みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

1次変換の補足~その2~

成分計算ガリガリというよりは,1次変換の本質を問うような問題を例題として挙げてみます.

 

むかしの阪大で出た問題

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1次変換は「点を移す変換」といいましたが,基底ベクトルを移すというように「ベクトルを移す変換」という言い方もできます.成分でガリガリ計算する手もありそうですが,場合分けなどだいぶと手がかかりそうです.ここはベクトルを用いて問題をシンプルにしてしまいましょう.

 

そのために必要な道具を列挙しておきます.

  • 直線のベクトル方程式は,定点と方向ベクトルで表される.
  • 1次独立である2つのベクトルにより,平面上の点を表すことができる.
  • 1次変換には線形性がある.

直線の方向ベクトルについては,以下で説明します.「定点」には2直線の交点を用います.実はこの交点が文字どおりキーとなるポイントとなります.

 

正直なところ,厳密に直線の方向ベクトルを表す必要はありません.本質は「平行でないこと」「 fによって互いにうつされる関係にあること」だけだからです.しかし,まったく触れないのもなんなので,以下で方向ベクトルの求め方を論じておきます.

まずは直線の方程式を以下のように変形します.

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このように変形すると,この直線の方向ベクトルが  \overrightarrow{v_1} = (q_1, \ -p_1)として与えられることがわかると思います.というかわかりますか?空間における直線の方程式の形と見比べてみてください.ただし,この変形をするには  p_1 \neq 0, \ q_1 \neq 0であることが条件になります.

もう1つ,方向ベクトルを見つける方法があります.今度は空間における平面の方程式と照らし合わせます.平面の方程式は  ax + by + cz + d = 0という形をしていて,この平面の法線ベクトルは  \overrightarrow{h} = (a, \ b, \ c)と与えれます.これをそのまま直線に応用すると,直線の法線ベクトルは  \overrightarrow{h_1} = (p_1, \ q_1 )となります.これに垂直なベクトルが方向ベクトルなわけですから,x成分とy成分を入れ替えてどちらかに負号を付けたものが方向ベクトルとして与えられます(内積が0になればいいから).

「空間における図形の方程式」として別物扱いしている人も多いと思いますが,本質は平面も空間も同じだといういうことを理解していれば難しい話ではないと思います.

 

さて本題に戻りましょう.直線のベクトル方程式は,定点と方向ベクトル(の定数倍)で表すわけですから, fによって互いの直線をうつしあうことから,方向ベクトルについて,

  •  \overrightarrow{v_1} fによる像は, f(\overrightarrow{v_1}) = a \cdot \overrightarrow{v_2} と表され,
  •  \overrightarrow{v_2} fによる像は, f(\overrightarrow{v_2}) = b \cdot \overrightarrow{v_1} と表されるはず

ということが言えることとなります.ここで注意すべきは, a bがついているように定数倍として与えられているということです. f(\overrightarrow{v_1}) = \overrightarrow{v_2} とは限らないということです.組み合わせれば,2回写像がそれぞれ  f \circ f(\overrightarrow{v_1}) = ab \cdot \overrightarrow{v_1}, \ f \circ f(\overrightarrow{v_2}) = ab \cdot \overrightarrow{v_2} となります.「 abが1になればなあ」ということを示すことで証明が完了します.

 abが1になる」ことは,先に挙げた「2直線の交点」を用います.交点自身を  \overrightarrow{v_1} \overrightarrow{v_2}を用いて表すことで, ab =1が見事に示されます.ただし,交点が原点に一致していないことなど,細かい注意点があります.ここで,直線の方程式にある「+1」という定数項が何気に輝きを放ってきます.

以下に,わたしなりの解答例を挙げておきます.ちょっと回りくどい書き方になっているかもしれませんが.

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