解けそうで解けないと思ったら,解けちゃったという感じの問題です.タイトルどおり,問題自体はいたってシンプルです.
問題
三角形ABCにおいて,AB≧ACとする.辺BC上の点Sより垂線を引き,三角形ABCの面積を二等分する.点Sはどのような点として表されるか?
まずは中学数学の範囲で
基本的な考え方は「等積変形」です.平行となる2本の線を引いて,その間にある三角形は面積が等しくなるというアレです.点Aと辺BCの中点(点M)を結んだ線が面積を二等分するので,それを基準に垂線(を与える点)が満たすべき条件を求めます.
「平行であること」と「垂直であること」が条件になります.点Sと点Tと2つの点が与えられていますが,点Sが与えられれば点Tは自動的に決まるので,最終的な条件は1つになるはずです.このことも,以下の計算で示していきます.
高校数学へステップアップ
これらの条件を「ベクトル」で考えます.以下,と表すこととします.当然,これら2つのベクトルは1次独立です.点Sと点Tを与えるパラメータとして,実数 を以下のように置きます*1.
「平行であること」の条件は,係数の比が等しいという式になります.
「垂直であること」の条件は,定番の内積がゼロという式になります.
を消去して を求めることになるのですが,内積 をどうにかしなければなりません.そこで,に余弦定理をぶつけてあげます.すると,そのまま
と書き換わります.を と表すことで,を辺の長さを用いて表すことができます.
という結果になりました.点Sは,点Mと点Aの真下の点(垂線の足)の間にあることがわかります.AB=ACならば,点Mに一致しますね.
で,この結果が果たして正しいのかどうか.すなわち,分割された三角形BST or 四角形ACSTは等しくなり,二等分されているのか.という確認ですが,三角形BSTにおいて,であることから簡単に示すことができます.
結果が出たところから,もう一歩
BSが求められたところで,点Sを作図で求められないかを考えてみます.「点Sを作図で求める」というよりは,「BSという長さを作図で取り出す」という手法を考えてみました.BSが辺の長さの2乗を足したり引いたりした結果になっているので,ピタゴラスの定理を応用することを考えればいいわけです.たとえば,以下のような順序で点Sを作図することが可能となります.
- となる長さを「ABが斜辺となる直角三角形」を考えることで求め,
- より「斜辺の長さが2BSとなる直角三角形」を考えることで求める.
- 2.で作図した直角三角形の斜辺の長さの半分を測り(中点を求めればいい),それがBSの長さとなる.
この中でちょっと難しいのが手順1です.「斜辺ともう1つの辺の長さがわかっている直角三角形を作図する」ことをおこなわなければなりません.これは,辺ABを直径とする円を描くことで解決します.円周角の性質を利用(円周上にある角は直角になる)するわけです.
手順2は,点Cにおける辺BCの垂線を引いて,直角三角形を描くことで,そのまま手順3に続けて作図をおこなうことできます.全部を書き込むと図がぐちゃぐちゃになってしまうので,手順ごとに分けたイメージ図をつけておきます.
基本的な考え方や作図は中学数学,計算のところだけ高校数学という,ちょっと特異な問題だと思います.ヒント(小問)なしで,「点Sを作図せよ.」という問題なんか出されたら,結構ヘビーな問題かもしれません.
最後に,解法は他にもあるかもしれませんのであしからず.
*1:2014/11/26追記:と置いた方が後の式を少し簡単にできるかもしれませんね