みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

運動方程式の再確認とその応用

ちょっと大層なタイトルですが,そもそもニュートンさんが定義した運動方程式とその応用を書いていきます.高校物理の範囲では考えないようなことがでてきます.

それでは、運動方程式を改めて

書き下すと以下のようになります(せっかくなので,きれいな式で).

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 \vec{P}は運動量を表すベクトル, \vec{F}は力を表すベクトルです.

これを言葉で表現すると,

「運動量の時間変化が力である」

ということになります.いつもの高校物理での表現(質量×速度の時間変化が力である)とはちょっと違います.

 

一度,高校物理に戻って

考え直してみます.運動量は,物体の質量と速度の積として与えられます.それを時間微分すればいいわけですから,

 \displaystyle{\frac{d(m \cdot v)}{dt} = m \cdot \frac{dv}{dt} = ma}

となって,いつもの運動方程式にたどり着きます.なので,上の再定義の式が間違っているわけではありません.何が違うのでしょうか?

 

もしも「質量も時間的に変化する」としたら・・・?

上の微分について,数学IIIで習う「積の微分」を適用します. xの関数  f(x), \ g(x)について,

 \displaystyle{ \{ f(x) \cdot g(x) \}' = f'(x) \cdot g(x) + f(x) \cdot g'(x) }

になるというものです.すると,

 \displaystyle{ \frac{d(m \cdot v)}{dt} = \frac{dm}{dt} \cdot v + m \cdot \frac{dv}{dt} }  ・・・(1)

となります.通常,高校物理の範囲では  \displaystyle{ \frac{dm}{dt} = 0 }(運動する質点の質量は変化しない)として考えていますが,実は質量の時間変化にも力が必要だということになります.

以下では,加速度が 0でも運動量が変化する.そのような例を二つほど挙げてみます.

 

例1:降り積もる雪

ここ最近,普段雪が降らないようなところでも大雪(北国の人からすると,たいした雪でもないのだとは思いますが)に見舞われていますね.この「雪が降り積もる様子」を用いた例です.

線路の上を質量: Mの台車を引いて動かすことを考えます.台車には時間当たり  \muの割合で雪が降り積もっていくとします.車輪と線路の間の摩擦がなければ,一度押し出された台車はずっと線路の上を走っていくはずです.

いまはほったらかしにはせずに,速さが  vで保たれるように台車を引っ張ることを考え,このときに必要な力を求めます.

雪が積もった(時刻: tにおける)台車の質量は  m(t) = M + \mu tとなります.先の (1式)にこれを代入すれば,

 (運動量の時間変化)=  \mu v

と求まります.これが引っ張るのに必要な力の大きさとなります.

 

例2:くさりを持ち上げる

次は密度が一様なくさりを一定の速度で持ち上げることを考えます.持ち上げる部分が長くなるので,その重力に対抗する力が必要なことは自然と想像できると思います.しかし,それだけではありません.

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このように運動量の変化は運動している物体の質量によっても現れます.ロケットはその代表例とも言われるものです(燃料を噴出することにより推進するが,ロケット自体の質量は減っている).自動車もロケットほどの割合ではないものの,質量は減っていきますね.