みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2021年阪大物理第2問」のメモ

第2問は,送電線における消費電力の問題です.等価回路として図2で与えられる交流回路を考え,最後に具体的な値を計算します.

図2 等価回路の図

問1 消費地での消費電力

図2に書かれている電流: i_r(t)は,単に電圧を抵抗で割ったものとして与えられるので,
  \displaystyle{ P_A(t) = v(t) \cdot i_r(t) = \frac{V^2}{r} \sin^2{\omega t} }

問2 消費地での電流の最大値

電流の最大値を  I_rと表すことにすると, P_A(t) = V \sin{\omega t} \cdot I_r \sin{\omega t} = V I_r \sin^2{\omega t}となり,時間平均をとれば,
  \begin{align} \overline{P_A} &= \frac{1}{2} V I_r \\ I_r &= \frac{2 \overline{P_A}}{V} \end{align}

問3 コンデンサーに流れる電流の最大値

コンデンサーは消費地の抵抗: rに並列に接続されているので,かかる電圧は  v(t)となり,キルヒホッフの第2法則から,
  \displaystyle{ V \sin{\omega t} = \frac{Q(t)}{C} }

電流は電荷の時間変化量として与えられるので,微分を使ってしまえば,
  \displaystyle{ i_c(t) = \frac{d Q(t)}{dt} = \omega C V \cos{\omega t} }

問4  i_r(t), \ i_c(t)を合成した電流の最大値

ベクトル図を描いて導くのが通常なのでしょうが,シンプルに三角関数の合成からも,
  \begin{align} i_r(t) + i_c(t) &= I_r \sin{\omega t} + I_c \cos{\omega t} \\ &= \sqrt{ {I_r}^2 + {I_c}^2 } \sin{(\omega t + \phi)} \end{align}

より, \displaystyle{ I_R = \sqrt{ \left( \frac{2 \overline{P_A}}{V} \right)^2 + ( \omega C V )^2 } }

問5 2本の送電線全体で消費する電力

抵抗: R I_R(t)の電流が流れるので,2本あることに注意して,
  P_B(t) = 2 \times R \cdot {I_R(t)}^2 = 2 R I_R \sin^2{\omega t}

この時間平均は, \overline{P_B} = R {I_R}^2

問6  \overline{P_B}を最小にする

問題文に書かれているとおり,相加・相乗平均の関係を用いると,
  \displaystyle{ \overline{P_B} = 2 R \cdot \frac{(2 \overline{P_A}/V)^2 + (\omega C V)^2}{2} \geqq 2 R \cdot \sqrt{ \left( \frac{2 \overline{P_A}}{V} \right)^2 (\omega C V)^2 } = 4 R \omega C \overline{P_A} }

最小となるとき(等号が成立するとき)は, \displaystyle{ \left( \frac{2 \overline{P_A}}{V} \right)^2 = (\omega C V)^2 }のときとなるので,そのまま  Vを求めれば, \displaystyle{ V_{\rm{min}} = \sqrt{ \frac{2 \overline{P_A}}{\omega C} }  }

問7 送電線で消費される電力の算出

定義されている数値をそれぞれの変数に対応づけしていきます.問題冒頭の文章に「単位」がしっかり書いてあるので,そこを見ながらやっていくといいと思います. \mathrm{\mu} = 10^{-6}ってところも,計算し始めて「あれ?あぁ・・・」となるところかもしれません.

  • 消費地での交流電圧の最大値が  500 \mathrm{kV} V = 500 \times 10^3 = 5 \times 10^5 \mathrm{[V]}
  •  60 \mathrm{Hz}の正弦波の交流 →  \omega = 2 \pi \times 60 \mathrm{[rad/s]} (周波数と「角」速度の対応づけがポイント)
  • 送電線の抵抗は  1 \mathrm{km}あたり  0.10 \mathrm{\Omega} R = 100 \times 0.10 = 10 \mathrm{[\Omega]} (直列接続の合成抵抗)
  • 送電線間の電気容量は  1 \mathrm{km}あたりに  0.10 \mathrm{\mu F} C = 100 \times (0.10 \times 10^{-6}) = 10^{-5} \mathrm{[F]} (並列接続の合成容量)
  • 消費地 100 \mathrm{kW} \overline{P_A} = 10^6 \times 10^3 = 10^9 \mathrm{[W]}

それぞれを代入して,
  \begin{align} \overline{P_B} &= 10 \cdot \left\{ \left( \frac{2 \cdot 10^9}{5 \times 10^5} \right)^2 + \left( 2 \pi \times 60 \cdot 10^5 \cdot 5 \times 10^5 \right)^2 \right\} \\ &= 10 \cdot \left\{ \left( 4 \times 10^3 \right)^2 + \left( 600 \pi \right)^2 \right\} \\ &\fallingdotseq 10 \cdot \left( 1.6 \times 10^7 + 0.324 \times 10^7 \right) \\ &= 1.924 \times 10^8 \end{align}

 100 \mathrm{[kW]} = 10^9 \mathrm{[W]}なので,これは  19.24 \mathrm{[kW]}ということで,また(え)が答えになります.


問7は,問5ができていれば得点できる問題なのですが数値の整理がややこしく,時間もかかるし,ミスをしやすいものになっています.問題全体の設定はちょっと見かけないものですが,等価回路を考えていけば良いので内容はそんなに難しくはないと思います.