ここ最近,どうも天気がいまいちですね.いい天気のときもあるのですが,雨が降りそうで降らないとか,スッキリしない天気が多いように感じます.
こんな雨の日に,「向こうの軒下まで走った方がいいのか,それとも歩いた方がいいのか?」という二者択一に出くわすことがありますよね.今回のタイトルになぞらえれば,「春雨じゃ濡れて参ろう」というところなのですが,やはりそれは嫌なものです(笑).そこでどっちが濡れずに済むのかを物理してみたいと思います.
まずはモデル化するところから
いつものように,問題を単純化します.まず,風は吹いておらず,雨は鉛直下向きに一定の速さ:で降っているとします.ちなみに,この速さは「上空から落ちてくる雨滴の終端速度の大きさ」として与えられるものです.春雨であれば,シトシトと降ってくるイメージですね.さらに,単位体積あたり 個の雨滴があるとします(密度に該当する量).たとえば、面積:の面に単位時間で降り注ぐ雨滴の数は 個になります。
次に濡れる対象もモデル化します.ここは人間の頭部を考えてみます.しかも,単純にするために球体として扱うことにします.ほんとに球体だとドラえもんみたいになってしまいますが,まずは簡単なモデルで考えて,実際の現象に合わないような結果が出るのであれば、その前提(仮定)を見直せばいいわけです.このようにモデル化して考えるときには,そのときに立てた条件も理解した上で解析をおこなう必要があります.
「濡れる量」とは
実は人が言うところの「濡れる量」には,大きく2つのタイプがあります.
- 物理的に言うところの「単位時間あたりに濡れる量」のこと.その瞬間に受ける雨滴の量のこと.
- 軒下まで行った結果、濡れた量.「濡れた総量」と言い換えればわかりやすいかも.
「断面積」で考えるのですが・・・
- 雨滴自体は鉛直下向きに運動(落ちて)いますが,
- ターゲットが速さ:で移動していれば,斜め上からターゲットに当たることになります(相対速度).
濡れた総量の計算
- 単位時間当たりに濡れる量
- 濡れた時間=(走った距離)÷(走る速さ)
断面積は (は球の半径),雨滴の相対速度はですから,単位時間あたりに濡れる量は,
となります.
また,濡れた時間は走った距離を として,と表されます.よって,総量は
に比例することがわかります.
さて,これをどう「評価」しますか?
ルートの中を見ると「1にどれだけ加えるか?」という式になっています.つまり,の大きさが小さい方がよいということになります.は定数なので,が大きくなれば全体の値を小さくすることができることになります.
少し「シブい評価」もしてみます.上の式の左辺は,ルートの項と の項が掛け合わされています.が倍になったとき(),の項は と半分になりますが(走った時間は半分になるが),
ルートの項は,
となり,倍にはなりません.として考えても同じ結果になります.