→
(ただし、α, β, γは実数で、α+β+γ= 1)
と書き直すことができます。準公式として習う場合もあると思います。
ベクトルの問題は図形を扱うことが多いので、図をなるだけ正確に描くこと。正しい位置関係を把握することが大事です。図形の扱い自体は、中学数学の範囲からの延長みたいなものなので、あまり形式ばらずに取り組んでもらえればと思います。