みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2016年京大前期理系数学第2問」のメモ

2次試験がはじまりましたね.とりあえず,またシンプルな(短い)問題をいじっておきます.

問題

素数 p,qを用いて
 p^q + q^p
と表される素数をすべて求めよ.


整数問題で「すべて求めよ」という問われ方をしているときは,「小さい数のいくつかが答えで,値が大きくなると式が満たされない(そのような解はない)」というのが定番になってますね.この問題もそうです.

  1. まず.この値が偶数になってはダメなので*1,「pもqも偶数(p=q=2)」とか「p=q」のような場合はサクッと除外されます.さらに,pもqも3以上(すなわち,奇数の素数)であっても,和が偶数になるので除外です.となると,「p=2かつ qは奇数」 または 「pは奇数かつ q=2」 の組合せだけとなります.
  2. 以下,p=2かつ qは奇数として考えていきます.具体的に計算してみると,q=3のとき,和は17となりOKです.q=5では和は57,q=7では和は177となり,ともに3の倍数になってしまいます.ということは,q≧5だと和は3の倍数になるんじゃないの!?という話になります.
  3. そもそも,qも素数なので,3より大きいのであれば 3の倍数ではありません.ということで,q=3k+1 または q=3k+2とおくことができます.

ときたところで,「ちょっと待った!」です.このように置くのは構わないのですが,もうちょっと注意深く見てみると...

  • q=3k+1が奇数であるためには,kが偶数でなければならない.
  • 同様に,q=3k+2が奇数であるためには,kが奇数でなければならない.

ということで,それぞれ k=2Lや k=2L+1として代入してみると,
 q=6L+1 または q=6L+5

と表すことができます.つまり,3より大きい素数は,必ずこのどちらかに当てはまることになります*2.この形を使う問題は,ちょこちょこ出ているので見たことがある人もいるのではないでしょうか?もうちょっと渋い書き方をすると,
 q=6L±1

とまとめてしまうこともできます.
あとは,数学的帰納法でも使って,L≧1に対して 2^{6L \pm 1}+(6L \pm 1)^2 が3で割り切れることを示せばよいです.


この問題は確実にとっておきたいところだと思います.

2016/02/28 追記

最後の「数学的帰納法」についてです.復号(±)がありますが,第 2項の (6L \pm 1)^2の方はつねに 3で割ったあまりが 1になります.ですから,2^{6L \pm 1}を 3で割ったあまりが2となることを示せばよいです.L=nのとき,2^{6n \pm 1}=(3の倍数)+2とでも仮定して,2^{6(n+1) \pm 1}= 2^6 \cdot 2^{6n \pm 1}がまた(3の倍数)+2の形になることを示します.L=1のとき(6L±1=5 or 7のとき)も示しておくことを忘れずに.
数学的帰納法の証明は,整式で示しにくいところを突くところがある種のワザです(というか,直接示せないから帰納法を使ってるのであって,そのポイントを突くのは必然).分数や指数といった項をうまく整式の形に落とし込むことを考えてみると,たいていうまくいきます.

*1:「和が2」となる場合がありますが,その前に素数の定義より p≧2,q≧2と書いておけば自動的に除外されます.

*2:2と 3の最小公倍数である 6で割ったあまりを考えたとき,6L, 6L+1, 6L+2, 6L+3, 6L+4, 6L+5ですべての整数を表すことができる.そして,その中で,2や 3で割り切れないものとして残るのが,6L+1, 6L+5だととらえることもできます.