理系男子の独り善がり

仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2020年京大物理第2問」のメモ

京大さん第2問,電気回路の問題です.全体を通して,キルヒホッフの法則を使います.単純な LC回路から出発し,直流電源,ダイオード,抵抗を付け加えながら,拡張していく形で問題は展開されます.
キルヒホッフの法則については,昨年のセンター試験の補足で書いてました.

(1):LC回路(図1)

電気振動を扱い,その振動の様子を時系列で追っていく内容になっています.
[イ]は,キルヒホッフの電圧則(第二法則)を使います.
  \displaystyle{ L \frac{\Delta I}{\Delta t} + V = 0 }

[ロ]は,問題文に出てくる 2つの関係式を組み合わせるだけです.ですが,流れ込んだ(流れ出した)電気量は,次の 2とおりで表されることがあることをおさえておかなければなりません.

  • 化学でよく出てくる電荷量の式:(電流)×(時間)
  • コンデンサーの公式:(電気容量)×(電圧)

[ハ]は,「スイッチを閉じた後,電流  Iが負方向に流れはじめるので,電圧は初期値  Q_0/Cから減少し始める」という文章から, I =0のとき, Vは上記値を最大値として減少し始めるとなり,ちょうど  \sin \cosの関係になっていることから位相の遅れがわかります.

[二]については,「スイッチを閉じる前にコンデンサーに蓄えられていたエネルギー」が「コイルに蓄えられているエネルギー」にすべて変わるときに電流が最大となるので, \displaystyle{ \frac{1}{2} L {I_{\mathrm{max}}}^2 = \frac{1}{2} \frac{{Q_0}^2}{C}}より与えられます.

(2):図2

直流電源,抵抗,そしてダイオードが追加された回路になります.ダイオードは「弁」のような役割を持ち,電流が逆流することを防ぐはたらきをします.

[へ][ト][チ]:スイッチを開けた後の様子

 V' = V -Eという新たな量が現れますが,まずは  V, \ \Delta Vを用いて考えた方がよいと思います.
[へ]の式は,キルヒホッフの電圧則の式であり,以下のようになります.
  \displaystyle{ E + \left( -L \frac{\Delta I}{\Delta t} \right) + (-V) = 0}

[ト]の式は,コンデンサーに蓄えられる電荷量に関する式になります.(1)の[ロ]の式を参考にして,
  \Delta Q = I \cdot \Delta t = C \cdot \Delta V

ここで, \Delta V \Delta V'は定数(定量)  -E違うだけなので, \Delta V = \Delta V'であることが言えます.*1

[チ]は,電流がはじめて 0になるまでの時間は 1/4周期であることを記します.

問1:エネルギー保存則

ここでは, 0 \leqq t \leqq T_1の任意の時刻: tにおけるエネルギー保存則の式を考えてみます.(解答として問われている電圧は, t = T_1のときについて)

「コイルに蓄えられていた初期のエネルギー」

これは素直に,
  \displaystyle{ \frac{1}{2} L {I_0}^2 = \frac{1}{2} L \left( \frac{E}{r} \right)^2 }

と表されます.

「電源から供給されるエネルギー」

電荷 qを電位差: Eの中を運ぶとき,要する仕事は  qEとなります.電源も正極と負極の間に  Eだけの電位差があるととらえ,運ばれた電荷(電気量)はコンデンサーに供給された: C \{ V(t) - E \}と表されます.よって, C \{ V(t) - E \} Eが電源から供給されたエネルギーとなります.
電源はポンプという表現を中学理科あたりで習うと思いますが,その表現を使えば,次のような感じになります.
 「水槽(コンデンサー)に流れ込んだ水(電荷)の量をポンプ(電源)が高さ(電位): Eだけ持ち上げて流してくれた」

コンデンサーに蓄積されたエネルギー」

時刻: tにおいてコンデンサーに蓄積されているエネルギーは, \displaystyle{ \frac{1}{2} C {V(t)}^2 }

エネルギー保存則

(時刻: tにおいてコイルとコンデンサーがもつエネルギー)は,
(時刻:0のときにコイルとコンデンサーがもつエネルギー)に(時刻: tまでに電源から供給されたエネルギー)を加えたものになるので,
  \displaystyle{ \frac{1}{2} L {I(t)}^2 + \frac{1}{2} C {V(t)}^2 = \frac{1}{2} L {I_0}^2 + \frac{1}{2} C E^2 + C \{ V(t) - E \} E }

整理すると, V(t)2次方程式になります.ここでは, V(t) = V, \ I(t) = Iと表すことにします.
  \displaystyle{ V^2 - 2E \cdot V + E^2 + \frac{L}{C} (I^2 - {I_0}^2) = 0 }

当然のことながら「2つの解」が与えられますが,電流が減少する代わりに,電圧は増加するので,
  \displaystyle{ V(t) = E + \sqrt{ \frac{L}{C} \left\{ {I_0}^2 - {I(t)}^2 \right\} } }

となります.図3より, \displaystyle{ I(t) = I_0 \cdot \cos{ \left( \frac{\pi}{2 T_1} t \right) } },単に様子を見るだけであれば, I(t) = I_0 \cdot \cos{\theta} \ (0 \leqq \theta \leqq \pi/2)とでも置いて,上に代入すれば,
  \displaystyle{ V(t) = E + \sqrt{ \frac{L}{C} } I_0 \cdot \sin{\theta} }

と定数+正弦関数の形になることがわかります.

(3):図4

今度は,電源から見て抵抗がダイオードの向こう側に移動しています.そして,スイッチの開閉を繰り返すという操作をおこないます.
変化する量については,先の問題と同様に以下のようにおいています.

  • スイッチを閉じたときの微小変化は,添字に 1
  • スイッチを開いたときの微小変化は,添字に 2
[リ][ヌ]:スイッチを閉じたとき

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2020年京大物理第2問 図4(スイッチを閉じたとき)

どの回路(部分)が有効な回路として機能しているかを見極めることが大事です.まあ,問題文に書いてくれてますが.
[リ]の式は,キルヒホッフの電圧則です.
  \displaystyle{ E + \left( - L \frac{\Delta I_1}{\Delta t_1} \right) = 0 }

[ヌ]の式は,先と同様にコンデンサーに蓄えられる電荷量に関する式になります.

  • コンデンサーの電圧: Vが抵抗にかかるため,流れる電流は  \displaystyle{ \frac{V}{R} }
  • それにより放出される電荷量は  \displaystyle{ - \frac{V}{R} \Delta t_1 }(放出されるので電荷の変化量としては負の量)

となるので,以下のようになります.
  \displaystyle{ \Delta Q_1 = - \frac{V}{R} \cdot \Delta t_1 = C \cdot \Delta V_1 }

[ル][ヲ]:スイッチを開いたとき

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2020年京大物理第2問 図4(スイッチを開いたとき)

[ル]の式は,電圧則ですね.
  \displaystyle{ E + \left( - L \frac{\Delta I_2}{\Delta t_2} \right) + (-V) = 0 }

[ヲ]の式も先ほど同様,コンデンサーに蓄えられる電荷量に関する式なのですが,電源から流れ込んできた電流がコンデンサーと抵抗に分かれて流れ込むところ(すなわち,キルヒホッフの電流則)に注意です.コンデンサーと抵抗が並列接続なので,双方にかかる電圧が等しいことにも注意して,
  \displaystyle{ \Delta Q_2 = \left( I - \frac{V}{R} \right) \cdot \Delta t_2 = C \cdot \Delta V_2 }


「定常状態」へ

このスイッチ開閉操作を繰り返していき,定常状態になったときを考えます.物理で定常状態というと「時間的に変化しない」という意味で使われることが多いですが、ここでは「同じ状態が繰り返される」という意味で使われています.電流も電圧も同じ状態に戻ってくるので,スイッチを開いたときと閉じたときのそれぞれの微小変化はプラスマイナスゼロということで,
  \Delta I_1 + \Delta I_2 = 0, \ \Delta V_1 + \Delta V_2 = 0

という式が与えられます.

問2

先に導出している([リ][ヌ])と([ル][ヲ])の式から,微小変化を与え,上に書いた条件式と  I = I_0, \ V = V_0を放り込みます.

  • [リ]の式 ⇒  \displaystyle{ \Delta I_1 = \frac{1}{L} E \cdot \Delta t_1 }
  • [ヌ]の式 ⇒  \displaystyle{ \Delta V_1 = \frac{1}{C} \left( -\frac{V_0}{R} \right) \cdot \Delta t_1 }
  • [ル]の式 ⇒  \displaystyle{ \Delta I_2 = \frac{1}{L} (E - V_0) \cdot \Delta t_2 }
  • [ヲ]の式 ⇒  \displaystyle{ \Delta V_1 = \frac{1}{C} \left( I_0 -\frac{V_0}{R} \right) \cdot \Delta t_2 }

 \Delta t_1 = \alpha \Delta t_2 \Delta t_2 \neq 0として, \displaystyle{ V_0 = (1 + \alpha)E, \ I_0 = (1 + \alpha)^2 \frac{E}{R} }を導きます.
そして, \alpha = 1のときについては,上から  \displaystyle{ \Delta V_1 = - (1 + \alpha) \frac{E}{CR} \Delta t_1 }となるので,そこへもろもろの値を代入するだけです.

問3

問題文に「図4の回路は電源の電圧  Eよりも大きな電圧  Vを作り出すことができる」と書かれています.その比率は  \alphaによって与えられます.ちょっと自信ないですが,ここにツッコミを入れておくと,

  • そもそも  \alphaとはスイッチ開閉の時間比であり,その値が大きいほど作り出される電圧は大きくなります.*2
  • スイッチを開いているときは,電源という「ポンプ」から図4右側の回路にエネルギーを送り込むフェーズになっています.ここには,ダイオードという「弁」が備えられているので,このエネルギーが漏れる(逆流するという言い方は微妙ですが,イメージ的には)ことは防がれています.
  • では,「なんでスイッチを開閉させる必要があるの?ずっと開きっぱなしでもいいんじゃないの?」という話が出てくるかもしれません.図2のところで出てきたように,電気振動はダイオードがあるせいで 1/4周期で終わってしまい,電流が流れなくなってしまうわけです.一度スイッチを閉じて電流を復活させることで,次にスイッチを開いたときに流れる電流の「勢い」を復活させるようなイメージをもっています.

で,ここで問われていることは難しくありません.

  • 図5の回路での消費電力は, \displaystyle{ W_5 = \frac{E^2}{R} }
  • 図4の回路での消費電力は, \displaystyle{ W_4 = \frac{{V_0}^2}{R} = (1 + \alpha)^2 \cdot \frac{E^2}{R} }

となり, (1 + \alpha)^2倍となります.


実は,ダイオードが結構重要な役割をしているという問題だと思います.
「電源から供給されるエネルギー」のところが一つのポイントかなあと.あとは,微小量など何個も出てくる物理量をきちんと整理できれば,(時間的なところを無視して)まだ難しくはないのかな?という感じだと思います.

*1:不安ならば,微小変化をさせた式  V' + \Delta V' = (V + \Delta V) - Eを考え,もとの式と両辺を差し引けばよいです.

*2:とは言っても,あまり大きすぎると定常状態にならないということは考えられますね.