みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

2018年もよろしくお願いします〜解答編〜

2018は「2つの平方数の和になる感じでもなく…」と書いたのですが,見事になるんですね.失礼しました.
tsujimotter.hatenablog.com


さてさて,問題の方は関数電卓をたたけば答はすぐにわかるのですが,特に手計算となると 3)はちょっと...という感じでしょうか.でも,安心してください.求まります.

いつものようにメインの考え方を優先しているので,ちょっと注釈が多いです.きちんとした「解答」にしようとすると注釈部分が必要なところもあるので,そこを考えたい方は計算しながら追ってもらうといいと思います.

1) 10進法で何ケタの数ですか?

ケタ数の問題なので,過去のこのネタが参考物件になります.
miwotukusi.hatenablog.jp

ただ, n乗の数同士の「和」となっているところがちょっと難ありです. \displaystyle{ \phi \equiv \frac{1+\sqrt{5}}{2} }とおくと,一般項は以下のように書き換えることができます.
  \displaystyle{ F_n = \frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \phi^n - \left( -\frac{1}{\phi} \right)^n \right\} = \frac{\phi^n}{\sqrt{5}} - \frac{1}{\sqrt{5} \cdot (-\phi)^n} }

2項目に対して「分子の有理化」を用いると,このように変形できます.そして, \phi > 1であることから,この 2項目は  nが大きくなるにつれどんどん小さくなり値全体の大きさには影響しなくなります.*1 式の評価~その1~ - 理系男子の独り善がりでの考え方を使っていることになります.
というわけで,ケタ数については, \displaystyle{ \frac{\phi^n}{\sqrt{5}} }を考えることで求められます.この数の対数をとって,
  \begin{align} \log{ \left( \frac{\phi^{2018}}{\sqrt{5}} \right) } &= 2018 \cdot \log{\phi} - \frac{1}{2} \cdot \log{5} \\ &= 2018 \cdot \log{\phi} - \frac{1}{2} \cdot \left( 1 - \log{2} \right) \\ &= 2018 \cdot 0.2090 - \frac{1}{2} \cdot (1 - 0.3010) \\ &= 421.4125\end{align}

よって,
  F_{2018} = 10^{421.4125} = 10^{0.4125} \cdot 10^{421}

となり,422ケタの数であることがわかります.*2


2) 10進法で表したときの最高位の数はいくつですか?

上の計算から  \log{2} < 0.4125 < \log{3}より,最高位の数は 2となります.

3) 10進法で表したときの最下位(1の位)の数はいくつですか?

かけ算であれば周期性を考えれば求まりますよね(上の対数ネタにも書いています).いまの場合も周期性を考えます.できるの?と思われるかもしれませんが,「大人のピタゴラスイッチ2017」にも登場した「鳩の巣原理」の考え方を知っていればなんとかなることがわかり,なんとかしようと手を動かすことができるようになります.

フィボナッチ数は前の2数の和として与えられますが,1の位について「2数の組」を考えると,
  (0,0), \ (0,1), \ (0,2), \ \cdots , \ (9,8), \ (9,9)

の計 100組存在することがわかります.ということは,2数の組を 101組用意すると,必ず重複した組が 1つは存在することになります(ここが鳩の巣原理).つまり,初項から 100番目ぐらいまでの数を列記すれば,どこかでかぶっている組が現れ,そこから周期が生まれることになります.
そうなんです.必ずどこかで周期に入ってしまうんです.

1の位だけを順に書き出してみると,
  \begin{align} 0, \ &\color{red}{1, \ 1,} \ 2, \ 3, \ 5, \ 8, \ 3, \ 1, \ 4, \ 5, \\ &9, \ 4, \ 3, \ 7, \ 0, \ 7, \ 7, \ 4, \ 1, \ 5, \\ &6, \ 1, \ 7, \ 8, \ 5, \ 3, \ 8, \ 1, \ 9, \ 0, \\ &9, \ 9, \ 8, \ 7, \ 5, \ 2, \ 7, \ \color{red}{9,} \ 6, \ 5, \\ &1, \ 6, \ 7, \ 3, \ 0, \ 3, \ 3, \ 6, \ 9, \ 5, \\ &4, \ 9, \ 3, \ 2, \ 5, \ 7, \ 2, \ 9, \ 1, \ 0, \\ &\color{red}{1, \ 1,} \ 2, \ 3, \ 5, \cdots \end{align}

となり,周期 60で1の位は循環していることになります.そして, 2018 \div 60 = 33...38であることと  F_{38}の 1の位は 9であることから,答えは 9となります.

この書き出した内容を眺めてみれば,以下のようなことも読み取れます.

  • 偶数となるのは, nが 3の倍数のとき*3
  • 5の倍数となるのは, nが 5の倍数のとき*4


新年早々ちょっと力技な問題でした.今年は物理ネタを増やせればと思ってます.それでは,よいお正月を.

*1: n=0のときの  1/\sqrt{5}が最大である.フィボナッチ数自身は当然整数であるので,2項目は 1項目で出てきた小数部分を調整する役割を担っている.「調整する」といっても,符号が偶奇で変化するので,1項目の小数部分を引き去る場合と 1項目の小数部分に加えて 1にしてしまう場合とがある.

*2: \displaystyle{ \log{ \left( \frac{\phi^{2018}}{\sqrt{5}} \right)} = 421.4125 }であることより, \displaystyle{ \frac{1}{\sqrt{5} \cdot (-\phi)^{2018}} }は小数第 423位にはじめて 0でない数が現れることも示されます.

*3:奇+奇=偶,奇+偶=奇,偶+奇=奇のくり返しになっている

*4:ある  mについて  F_m = 5kと 5の倍数になり,その前の数を  F_{m-1} = aとする.このとき, F_{m+1} = 5k+a, \ F_{m+2} = 10k+a, \ \cdots , \ F_{m+5} = 40k+5a であり,5の倍数は周期 5で現れる.ちなみに, aは 5の倍数とはならない.