理系男子の独り善がり

仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「ベクトルは難しくないと思うのですが」の焼き直し

過去に書いた以下のネタの焼き直しです.
miwotukusi.hatenablog.jp
miwotukusi.hatenablog.jp


書いた当初は,MathJaxによる記述ができることを知らず,無理やりベクトルを表記していました.なので,内容はともかく見栄えが悪いものとなっていました*1.今回はそのネタの焼き直し(書き直し)をします.

前書き

ベクトルは「大きさと向き」をあわせ持った量であり,図形的には「矢印の長さと向き」で表されます*2.物理を勉強する人にはずっとつきまとってくるものです.たいていは,内分点・外分点と証明問題がでてくるあたりから「わからない」「きらい」という言葉が出てくるように思います.
マッチ棒やつまようじのような先と根があるようなものを「付け足す」という感覚からはじめていけばいいのかな?とも思います.
先に,基本となる考え方(捉え方)のポイントを書き出しておきます.

  1. ベクトルは始点と終点だけで決まる.(始点とと終点を入れ換えると,引き算になる)
  2. 直線上の点は、「定数倍」で表せる.(→内分点・外分点)
  3. 1次独立
  4. 内積

なぜ嫌われるのか

スカラー量と同じように計算しようとしたらできない」というのが,その⼀つではないかと思います.スカラーとは,通常扱っている数字のように⼤きさのみを持っている量のことです.ベクトルに対して使う⾔葉です*3
また,ベクトルの演算には割り算がありません.⾜し算や引き算,かけ算*4は定義されています.ベクトルの⾜し算もスカラーとは異なるのですが,⼀番「違和感」を覚えるのは引き算ではないでしょうか?わたし自身,ベクトルの引き算にはなかなか慣れませんでした.

引き算って何?

わたしが慣れなかった引き算というのは,
  \overrightarrow{AB} = \overrightarrow{OB} - \overrightarrow{OA}

というものでした.引き算なので,順序を逆に書くと間違いになってしまいますし,いやな感じがしてました.
ベクトルの引き算って何でしょうか?わたしが出した答えは,「単に,足し算の逆算(逆演算)」だということでした.そして,「引き算は足し算に置き換えられる」ということです.
 \overrightarrow{BA}は, -\overrightarrow{AB}と同じです.極力,足し算だけで計算をし,始点・終点を入れ替えたところだけ「ー(負号)を前につける」ということにしました.

以下,ベクトルの問題を考える上で基本となる事項を挙げていきます.

基本1:ベクトルは始点と終点だけで決まる.

言い換えれば,途中の経路には寄らないということです.小学生の算数での表現を借りれば,「道のりではなく,距離を考えている」イメージです.

 始点と終点さえ同じであれば,途中の「寄り道」はOKなのです.

\overrightarrow{AB}に対して,

  •  \overrightarrow{AB} = \overrightarrow{AC} + \overrightarrow{CB}と書いても
  •  \overrightarrow{AB} = \overrightarrow{AC} + \overrightarrow{CD} + \overrightarrow{DE} + \overrightarrow{EB}と書いても

同じベクトルを表しているということです.始点 Aと終点 Bの間に,経由地を割り込ませているイメージになります.

 Oを割り込ませることを考えると,
 \begin{align} \overrightarrow{AB} &= \overrightarrow{AO} + \overrightarrow{OB} \\ &= -\overrightarrow{OA} + \overrightarrow{OB} \end{align}

となります.これは先に挙げた引き算の式を足し算から導き出した内容になっています.

基本2:直線上の点は,「定数倍」で表せる.

 \overrightarrow{AB} \overrightarrow{PQ}が平行であれば,
  \overrightarrow{AB} = k \cdot \overrightarrow{PQ}

と表される.点 Pが点 Aに一致すれば,3点 A, \ B, \ Qは一直線上にある.これが基本のその2です.

直線 \ell上の動点 Pを表すことを考えるのであれば,

  • 直線上の点 Aまで移動し( \overrightarrow{OA}),
  • 直線に沿ったベクトル(方向ベクトル)の定数倍だけ移動する( t \cdot \overrightarrow{AB}).

という考え方で,
  \overrightarrow{OP} = \overrightarrow{OA} + t \cdot \overrightarrow{AB}

と表すことができます.
 Aは一次関数でいうところの「y切片」に似ているかなあ.とも思います.

というわけで,内分点・外分点の公式は覚えていません(苦笑).

内分点・外分点とそれぞれ「公式」があります.しかし,わたしはきちんと覚えていません(単なる面倒くさがり).それよりも公式を導き出す過程の方が,図形的な意味をきちんと捉えられると思っています.下図の内容であれば,先の直線の例を真似て,

  •  \overrightarrow{OM}は,点 Oから点 Mへむかうベクトルを考えている.
  •  Oから点 Mへ向かうには,まず点 Aへ行き,そこから  \overrightarrow{AB}の定数倍だけ移動する.たとえば,下図のように  AM : BM = s : tであれば, \displaystyle{ \overrightarrow{AM} = \frac{s}{s+t}  \cdot \overrightarrow{AB}}として与えられる.この方が図形的な意味をきちんと捉えられる.

というイメージだけを覚えています.
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基本3:1次独立

ここでは深く触れませんが,1次独立であることを利用すれば「係数比較」ができるということです.(本当は,係数比較ができるようなベクトルの関係を 1次独立であるというのですが・・・)
よく 2つの直線の交点を表す問題に用いられますね.この手の問題を解くときにも,基本2の内容を用いて係数比較するための式を導き出すことになります.

また,1次独立であるベクトルを用いれば,空間の任意の点はそれらの 1次結合として表すことができます.以下に、その例を挙げておきます.

平面上の点(空間図形)

空間(3次元空間)における平面上の点を表すことを考えます.原点 Oと一直線上には存在しない 3点 A, \ B, \ Cを考えます*5.このとき, \triangle ABCを含む平面上の点 Pの位置ベクトルを  \overrightarrow{OA}, \ \overrightarrow{OB}, \ \overrightarrow{OC}を用いて表してみます.
上の内分点・外分点のときと同様に考えます.

  1. 原点 Oからとりあえず点 Aまで進む.
  2.  Aから見れば,点 P \overrightarrow{AB}, \ \overrightarrow{AC}で張られる平面上に存在する.

先に 2.から考えてみます.内分点・外分点のときであれば,点 Aから点 Bまで進んでから,直線 BCに沿って定数倍だけ移動するという流れでした.いまは,点 Aから点 Bまでの移動も  \overrightarrow{AB}の定数倍だけ移動することになります.直線 AB上の点を Lとすると,
  \overrightarrow{AL} = s \cdot \overrightarrow{AB}

ここからさらに  \overrightarrow{BC}に沿って移動するので, \overrightarrow{LP} = t \cdot \overrightarrow{BC}となり,
  \begin{align} \overrightarrow{AP} &= s \cdot \overrightarrow{AB} + t \cdot \overrightarrow{BC} \\
&= s \cdot \left( \overrightarrow{AO} + \overrightarrow{OB} \right) + t \cdot \left( \overrightarrow{BO} + \overrightarrow{OC} \right) \\
&= -s \cdot \overrightarrow{OA} + (s-t) \cdot \overrightarrow{OB} + t \cdot \overrightarrow{OC} \end{align}

と表されます.
あとは,これに 1.を付け足すだけですから,
  \begin{align} \overrightarrow{OP} &= \overrightarrow{OA} + \overrightarrow{AP} \\
&= (1-s) \cdot \overrightarrow{OA} + (s-t) \cdot \overrightarrow{OB} + t \cdot \overrightarrow{OC} \end{align}

となります.このままではわかりにくいですが, 1-s = \alpha, \ s-t = \beta, \ t = \gammaとおくと,
  \overrightarrow{OP} = \alpha \cdot \overrightarrow{OA} + \beta \cdot \overrightarrow{OB} + \gamma \cdot \overrightarrow{OC}
 (ただし, \alpha, \ \beta, \ \gammaは実数で, \alpha + \beta + \gamma = 1)

と書き直すことができます.準公式として習う場合もあると思います.上の内分点・外分点(これは 2次元バージョン)も同様に変形することができ,その 3次元バージョンと見ることもできます.

基本4:内積

2つのベクトル  \overrightarrow{a} \overrightarrow{b}のなす角を  \thetaとすると,
  \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} = |\overrightarrow{a}| |\overrightarrow{b}| \cos{\theta}

となります.2つのベクトルの始点を重ねたときにできる角について述べています.
 「2つのベクトルが垂直であること」を示すときに,よく用いられます.

ただし,
  \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} = 0ならば  \overrightarrow{a} \perp \overrightarrow{b} または  \overrightarrow{a} = \overrightarrow{0} または  \overrightarrow{b} = \overrightarrow{0}

零ベクトルになる場合もあるということを忘れないように.

三角形の面積

2つのベクトルによって作られる三角形の面積をベクトルを用いて表します.これも公式として書かれていることが多いですが,導出過程を覚えておく方がいいと思います.
 \triangle OABにおいて, OA = a = |\overrightarrow{a}|, \ OB = b = |\overrightarrow{b}|, \ \angle AOB = \thetaとすると,
  \displaystyle{ \triangle OAB = \frac{1}{2} ab \sin{\theta}}

として求められます. b \sin{\theta}が辺 OAに対する高さになっていると考えればよいです.
 a bはベクトルの大きさとして与えられるので, \sin{\theta}を書き換えるところがポイントです.内積 \cos{\theta}で書き換えればいいわけです.
  \displaystyle{ \cos{\theta} = \frac{ \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} }{ab} }

より
  \begin{align} \sin^2{\theta} &= 1 - \cos^2{\theta} \\
&= 1 - \left\{ \frac{ \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} }{ab} \right\}^2 \\
&= \frac{ (ab)^2 - \left( \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} \right)^2 }{(ab)^2} \end{align}

 0 < \theta < \piのとき, \sin{\theta} > 0ですから,
  \displaystyle{ \sin{\theta} = \frac{ \sqrt{ (ab)^2 - \left( \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} \right)^2 } }{ab} }

となります.これをもとの面積の式に代入すると,
  \displaystyle{ \triangle OAB = \frac{1}{2} \sqrt{ (ab)^2 - \left( \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} \right)^2 } }

となります.さらに, \overrightarrow{a} = (X_1, Y_1), \ \overrightarrow{b} = (X_2, Y_2)と成分で表すと,
  \begin{align} \triangle OAB &= \frac{1}{2} \sqrt{ ({X_1}^2 + {Y_1}^2)({X_2}^2 + {Y_2}^2) - (X_1X_2 + Y_1Y_2)^2 } \\
&= \frac{1}{2} \sqrt{ (X_1Y_2 - X_2Y_1)^2  } \\
&= \frac{1}{2} | X_1Y_2 - X_2Y_1 |\end{align}

と簡単な式で与えられます.

ベクトルを用いている過去のネタ

上に書いていることを基本として書いている過去のネタを挙げておきます.

*1:ほかの過去の記事もそうなのですが,ベクトルが一番見づらいと感じています.

*2:高校数学のように 3次元までであれば,図示することは容易です.しかし,高次元になるとそういうわけにもいかず,成分表示に頼ることになります.

*3:"テンソル"と呼ばれるものの存在もありますが

*4:内積外積の 2種類の積があります.

*5:これら4点が同一平面上にないことも条件になります.