みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

不等式と領域の例題

シンプルで比較的簡単な問題ですが,少し解き方を考えてみたいと思います.

問題

実数  a, \ b 0 < a < 1, \ 0 < b < 1を満たすとき, \displaystyle{ ab \leqq \frac{1}{4} }または  \displaystyle{ (1-a)(1-b) \leqq \frac{1}{4} }が成り立つことを示せ.

解き方(1):相加・相乗平均の関係を用いる

示したい式に現れる 4つの項  a, \ b, \ 1-a, \ 1-bはすべて正の値となるので,相加・相乗平均の関係を使うことができます.とりあえず,関係式を書き下してみると,
  \begin{align} \frac{a+b}{2} &\geqq \sqrt{ab} \\ \frac{(a+b)^2}{4} &\geqq ab \end{align}

または
  \begin{align} \frac{(1-a)+(1-b)}{2} &\geqq \sqrt{(1-a)(1-b)} \\ \frac{ \left\{ 2-(a+b) \right\} ^2}{4} &\geqq (1-a)(1-b) \end{align}

示したい式と左辺と右辺が逆になっていますが,上の関係式の左辺に対して,
 a+b \leqq 1 または  2-(a+b) \leqq 1

が成り立てばよいことがわかります.ちょうど 1を境とした場合分けになります.
これらをまとめると以下のような回答(の流れ)になります.

I)  0 < a+b \leqq 1のとき
  \displaystyle{ ab \leqq \frac{(a+b)^2}{4} \leqq \frac{1}{4} }

ii)  1 \leqq a+b < 2のとき
  \displaystyle{ (1-a)(1-b) \leqq \frac{ \left\{ 2-(a+b) \right\}^2 }{4} \leqq \frac{1}{4} }


解き方(2):領域で示してしまう

以前,通分のネタの最後に触れていた内容になります.
 ab平面において,
  \begin{align} ab &\leqq \frac{1}{4} \\ b &\leqq \frac{1}{4a} \end{align}

または
  \begin{align} (1-a)(1-b) &\leqq \frac{1}{4} \\ b-1 &\geqq \frac{1}{4(a-1)} \end{align}

下の不等式が表すグラフは,ちょっと考察が必要ですね.でも,平行移動に関する以下のネタを参考にしてもらえば難しくないです.
miwotukusi.hatenablog.jp

曲線: \displaystyle{ b = \frac{1}{4a} }のグラフを  a軸方向に +1だけ, b軸方向にも+1だけ平行移動させたグラフよりも上の領域(境界も含む)とわかります.もとの条件式と曲線を図示すると以下のようになります.
f:id:miwotukusi:20170826190819p:plain

もとの領域( 0 < a < 1, \ 0 < b < 1)を 2つの領域で覆い尽くすことができるので,これにより不等式が成立していると示すことができます.


ところで…
先に下の図を見てもらった方がいいですね.
f:id:miwotukusi:20170826193725p:plain

  • 赤い線は  a+b=1のグラフを表しています.解き方(1)では,このグラフよりも上から下かで場合分けをしていたわけです.しかし,領域をよくみると,どちらか一方の不等式のみが成立しているのではなく,両方の不等式が成立している場合もあることがわかります(例: (x, y) = (0.2, 0.8)).
  • もう一つ,解き方(2)ではクローズアップをした図になっていましたが,反比例のグラフは「ニコイチ」ですから,そこをきちんと記しておくこともポイントになってきます.単に「上か下か」だけではダメだってことです.このあたりは,前回のネタにも出てきた正領域・負領域の話にもかかってくるところです.


2変数の不等式の問題は,この「ぬり絵」タイプに落とせるものもあるかもしれませんね.