みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

ICカードは「ガチョーン」で使う?

定期券や会社の入館証などで当たり前のようにある ICカードの小話です.JR西日本の改札機には「1秒タッチしてください」といったフレーズが書かれています.そして,ちょっと検索してみると,こんな記事がありました.
www.nhk.or.jp

この記事の中で ICカードを使い方を表す言葉として,以下の13種が集まったそうです.
 「タッチする、あてる、触れる、かざす、近づける、押し当てる、のせる、つける、置く、くっつける、密着させる、接触させる、重ねる」

スポーツでもそうですが,なかなかコツを表す言葉って難しいものです.でも,ちょっと物理を知っていれば,そのコツが伝えられるかもしれません.

この ICカード,よく Felica形式のカードと呼ばれますが,これは電磁誘導を利用しています.そもそもカード自身にボタン電池が入っているわけではなく,電磁誘導により電流を流して情報の読み書きをおこなう仕組みです.
ここで電磁誘導の公式を書いておきます.
  \displaystyle{ V = - n \frac{d \phi}{dt} }

 Vは誘導起電力, nはコイルの巻き数, \displaystyle{ \frac{d \phi}{dt} }は磁界の時間変化を表しています.巻き数や磁界の時間変化が大きくなれば,生じる誘導起電力→誘導電流も大きくなるわけです.比例関係なのでわかりやすいですね.

ICカードには縁をとりまくように電線(回路)が敷かれており,これがコイルとなって磁場が通過することで電流が発生します.
この仕組みを知っていれば,

  • そっと置く(=磁界の時間変化が小さい)のでは十分な電流は発生しない.でも,早すぎると電流は強く発生するが情報のやり取りをする時間が足りなくなる.
  • 横からスライドさせても電磁誘導は発生するが,十分な電流が発生しないことが多い.

というわけで,真上から垂直に 1秒ぐらいタッチする感じ(上の言葉だと「近づける」が近い?)がちょうどよいと思います.
たまに読み取りにくいカードリーダーがありますが,そういうときわたしは「ガチョーン」のように読み取り面に対して垂直に上下させています.*1

コンビニのレジなどでカードを置いてシャリーンという場合もありますが,これは逆に置き場の方で磁場を変化させればいいわけです.レジ側でスイッチを押して磁場変化を起動する仕組みにしておけばいいわけです.
また,ワイヤレス充電も同様の仕組みを用いているものがあります*2
このような知識を持っていれば,

  • 複数のカードが重なっていると,複数のカードに電流が流れて情報を発信してしまい,正確に情報を読み取れなくなる.
  • 金属カバーなどをしていると,磁場が遮蔽されてしまい,情報が読み取りにくくなる.
  • ICカードの電線は,縁を複数回周回するように作られている.(巻き数が多くなれば,誘導される電流も強くなる)

といったことに気づくこともできると思います.

*1:ガチョーン」は正確にはカメラがフェードイン・フェードアウトを繰り返すことで前後に動いているように見せているだけなのですが,イメージとしてこの言葉を当てはめてみました.

*2:「磁界共振」という方式もある