ここしばらく体調を悪くしており更新ができていませんでした.その間にもご覧いただいている方がいて,ありがたい限りです.まだ復調とまではいってませんが,徐々に頭の中にため込んでいたネタを吐き出していこうと思います.
重力加速度のネタの補足+αです.元ネタは↓
miwotukusi.hatenablog.jp
いただいたコメントに対するお返事
だいぶ前にいただいていて,ずっとお返しできていなかったコメントについてです.
ナタさんからのコメント(2018/03/06)
3年も前の記事ですが、 まだ更新なさっているようでしたので、 コメント失礼いたします。 万有引力の特徴にて、「北極や南極で受ける「万有引力」は、赤道で受けるものよりも小さくなります。」 とありますが、極のほうが中心に近い分、重力(=万有引力)も大きいのではないでしょうか? 私は文系で、数式なども理解できていない身です。間違っていればご教示ください。
確かに,ご指摘のとおりです.赤道のあたりが膨れているのであれば,
(赤道上の点〜地球中心までの距離) > (極〜地球中心までの距離)
となっているはずです.なので,万有引力の式
の の大小を考えれば,極の方が万有引力は大きくなります.
しかし,実際には,極〜地球中心までの距離を ,赤道上の点〜地球中心までの距離を とすると,その違い(比)は,
とほぼ 1/300という非常にわずかなものとなっています.なので,球体として扱ってもいいんです.
と言いたいのですが,そうは問屋が卸してくれず,回転楕円体として「球体からはみ出している部分」からの万有引力も考慮する必要があります.ほかにも考慮すべき点*1を踏まえ,以下のような式で重力加速度の近似式が与えられています.
(単位は ,は緯度,http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-2/index.html より引用)
この式のグラフは,下のようになり.緯度0度で最小,緯度90度で最大となります.点線は,上記の 以降を無視した式のグラフとなっています.
- 赤道上(緯度0度)では
- 極(緯度90度)では
- さらに東京(おおよそ緯度35度)では
となっています.
緯度によって重力加速度が変わるのならば
上の内容で,万有引力という力の話から重力加速度という加速度の話にすり替わっていることに気が付かれたでしょうか?これは,地表における運動方程式を立てたとき,
となり,この右辺が万有引力や遠心力の合力として与えられることになります.つまり,緯度による重力の大きさの違いは質量に比例して現れることになります.東京で体重計にのって「60kg」と言われた人が,
- 北極で体重計にのると 60.2[kg]と言われ,
- 赤道で体重計にのると 59.9[kg]と言われる.
となります.
これは大問題で,重さによって価値が決まる金やダイヤモンドといった貴金属もしかり,ボクシングの計量にも影響をします.では,どのようにこの問題を解消するのかというと,「てんびん」を使うことで解消されます.もう少し厳密にいうと
力の大きさで測るのではなく, 力のつり合いで測る.
ということになります.
しれっと書いてしまいましたが,上で挙げた「体重計」とは,単純な機構として言えば「ばねばかり」です.つまり,ばねにかかる力の大きさ(によるばねの伸び)を目盛りとして表しているわけです.一方,ボクシングの計量で使う体重計は,おもりとのつり合いによって測る(てんびんの腕の長さを調整して測る)ものになっています.このようにしていないと,特に世界タイトルではふだん違う緯度にいるもの同士の対戦となるため,不具合が生じるわけです.おもりが同じであれば,おもりに働く力も,体重も同じ比率(重力加速度の比率)で変化するので,(計量という測定においては)公平が保たれるようになるわけです.
*1:「地表」となるところが,まわりの地表面と平衡を保っている(ちょっといい加減な表現にしています)こと