京大さん第2問です.ガウスの法則から球形コンデンサーの電場を考え,それを光電子のエネルギー測定をする装置として利用することを考えていきます.
(1) ガウスの法則
[イ] 共通テストでも出てきていたお約束な問いです.書かれているとおりに,電気力線の本数を として式を書き下せば,
(2) 導体球の帯電
[ハ]~[ニ] 電荷は導体表面に分布し,導体球の外側から見れば点電荷と同じ扱いとなります.
逆説的な表現になりますが,導体内の電場がなくなることで,導体表面の電荷分布が一様となり静的な状態になります.ですので,電場の強さは 0となります.電位については,無限遠へ +1 Cの電荷を運んでくることを考えれば,
(3) 中空導体球
(2)の導体球を『中空の導体球』で囲い込みます.この中空の導体球を球殻と呼ぶこともあります.少し文章が長いですが,
- 中空導体球Bは,静電誘導により内側の面に ,外側の面に の電荷が一様に分布するようになります.
- すなわち Bの内部は導体の内部ですので,電場の強さは 0に変化し,
- すなわち Bの外側では,(2)のときと同様に点電荷と同じ扱いになります.
[ホ] そして,『導体球Aと中空導体球Bに挟まれた領域 においても,(2)の状態から電場が変化していない』ということなので,この区間の電位差は,
問1 電位のグラフ
外側から順に考えていく方が,わかりやすいかと思います.
- での電位は,上でも求めているとおり
- での電位は,上の式から
- では電場の強さは 0なので,となります.
- そして,では
- では,また電場の強さが 0になるので,となります.
(4) 球形コンデンサー
[ヘ] 中空導体球Bを接地(アース)すると,外側の表面にあった電荷 が地表に流れます.
[ト] 接地しただけで,AとBの電位差が変わるわけではないので,電位は[ホ]で与えられます.
[チ]コンデンサーとみなしたときの電気容量は,の式より,
(5) 円形の電場中を運動する電子
[リ] (4)で求めた球形コンデンサーの電気容量から,逆算をしていきます.電荷:が与えられたときの電位差が[ホ]だったので,電位差:を与える電荷はどうなるのかを考えてみると,となるので,電場の強さは,
[ヌ] その電場の中で等速円運動をして,スリット を通過する電子を考えます.電場と磁場の違いはありますが,今年の東大第1問の冒頭と似たような話になっています.向心力が電場により与えられる力となるので,
左辺に があるので,そこを利用して,
(6) 光電効果について
(5)の仕組みで電位差:を変えると,いろいろな運動エネルギーの光電子を抽出することができます.そこから,そのエネルギーの分布を与えることができるという話(光電子分光法)が書かれています.
[ル] 金属内部においてあるエネルギーをもった電子が飛び出すことを考えています.文章に忠実にエネルギー準位の図を描いていけば,足し算・引き算の世界です.
は振動数ですので,波長の式に戻してあげます.
問2 光電子のエネルギー分布と最大エネルギー
まず,上で書いた の式で何が「変数」なのかをきちんと理解しなければなりません.逆に,それがきちんとわかれば難しい話ではないです.
- は,波長:の単色光のエネルギーなので定数
- は,仕事関数であり,その金属固有の値なので定数
- は,エネルギー準位の最大値なので定数
- は,自由電子のもつエネルギーであり可変
上の式でも,と括弧をつけていますが,これを とエネルギーの最大値からの差と見てもいいと思います.
仕事関数の上面を地面に見立てて,そこに長さ一定()の棒を突き刺してみます.地面から出ている長さが光電子の運動エネルギーに相当することになります.そんな感じでエネルギー準位の図を見ていけば,その運動エネルギーに上限(棒が まで差し込んでいるとき)があることがわかります.
その上限が,
として与えられます.分布の中身がわからなくとも,このような上限を与えているグラフは[3]しかありません.
逆に,[3]のグラフから,金属内部での自由電子のエネルギー分布は一様(詰まっている)ということがわかるわけです.
球形コンデンサーは,あちこちで出されている感じですね.なので,その応用に入るまでは確実にとっておきたいところです.ちなみに,大学物理の電磁気学でも,初っ端の方で出てくる内容でもあります.