みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2024年京大物理第1問」のメモ

今年も京大さんの問題をメモっていきます.全体的には,相変わらずの分量かなという感じです.加えて,比較的図が多かったことと近似大会が控えめだったなというところです.

第1問は,「単振動+単振動」な問題です.最後に少し「えっ?」というオマケをつけておきます.

(1) 単振り子(棒バージョン)

支点とおもりの間が固い棒なので,張力を考える必要がありません*1

[ア]〜[イ] 初っ端は教科書どおりです.
運動方程式は, \displaystyle{ \sin{\theta} \fallingdotseq \theta \fallingdotseq x/L }より
  \displaystyle{ ma = -mg \sin{\theta} = - \frac{mg}{L} x },角振動数は  \displaystyle{ \sqrt{\frac{g}{L}} }

[ウ]〜[オ] ここも標準,力学的エネルギー保存則を近似式を用いて整理します.
  \displaystyle{ E = \frac{1}{2} m {v_0}^2 + mg \cdot L(1 - \cos{\theta}) = \frac{1}{2} m {v_0}^2 + \frac{1}{2} \frac{mg}{L} {x_0}^2 }

位置: x,速さ: vのときの力学的エネルギー保存則の式は単純に
  \displaystyle{ \frac{1}{2} m v^2 + \frac{1}{2} \frac{mg}{L} x^2 = \frac{1}{2} m {v_0}^2 + \frac{1}{2} \frac{mg}{L} {x_0}^2 }

[エ] x = 0のとき,[オ] v = 0のときとなります.

問1 単振り子とばね振り子の衝突

ここでは,おもりAに棒とばねの両方がついているので,それぞれからの影響(力)を受けます.また,2つのおもりは重さが等しく,衝突は弾性衝突をするので,「ビリヤードの玉突き」状態(速度が入れ替わる)になります.時系列を追って書いてみると,

  1. 時刻: t = 0での衝突直後,おもりAの速度は  v_{\mathrm{A}} = - v_1,おもりBの速度は  v_{\mathrm{B}} = 0となります.
  2. 次の衝突までの間,おもりBは静止したままであり,おもりAの運動方程式 \displaystyle{ ma_{\mathrm{A}} = \left( -\frac{mg}{L} x \right) +(-kx) = - \frac{4mg}{L} x }となります.おもりAの運動の振幅: x_{\mathrm{A}}は力学的エネルギー保存則: \displaystyle{ \frac{1}{2} \frac{mg}{L} {x_{\mathrm{A}}}^2 + \frac{1}{2} k {x_{\mathrm{A}}}^2 = \frac{1}{2} m {v_1}^2 }より求まります.
  3. おもりAが半周期運動すると,もとの位置に戻ります.その時間は, \displaystyle{ t_{\mathrm{A}} = \frac{1}{2} \cdot 2 \pi \sqrt{\frac{L}{4g}} = \frac{\pi}{2} \sqrt{\frac{L}{g}} }
  4. 時刻: t = t_{\mathrm{A}}での 2回目の衝突直後,おもりAの速度は  v_{\mathrm{A}} = 0,おもりBの速度は  v_{\mathrm{B}} = v_1となります.
  5. 2回目の衝突までの間は,上で求めた単振り子の運動半周期分となります.

おもりAの方がばねがついている分,復元力の大きさが大きくなるので,振幅も周期も小さく(半分に)なります.

[カ]〜[ク] では,ばねの位置が変更されます.それにより,ばねより及ぼされる力が変化します.三角形の相似を考えれば,ばねの伸びは  \displaystyle{ \frac{d}{L} x }となります.
長さ: dの位置にかかる力の大きさは  \displaystyle{ k \frac{d}{L} x },長さ: Lの位置にかかる力の大きさは  Fとなるので,力のモーメントのつり合いから  \displaystyle{ F \cdot L = k \frac{d}{L} x \cdot d }となります.
よって,運動方程式
  \displaystyle{ ma = - \frac{mg}{L} x - k \left( \frac{d}{L} \right)^2 x }

となり,その角振動数は  \displaystyle{ \sqrt{ \frac{g}{L} + \frac{k}{m} \left( \frac{d}{L} \right)^2 } }となります.

ここまでが (1)になります.もうちょっと細かく割ってもよかったかなあ?とも思ったりはしますが.

(2) 単振り子をばねで連結

条件がいろいろと出ていますが.回転角は微小なため,ばねは水平に運動しているとみなすことが書かれています.細かいところですが,『右向きを正』もおさえておきたいポイントです.
[ケ]
それぞれのばねの伸びは  \displaystyle{ \frac{d}{L} }倍となっているので, \displaystyle{ s_2 = \frac{d}{L} (x_{\mathrm{D}} - x_{\mathrm{C}}  ) }

[コ]〜[サ]
[カ]〜[ク]で求めた結果に,他方のおもり側からの影響を加えるイメージをすればいいです.おもりCについてみると,おもりD側からの影響はばねにより右向きに引かれるので,
  \displaystyle{ m a_{\mathrm{C}} = - \frac{mg}{L} x_{\mathrm{C}} - k \left( \frac{d}{L} \right)^2 x_{\mathrm{C}} + k \left( \frac{d}{L} \right)^2 x_{\mathrm{D}} = - \frac{mg}{L} x_{\mathrm{C}} + k \left( \frac{d}{L} \right)^2 ( x_{\mathrm{D}} - x_{\mathrm{C}} ) }

おもりDは,逆におもりC側から左向きに引かれるので,
  \displaystyle{ m a_{\mathrm{D}} = - \frac{mg}{L} x_{\mathrm{D}} - k \left( \frac{d}{L} \right)^2 ( x_{\mathrm{D}} - x_{\mathrm{C}} ) }

同じ角振動数で単振動するという状態について,与えられている加速度の式を代入するすると,
  \begin{cases} \displaystyle{ -m \omega^2 x_{\mathrm{C}} = - \frac{mg}{L} x_{\mathrm{C}} + k \left( \frac{d}{L} \right)^2 ( x_{\mathrm{D}} - x_{\mathrm{C}} ) } \\ \displaystyle{ -m \omega^2 x_{\mathrm{D}} = - \frac{mg}{L} x_{\mathrm{D}} - k \left( \frac{d}{L} \right)^2 ( x_{\mathrm{D}} - x_{\mathrm{C}} ) } \end{cases}

両辺を加えれば  \omega_1,両辺を差し引けば  \omega_2が求まります.

  • 角振動数が  \omega_1のときは,おもりCとDは同じ向き(ともに右向きか左向きに)揺れている →  x_{\mathrm{C}} = x_{\mathrm{D}}
  • 角振動数が  \omega_2のときは,おもりCとDは反対向き(一方が右向きなら,他方は左向き)に揺れている →  x_{\mathrm{C}} = - x_{\mathrm{D}}

途中, X_1, \ X_2が与えられていますが,答えを考える上ではあまり重要ではないと思います.ただ,式の形を見てみると, X_1はおもりCとDの重心の運動, X_2はおもりCとDの振れ幅の差に(ばねの伸びにも)関連する量であることはわかると思います.

ちょっと補足

同じ角振動数として,ここは導出していますが,もとの運動方程式のままでも両辺を加えたり,差し引いたりすれば,
  \begin{cases} \displaystyle{ m ( a_{\mathrm{C}} + a_{\mathrm{D}} ) = - \frac{mg}{L} ( x_{\mathrm{C}} + x_{\mathrm{D}} ) } \\ \displaystyle{ m ( a_{\mathrm{C}} - a_{\mathrm{D}} ) = - \left\{ \frac{mg}{L} + 2k \left( \frac{d}{L} \right)^2 \right\} ( x_{\mathrm{C}} - x_{\mathrm{D}} ) } \end{cases}

両辺を 2で割って,加速度は変位の 2階微分であることを使えば,以下のように書き換えられます.
  \begin{cases} \displaystyle{ m \frac{d^2 X_1}{dt^2} = - \frac{mg}{L} X_1 } \\ \displaystyle{ m \frac{d^2 X_2}{dt^2} = - \left\{ \frac{mg}{L} + 2k \left( \frac{d}{L} \right)^2 \right\} X_2 } \end{cases}

さらにオマケ

冒頭で書いていたオマケです.この運動,以下の図と同じです.複数のばねで連結されたモデルを連成振動と呼びます.同じ単振動なんだから,ばねで置き換えても一緒でしょというだけです.この方がそれぞれのおもりに加わる力は見やすいかと思います.

(2)は連成振動と同じモデル

大学物理では,もっと多くのおもりやばねを増やしたモデルを考えたりします.大学物理では,行列を用いたりして,また高校物理とは違った解き方をします.と言ってたら,今年の東京医科歯科大で出たみたいですね.

問2 運動の様子から構成を探る

ばねの伸びの変化の様子を与えています(グラフはいらなかったというか,逆に混乱させているようにも...).上でも書いているように  X_2に関する関係となります.よって,
  \displaystyle{ \sqrt{ \frac{g}{L} + 2 \frac{k}{m} \left( \frac{d}{L} \right)^2 } = 2 \times \sqrt{\frac{g}{L}} }

あとは, kを代入して整理するだけです.


少しずつ増築をして話を膨らますといういつもの展開です.正直,(1)はちょっと詰め込みすぎ(どこかで区切りを入れて話をした方がわかりやすい),(2)は何をしているのかがちょっとわかりにくいかなあ?(答えを出すこと自体は誘導に従うまでだとしても)といった印象です.

*1:さほど参考にはならないかと思いますが,参考物件は miwotukusi.hatenablog.jp