むかし出会った 1次変換の問題です.問題のレベルは決して高くないのですが,ちょっと面倒くさいという問題です.いつもの備忘録も兼ねて,以下に記しておきます.
問題
座標平面上に相違なる 4点 があり,1次変換
により
と移されるものとする.また,は同一直線
上にあるとする.
とするとき,点
は直線
上にあることを示せ.
となる点
が存在すれば,点
は直線
上にあることを示せ.
- 直線
が原点を通らないならば,点
は直線
上にあることを示せ.
一応,図にしてみると以下のようになります.
どう攻める?
ベタな方法としては,「点 の座標と 1次変換
を表す行列
の成分を与え,条件を用いながら示していく.」ことになると思います.ただ,変数が非常に多くなってしまい,条件がつくとはいえ処理をするのは大変です.
そこで,
点の位置ベクトルと 1次変換
を表す行列
を用いる
ことを考えていきます.
- 1次変換を行列とベクトルを用いて表すこと
- 「直線上にある」をベクトルを用いて表すこと
ポイントは,この 2つだけです.とはいえ,面倒なのですけど...
「やっちまったなぁ〜!」という解法
自身もはじめはここに示す考え方をしていました.
恥さらしではありますが,しばらく書き進めてみますので,どこで間違いを犯しているのか粗探しをしてみて下さい.
【恥さらし,ここから】
以下,点の位置ベクトルを
と表すことにします.すると,
とこれら 4つの点は と
だけで表すことができます.
そして,「直線上にある」は「定数倍」であるということから
と表すことができます.(は実数)
実数 については,
(
と
は異なる点である),
(
と
は異なる点である)という条件がつきます.
を上で与えた式で書き換え,整理すると単位行列を
として,
と変形できます.
だと,点
は原点に移されてしまい,相違なることに矛盾
だと,4点が相違なることに矛盾
なので,
であることが示されます.
【恥さらし,ここまで】
間違いは,「因数分解」をした後の場合分けです.あくまでも は行列なので,このような場合分けをすることはできません.これができてしまうと,
も言えてしまうことになります.
もし上に挙げている関係式が確実に言えれば,点 が直線
上にあることを示すのは難しくありません.逆にここまでやってしまうとダメということなので,そこまでこねくり回さない方法を考えていくことになります.
問1
これは,あっさり片付きます.上で書いた関係式に左から をかけて,
すると,3点 は同一直線上にあることがいえます.直線
は直線
そのものですから,点
も直線
上にあることが示されました.
問2
さっきよりはちょっとひねりを加えます.これも上で書いた関係式から,行列 の関係式を書き出します*1.
この式を にぶつけると
となって,3点 は同一直線上にあることがいえます.あとは問1と同様です.
問3は,ちょっと違った視点から攻めることになります.それは次回にて.
2017/07/19補足
上の赤字で記した関係式から,
という関係が導かれます(式変形で導くのであれば,赤字の式の両辺にを加える.図を描いても,すぐに導ける.).これは「次のとなりの点までの距離は,前のとなりの点との距離の
倍」ということを表しています.このことからも,
:もし
だと,点
をはさんで「ピンポン」してしまう(
倍ゆえに).
:もし
だと,点
から動かない.
という条件が必要であることがわかります.
*1:当然のことですが,であることをしめした上でです.