みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2022年京大物理第1問」のメモ

今年もぼちぼち京大さんのメモを書いていきます.過去問の焼き直し感が強かった印象です.

  • 第1問は,2017年の二重レールの問題*1
  • 第3問は,2007年のゴムひもの問題

第2問もいつぞやの焼き直しなのかもしれませんが.


第1問の力学は,半円のくぼみを使って,いろいろと球遊びをしています.基本問題から,計算量勝負,そして定量的な評価(ざっくり評価)となかなかのバリエーションでの構成になっています.

(1) 円筒面最下部で小球を衝突させる.

ここは基本問題です.確実に採りたいですね.いちおう,いろいろと書いておきます.

  • [ア][エ]は,そのまま与えて,そのまま解くだけです.
  • [オ]は,運動量保存則の式で  - v'と向きを与えられているので, v' > 0となることに注意です.が, M > mという結果をみれば,当たり前ですよね.仮に  v' < 0としてしまっても,結果を見て気づくような運動のイメージはもっていてほしいなと思います.
  • [カ]は,水平投射ですので,鉛直方向の自由落下時間の間に水平方向にどんだけ飛ぶかというだけです.
  • [キ][ク]は,円筒面最下部を位置エネルギーの基準面として考え,小球AとBの落下地点が同じであることは  v' = Vですよというだけです.

(2) 円筒面内で放物運動をし,最下部でバウンドする.

[ケ] 小球Aが円筒面を離れるとき
離れる瞬間における円運動を考えます.遠心力と重力の円筒面に垂直な成分とのつり合いから
  \displaystyle{ M \frac{{V_{\theta}}^2}{R} = Mg \cos{\theta} }

[コ] 円筒面最下部にバウンドするときの速さ
力学的エネルギー保存則ですね.
  \displaystyle{ \frac{1}{2} M V^2 = \frac{1}{2} M {V_{\theta}}^2 + Mg R(1 + \cos{\theta}) }

問1 最下部にバウンドするための条件

面倒だけど,地道に計算するしかないですね.ちょっと固い言い方をすると,「時間というパラメータを介して,最下部の位置にくるような条件を考える」ということになります.そのために,必要な式を書き下しておくと,
小球Aが円筒面を離れた瞬間における水平方向および鉛直方向の速さ
  \begin{cases} V_{\theta x} = V_{\theta} \cos{\theta} \\ V_{\theta y} = V_{\theta} \sin{\theta} \end{cases}

円筒面を離れてから最下部まで放物運動をする条件
  \begin{cases} V_{\theta x} t = R \sin{\theta} \\ V_{\theta y} t - \cfrac{1}{2} g t^2 = -R (1 + \cos{\theta} ) \end{cases}

 tを消去して,3次方程式を解くことになります.さすがに,3次方程式の解を計算させるのは無茶(?)ということで,解が与えられているのかもしれません.解が与えられているとは言え,因数分解をしないと『 \displaystyle{ \cos{\theta} = \frac{1}{2} }の場合のみである.』ことが示せないので,ほぼ解いていることになるんですよね.

以下,計算過程を記しておきます. V_{\theta}は2乗の形で代入して計算することができます.問題文からも察しがつくところですが, \cosだけの式に書き換えることを念頭に置いて変形をしていきます.
  \begin{align} \cancel{V_{\theta}} \sin{\theta} \cdot \frac{R \sin{\theta}}{\cancel{V_{\theta}} \cos{\theta}} - \cfrac{1}{2} g \cdot \left( \frac{R \sin{\theta}}{V_{\theta} \cos{\theta}} \right)^2 &= -R (1 + \cos{\theta}) \\ 
\sin{\theta} \cdot \frac{\bcancel{R} \sin{\theta}}{\cos{\theta}} - \cfrac{1}{2} \cancel{g} \cdot \frac{{\cancel{R}^\bcancel{2}} \sin^2{\theta}}{\cancel{g}\cancel{R} \cos{\theta} \cdot \cos^2{\theta}} &= -\bcancel{R} (1 + \cos{\theta}) \\  
\frac{\sin^2{\theta}}{\cos{\theta}} - \cfrac{1}{2} \cdot \frac{\sin^2{\theta}}{\cos^3{\theta}} &= - (1 + \cos{\theta}) \\ 
\sin^2{\theta}(2 \cos^2{\theta} - 1) &= -2 \cos^3{\theta} (1 + \cos{\theta}) \\ 
(1 - \cos{\theta})(1 + \cos{\theta})(2 \cos^2{\theta} - 1) &= -2 \cos^3{\theta} (1 + \cos{\theta}) \\ 
(1 + \cos{\theta})(2 \cos^2{\theta} + \cos{\theta} -1) &= 0 \\ 
(2 \cos{\theta} - 1)(\cos{\theta} +1)^2 &= 0
\end{align}

そして, \cos{\theta} = -1は円筒面最下部の点を指しており,題意を満たしていません.

[サ][シ] 最下部にバウンドするときの速さ
上で用いた変数を使えば,以下のように表されます.
  V_1 = V_{\theta x}, \ V_2 = V_{\theta y} - g t

[ス] 床面に落下する地点
 V_1, \ V_2を用いて表していいという点が注意点ですね.なので,シンプルになります.最下部〜床面までの時間を  t_Aとおくと,
  \begin{cases} V_1 t_A = L_A \\ V_2 t_A - \cfrac{1}{2} g {t_A}^2 = -R \end{cases}

 t_Aを消去して,今度は 2次方程式を解きます.

(3) 違う高さから水平投射をしたときの飛距離

丸々1ページを使っていますが.聞いていることはシンプルです.

問2 飛距離の比が  \sqrt{3}に収束すること

この「 \sqrt{3}」がどこから与えられているものかに気付けるかがポイントですね.地道に計算をしても導けますが,問題文で「簡潔に述べよ」と言われているので,その内容を整理することが求められます.直感的に気付ければ,その直感をそのまま書いていけばいいわけです.

  • 図4(a)と(b)のいずれの場合も,水平投射なので,床面までの落下時間は高さにのみ依存します.
  • そして,その高さの比は 3 : 1であり,落下時間は  \sqrt{3} : 1になります( H \propto t^2より).

まずは,図4(a)について,円筒面最上部における小球の速さを求めておかなければいけません.
  \begin{align} \frac{1}{2} M {V'}^2 + Mg \cdot 2R &= \frac{1}{2} M V^2 \\ V' &= \sqrt{ V^2 - 4gR } \end{align}

ルートの中の  Vが非常に大きくなれば,後ろの項は無視できるようになるので, V' = Vとみなせるようになり,水平方向の変位(飛距離)は,落下時間の違いに依存するようになる,という流れです.
式でも書いておくと,こんな感じです.
  \displaystyle{ V' = V \sqrt{ 1 - \frac{4gR}{V^2} } \rightarrow V \ (V \rightarrow \infty) }


特に(2)のところで,変数をいろいろと使うので,混乱してしまうかもしれません.落ち着いてまずは整理をしてから,上で記したように計算はしっかり書きながらやっていくのがコツだと思います.昨年は数値計算,今年は文字式計算という感じでしょうか.
(2)ができなくても,(3)は独立して解くことができるようになっています.
やはり,今年の目玉というか,ポイントになるのは次の第2問ですね.

*1:ここで触れています.miwotukusi.hatenablog.jp