理系男子の独り善がり

仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2019年同志社大物理[ II ]」のメモ

この問題も面白いところがあったので,メモを書いていきます.(実は一度公開していましたが,だいぶ書き直して再公開です)
問題は,2つの音源から同じ振幅,同じ周波数である音波を発しているところからはじまります.音波というとちょっと難しく聞こえますが,水面上の 2点を波源とする干渉(水面波の干渉)の様子を思い浮かべてもらえば,ちょっとは考えやすくなるのではと思います.

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2019年同志社大物理[II]の図

「位相」というものが実態をつかみづらいものなので,ちょっと丁寧に(〇〇丁寧に)書いてみました.なので,だいぶ長くなってしまってます.
 

音源  S_A, \ S_Bが同位相で発しているとき

上のように,水面波の干渉で出てくる「腹」と「節」のことを言っていると捉えられれば,楽に取り組めると思います.図1のような 3点の配置で考えるのであれば,ABの中点は行路差が 0なので定常波の腹,点Cはその隣の節とでもイメージすればよいかと思います.

点Cは節

ですから,そこでの位相差は  \pi・・・(ア)になります.このとき,行路差は半波長の奇数倍になっています.

点Dは腹

点D(腹)から次の極小点(節)までは,行路差は半波長だけ変化します.なので,行路差が半波長だけ変化する移動距離を求めます.
マイクロフォンが  \Delta xだけ x軸の正の向きに移動したとき,

  • 音源  S_Aとの距離は, \Delta xだけ長くなり,
  • 音源  S_Bとの距離は, \Delta xだけ短くなる.

ので,行路差は移動距離の倍である  2 \cdot \Delta x だけ変化します(増えます).よって,
  \displaystyle{ \Delta x = \frac{\lambda}{4} = \frac{V}{4 f} }・・・(イ)

行路差の差が移動距離の 2倍になるという問題は,センター試験物理でも何度か出ていたかと思います.

音源  S_Bの位相をずらしたとき

グラフの読み取り,位相と位置の関係がキーになる問題です.

図2のように位相をずらしたとき

位相のズレですが、同じ時刻でどれだけ違うか=グラフにおいてどれだけ縦にズレているかを確認します.このときに注意しておくことは,音波の圧力=0となる点が位相で表したときに,「 \phi = 0\ (2 n \pi)のとき」なのか「 \displaystyle{ \phi = \pi\ ( (2n-1) \pi ) }のとき」なのかということです.ややこしければ,一度単位円でも描いて確認してもいいと思います.

図2において,時間*1が 1目盛り目のところ(ちょうど S_Aと書かれているところ)を見ると,「遅れている」という記述をもとに

  •  S_Aの位相は, \displaystyle{ \frac{\pi}{2} }
  •  S_Bの位相は, 0 (負から正に変わっていく点だから)

となっており, S_Bの位相が  \displaystyle{ \frac{\pi}{2} }だけ遅れていることがわかります.*2
この位相のズレを波長に置き換えてみると, \displaystyle{ \lambda \cdot \frac{\pi / 2}{2 \pi} = \frac{\lambda}{4} }となります.*3
つまり,この分だけ音源  S_Bの位置をずらした(x軸の正の方向に  \lambda/4だけずらした)と考えてもいいわけです.
で,一度問題に出てくる点の情報を整理してみると,以下のようになっています.

  • 点C:同位相であったときに,節となっていた点
  • 点D:同位相であったときに,腹となっていた点
  • 点E:位相をずらしたときに,節となっている点 ←もともと節であった点Cがずれていった点

そして, \lambda/4だけ片方の音源を移動させたときに,節となる点がどれだけ移動するかを考えます.上で考えたように,節となる点が x軸の正の方向へ  \Delta x'だけ移動したとすると,行路差は  2 \cdot \Delta x'だけ変化するので,その変化が音源のズレを吸収したと考えて,
  \displaystyle{ 2 \cdot \Delta x' = \frac{\lambda}{4} }

より, \displaystyle{ \overline{\mathrm{CE}} = \Delta x' = \frac{\lambda}{8} = \frac{V}{8f}}・・・(エ)が求まります.
このズレをもとに,もとの定常波との違いを図に描いてみると,下図のようになります.

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音源  S_Bの位相をずらしたとき

緑がもとの定常波,赤がずらした後の定常波を表しており, \lambda/8だけ x軸の正の方向へずれています.
あとは,ここから点Cにおける赤線の振幅の大きさを求めれば,(ウ)は  \displaystyle{ \frac{\sqrt{2}}{2} }となることがわかります.

位相のズレを変化させたとき;解答図(II-A)

上のように位相のズレ=音源のズレと見ることができれば,平行移動していくだけなのでズルズルとずれていく様子をグラフに描くだけです.

これだけだと素っ気ないので,式を用いて説明をしてみると以下のようになります.
同位相のとき,節である点Cに関して成り立つ式は,
  \displaystyle{ \overline{\mathrm{AC}} - \overline{\mathrm{BC}} = \frac{\lambda}{2} \times (2n-1) }

となっています.図1を見て  \overline{\mathrm{AC}} - \overline{\mathrm{BC}} = \overline{\mathrm{AC}} - (\overline{\mathrm{AB}} - \overline{\mathrm{AC}}) = 2 \cdot \overline{\mathrm{AC}} - \overline{\mathrm{AB}} を用いて変形すると,
  \displaystyle{ \overline{\mathrm{AC}} = \frac{ \overline{\mathrm{AB}}}{2} + \frac{\lambda}{4} \times (2n - 1) }

となります.
上で議論したように,

  • 音源  S_Bの位相が  \Delta \phiだけ遅れること
  • 音源  S_Bの位置が  \displaystyle{ \frac{\Delta \phi}{2 \pi} \lambda }だけ x軸の正の方向にずれること

は点Cの近辺では同じことになるので,*4
  \displaystyle{ \overline{\mathrm{AE}} = \frac{ \overline{\mathrm{AB}}+\cfrac{\Delta \phi}{2 \pi} \lambda }{2} + \frac{\lambda}{4} \times (2n - 1) = \overline{\mathrm{AC}} + \frac{\Delta \phi}{\pi} \cdot \frac{\lambda}{4} = \overline{\mathrm{AC}} + \frac{\Delta \phi}{\pi} \cdot \overline{\mathrm{CD}} }

と位相のズレに対する節の位置のズレが求められます.ただし, \Delta \phi = 2 \pi mで同位相に戻ることに注意が必要です.
上の(エ)の解答をこの式から求めるというのもアリだと思います.

うなりとドップラー効果

これ面白いですね.うなりをドップラー効果を消すという問題です.消し方も絶妙という感じです.この部分は,上の問がわからなくても,解けるので,あきらめずに取っておきたいところかもしれません.
参考物件は,次の 2つです.

うなりの周期

うなりの間隔を求めるという問題です.
うなりというと,定点観測で「うわーん,うわーん」という音の時間的な変化を観測するというものですが,ここではそれを距離(間隔)に置き換えています.
あまり深く考えずに,公式にドン!と当てはめて計算してしまった人勝ちな問題になっています.「2つの音源の間にある点Cで観測しているから,このときのうなりの速さはどうなるんだろう?」などと考えだすと,深みにはまってしまうかもしれません.

うなりという現象は,

  • 2つの音源から発せられる音の周波数が近い(2つの音の区別がつきにくい)
  • 周波数が近いために,2つの音波の山と山が出会ってから,なかなか山と山が出会えず,次に山と山が出会うのはそれぞれの山の数の差が 1になっているときである.(差が 2であれば,その半分のところで一度山と山が出会っているはず)

これら 2つがポイントとなっています.このイメージを持って,問題を考えてみます.
以下,音源  S_Aからの音波を「音A」,音源  S_Bからの音波を「音B」と呼ぶことにします.

点Cで音Aの山と音Bの山が出会っているとき(この時刻において),次に出会う音Aの山と音Bの山は点Cの左右にあり,それぞれが音速: Vで進んで出会うことになります(下図参照).

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うなりの間隔

ここは丁寧に上の内容に従って立式をしてみると,うなりの時間間隔を  T_bとして,

  • 音A(右向き)について,点CL~点C間の波数は  f_A \cdot T_b
  • 音B(左向き)について,点CR~点C間の波数は  f_B \cdot T_b

これらの差が 1となるときに,点Cで山と山が出会うことになります.
  \begin{align} | f_A \cdot T_b- f_B \cdot T_b | &= 1 \\ | f_A - f_B | &= \frac{1}{T_b} \end{align}

音Aと音Bは当然のことながらそれぞれ音速: Vで進むので,うなりの間隔は,
  \displaystyle{ T_b \cdot V = \frac{1}{| f_A - f_B |} \cdot V = \frac{V}{0.02 f} = \frac{50V}{f} }・・・(オ)

ドップラー効果でうなりを消す

音源  S_Aから遠ざかる(振動数を小さくする)&音源  S_Bへ近づく(振動数を大きくする)として,振動数の差をなくすことでうなりを消します.マイクロフォンの速さを  vとして,きっちりと公式に当てはめれば,
  \begin{align} \frac{V-v}{V} \cdot 1.02 f &= \frac{V+v}{V} \cdot f \\ -2.02 \cdot v &= -0.02 \cdot V \\ v &= \frac{V}{101} ・・・(カ)\end{align}

となります.
こういううなりの消し方があるんだったら,マイクロフォン自体をばねにくっつけて単振動させて音を観測してみる.なんてシチュエーションを考えてみても面白いかもしれません.って,今年のセンター物理に似たようなのありましたね.


位相や時間を距離に置き換えるというところがポイントだったのかなと思います.まともに,正弦波( \sin関数)を置いて計算することもできるとは思いますが,それだと逆に上のような置き換えのイメージは出てこない(計算式の中で片付いてしまう)かもしれません.それ以前に,計算が面倒なので時間が足りませんね.
時間を距離に置き換えるといえば,宇宙物理で扱う「光年」もそのようなものになっています(1光年離れたところから届いた光は,1年前に発せられたもの).これも光という波に対して用いている置き換えの例になっています.

*1:時刻と書いた方がいいようにも思うのですが

*2:正確には,\displaystyle{ \frac{\pi}{2} + 2 \pi m }となります.この「周期性」は,後にあるグラフを描く問題で考えなければならないポイントになっています.

*3:正弦波の式: \displaystyle{ y = A \cdot \sin{ 2 \pi \left( \frac{x}{\lambda} - \frac{t}{T} \right) } }の形において  \sinの中身が位相: \phiであり,位置の変化: \Delta xに対して  \displaystyle{ \Delta \phi = 2 \pi \frac{\Delta x}{\lambda} }となる.注釈にしていますが,結構大事なポイントになるところだと思います.

*4:実際には音源は移動していないので,点Bに近いところではこの議論は成り立たない