みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

交流回路のインピーダンスと応用題(2024年同志社大(全学部理系)物理[II])

交流回路におけるインピーダンス(交流抵抗)について考えます.電池ではよく出てくる「内部抵抗」といった考え方も含めた解析をしてみます.そのあとに,今年の入試問題(2024年同志社大(全学部理系)物理[II])を取り上げておきます.これもまた長文となりますが,前半の三角関数での扱いを知らず(読まずに)に,後半のメモは読まない方がよいと思います.

交流回路のインピーダンス

交流電源の電圧が  V = V_0 \sin{\omega t}で与えれるとき,回路に接続されたデバイス(抵抗:R,コイル:L,コンデンサー:C)に流れる電流は,以下のようになります.

バイス 電圧降下の式 流れる電流
R  V = R I_{\mathrm{R}}  \displaystyle{ I_{\mathrm{R}} = \frac{V_0}{\color{red}{R}} \sin{\omega t} }
L  \displaystyle{ V = L \frac{dI_{\mathrm{L}}}{dt} }  \displaystyle{ I_{\mathrm{L}} = - \frac{V_0}{\color{red}{\omega L}} \cos{\omega t} = \frac{V_0}{\color{red}{\omega L}} \sin{\left( \omega t - \frac{\pi}{2} \right)} }
C  \displaystyle{ V = \frac{Q}{C} }  \displaystyle{ I_{\mathrm{C}} = \frac{V_0}{\color{red}{1/(\omega C)}} \cos{\omega t} = \frac{V_0}{\color{red}{1/(\omega C)}} \sin{\left( \omega t + \frac{\pi}{2} \right)} }

流れる電流がわかると,インピーダンスと生じる位相のズレを求めることができます.赤字のところがインピーダンス*1を表しています.なお,正確には,実効電圧と実効電流の比(時間平均をとった値の比)として与えられます.ですので,時刻に依存する三角関数の部分は無視されます.

交流回路

かけられた電圧に対して,電流の位相がズレるのは誘導起電力であったり,蓄電による電流の変化が影響しています.直流の場合は,いずれについても時間が経過すれば一定の値に落ち着くのですが,交流の場合はそうはなりません.

次元解析

あまり電磁気に対しておこなうことがないので,コイルとコンデンサーのインピーダンスに対して次元解析をしておきます.
miwotukusi.hatenablog.jp

このネタにも書いているように,長さ・重さ・時間に電流を加えて考えていきます.Wikipediaでもそれぞれの物理量について,この4つの組合せで次元を書いてくれているので,そこを見て確認することができます.

  • 周波数: \omegaは周期(時間)の逆数なので, [ \omega ] = \mathrm{T}^{-1} となります.あとは,抵抗: R,電気容量: C,インダクタンス: Lの次元がわかれば比較ができるようになります.
  • 電荷 Qの次元は, Q = Itより  [ Q ] = \mathrm{TI}
  • 次に,電圧: Vの次元は,電荷に対しておこなう仕事の式: W = QVについて  [ W ] = [ \mathrm{M} \mathrm{L}^2 \mathrm{T}^{-2} ] (仕事は力と距離の積)と電荷の次元から, [ V ] = \mathrm{M} \mathrm{L}^2 \mathrm{T}^{-3} \mathrm{I}^{-1}

電圧の次元がわかると,あとは芋づる式にそれぞれの次元が求まります.

  • 抵抗については,オームの法則の式: V = IRより, [ R ] = [ V/I ] = \mathrm{M} \mathrm{L}^2 \mathrm{T}^{-3} \mathrm{I}^{-2} と抵抗の次元が求まります.
  • さらに,コンデンサーについては,蓄えられる電荷の式: Q = CVより, [ C ] = [ Q/V ] = \mathrm{M}^{-1} \mathrm{L}^{-2} \mathrm{T}^4 \mathrm{I}^2 となります.
  • コイルについては,上でも扱っている誘導起電力の式: \displaystyle{ V = L \frac{dI_\mathrm{L}}{dt} }より, [ L ] = [ Vt/I ] = \mathrm{M} \mathrm{L}^2 \mathrm{T}^{-2} \mathrm{I}^{-2} となります.

あとは, R, \ \omega L, \ 1/(\omega C)のそれぞれの次元が同じになることを確かめればよいです.
このあと出てくる式は,少し複雑な形をしています.特に分数形になっているところについては,その部分の次元がどのようになっているかを追うクセをつけておくことをお勧めします.そのためにも,このような内容を記したという意図があります.

コンデンサーに流れる電流

先に,コンデンサーからやっつけます.コンデンサーに流れる電流は,流れ込む電荷の変化量として与えられます.すなわち, \displaystyle{ \frac{dQ}{dt} = I_{\mathrm{C}} }.電圧降下の式の両辺を時間で微分して,
  \displaystyle{ \frac{d}{dt} ( V_0 \sin{\omega t} ) = \frac{1}{C} \frac{ dQ }{dt} = \frac{1}{C} I_{\mathrm{C}} }

より導出されます.

コイルに流れる電流

上の表にある式は,電圧降下の式において両辺を時間で積分すれば求められます*2

ここで,もう少し突っ込んだ内容を扱ってみます.

コイルの解析
コイルに内部抵抗がある場合

コイルの素材自体は抵抗がないものが理想ですが,現実には抵抗が存在します.そこで,コイル自身が内部抵抗(大きさ: r)をもつとすると,電圧降下の式は以下のようになります(内部抵抗が直列接続されていると考えて).
  \displaystyle{ V = L \frac{dI_{\mathrm{L}}}{dt} + r I_{\mathrm{L}} }

このようになると,微分方程式を解かなければいけなくなります.が,ある条件を置いて考えることで,比較的簡単に解を与えることができます.
その条件とは,流れる電流がもつ周波数は変わらず,振幅が変化したり,位相がずれたりする.という条件です.入力である電源電圧に呼応して生じる現象なので,周波数は変わらんでしょうという見立てです.これを式で表してみると,解を以下のように置くことになります.
  I_{\mathrm{L}} = I_0 \sin{( \omega t + \phi )}

この  I_0 \phiを求めればいいわけです.上の微分方程式に代入すれば,
  \begin{align} V_0 \sin{\omega t} &= L \frac{d}{dt}\left( I_0 \sin{( \omega t + \phi )} \right) + r I_0 \cdot \sin{( \omega t + \phi )} \\ &= I_0 \left\{ \omega L \cdot \cos{( \omega t + \phi )} + r \cdot \sin{( \omega t + \phi )} \right\} \\ &= I_0 \sqrt{r^2 + (\omega L)^2} \sin{( \omega t + \phi + \alpha )} \end{align}

2行目から3行目では三角関数の合成を用いています.高校物理の範囲では,ベクトルの図を用いて考えているところに該当します.いままでも波動に関するネタで何回か登場しています.慣れれば簡単なのですが,改めてその内容を記しておきます.

  •  \sin, \ \cosの前についている係数の 2乗の和の平方  \sqrt{r^2 + (\omega L)^2}を括り出します.
  • 括り出した中で  \sin, \ \cosの前についている係数について, \displaystyle{ \frac{r}{\sqrt{r^2 + (\omega L)^2}} = \cos{\alpha}, \ \frac{\omega L}{\sqrt{r^2 + (\omega L)^2}} = \sin{\alpha} }とおきます.
  • すると, \sin{\Omega} \cos{\alpha} + \cos{\Omega} \sin{\alpha} = \sin{(\Omega + \alpha)}の加法定理の形となって,まとめることができます.
  •  \alphaについては,置いた式の両辺で割り算をして  \displaystyle{ \tan{\alpha} = \frac{\omega L}{r} }と表したりすることが多いです.ついている係数の比として与えられることを表しています.

出てきた式が任意の  tについてつねに成り立つためには,
  \begin{cases} V_0 = I_0 \sqrt{r^2 + (\omega L)^2} \\ \phi + \alpha = 0\end{cases}

とならなければならず*3,これらより流れる電流は以下のように与えられます.
  \displaystyle{ I_{\mathrm{L}} = \frac{V_0}{\sqrt{r^2 + (\omega L)^2}} \sin{( \omega t + \phi )} }
 ただし, \displaystyle{ \tan{\phi} = - \frac{\omega L}{r} }

この解について , r \rightarrow 0とすると  \tan{\phi} \rightarrow - \infty より  \displaystyle{ \phi = - \frac{\pi}{2} }と書き下せて最初に挙げた形になっていることがわかります.
さらに,オマケをつけた場合も考えてみます.

コイルに内部抵抗と分布電荷がある場合

「ぶんぷでんか」って何?ということなのですが,コイルは導線をばねのように巻いたものであるため,その巻いた線の間に電荷が溜まってきます.これをモデル化すると,コイルに対して並列にコンデンサーが接続されている(内部コンデンサーとも呼べるようなもの)と考えることができます.
先ほどまでは電圧降下の式だけでしたが,今度は電流に関する式も考える必要があります.キルヒホッフをフル活用です.以下,内部抵抗の大きさを  r,内部コンデンサーの電気容量を  cとします.

  1. 電圧降下については,内部抵抗にかかる電圧: V_{\mathrm{r}}とコイルおよび内部コンデンサーにかかる電圧: V_{\mathrm{Lc}}の和が全体となるので, V = V_{\mathrm{r}} + V_{\mathrm{Lc}}
  2. 流れる電流については,並列部分で分かれているところに注意をして, I_{\mathrm{r}} = I_{\mathrm{L}} + I_{\mathrm{c}}
  3. 内部抵抗における電圧降下は, V_{\mathrm{r}} = I_{\mathrm{r}} r
  4. コイルでの誘導起電力による電圧降下と内部コンデンサーにおける電圧降下は等しく, \displaystyle{ V_{\mathrm{Lc}} = L \frac{d I_{\mathrm{L}}}{dt} = \frac{Q}{c} }
  5. 内部コンデンサーを流れる電流については, \displaystyle{ I_{\mathrm{c}} = \frac{dQ}{dt} }

ちょっとややこしいですが,これらの回路全体に流れる電流を知りたいので,最終的に求めたいものは  I_{\mathrm{r}}になります.ですが,微分方程式は, I_{\mathrm{L}}に対するものを立てることになります.
4. と 5. より, \displaystyle{ I_{\mathrm{c}} = \frac{d}{dt}( c V_{\mathrm{Lc}} ) = cL \frac{d^2 I_{\mathrm{L}}}{dt^2} }となることを用いると,
  \begin{align} V_0 \sin{\omega t} &= r (I_{\mathrm{L}} + I_{\mathrm{c}}) + L \frac{d I_{\mathrm{L}}}{dt} \\ &= crL \frac{d^2 I_{\mathrm{L}}}{dt^2} + L \frac{d I_{\mathrm{L}}}{dt} + r I_{\mathrm{L}} \end{align}

2階の微分方程式になってしまいました.でも,先ほどと同様に, I_{\mathrm{L}} = I \sin{( \omega t + t )}と置いて代入していくと,
  \displaystyle{ I_{\mathrm{L}} = \frac{V_0}{\sqrt{ r^2 (1 - cL \omega^2)^2 + (\omega L)^2 }} \sin{( \omega t + \phi )} }
 ただし, \displaystyle{ \tan{\phi} = - \frac{\omega L}{r (1 - cL \omega^2)} }

さらに,2. を用いて,
  \displaystyle{ I_{\mathrm{r}}  = I_{\mathrm{L}} + I_{\mathrm{c}} = \frac{(1 - cL \omega^2) V_0}{\sqrt{ r^2 (1 - cL \omega^2)^2 + (\omega L)^2 }} \sin{( \omega t + \phi )} }

 c = 0とすると,先に示した内部抵抗のみの結果になります.

「2024年同志社大(全学部理系)物理[II]」のメモ

この問題への補足として上の内容を書いてもよかったのですが,補足にしては量が多いこともあって先に書いてしまいました.
この問題では,コイルに内部抵抗がある場合を考えています.ですので,電源を交流電源に切り替えてからの(エ)〜(オ)は,上の前半の内容が当てはまります(解答もほぼそのまま).そのあとの回答についても,上に出てきている考え方を応用しています.そして,この問題にも「それ,何を言ってるの?」なところが出てきます.
なお,このようなブリッジ回路は,「マクスウエルブリッジ回路」と呼ばれます.

2024年同志社大(全学部理系)物理[II]
直流電源に繋いだとき:(ア)〜(ウ)

直流のブリッジ回路なので,難しくはないと思います.

(ア)
2点  \mathrm{P}_2, \ \mathrm{P}_3が等電位になるので,可変抵抗の抵抗値を  Rとすると抵抗値について  R_1 : r = R : R_2が成り立つことから求まります.

コンデンサーとコイルが蓄えるエネルギーの公式を用います(そのために必要な電圧なり電流なりを求める).
(イ)
可変コンデンサーにかかる電圧は,可変抵抗と同じで, \displaystyle{ V_{13} = \frac{R_1}{R_1 +r} E }(電圧の比は  \mathrm{P}_1 \mathrm{P}_2, \ \mathrm{P}_2 \mathrm{P}_4での比を用いる)となります.あとは, \displaystyle{ \mathcal{E}_{\mathrm{C}} = \frac{1}{2} C{V_{13}}^2 }より求めます.

(ウ)
コイルを流れる電流は,  \mathrm{P}_1 \mathrm{P}_2 \mathrm{P}_4での電圧降下の関係: E = I_{\mathrm{L}} (R_1 + r) より求まります.あとは, \displaystyle{ \mathcal{E}_{\mathrm{L}} = \frac{1}{2} L {I_{\mathrm{L}}}^2 }を用います.

交流電源に繋いだとき

ここからある意味思考の邪魔をするように『ベクトル表現』がついて回ってきます.以下では,原則上で用いた三角関数の方法で片付けていきます.

コイルのインピーダンスと位相差:(エ)〜(オ)
 \mathrm{P}_2 \mathrm{P}_4, \ \mathrm{P}_3 \mathrm{P}_4の電圧降下が等しいことを用います.
  \begin{cases} \displaystyle{ V_{24} = r I_1 \sin{\omega t} + L \frac{d}{dt} \left( I_1 \sin{\omega t} \right) = \sqrt{r^2 + (\omega L)^2} I_1 \sin{(\omega t + \alpha)} } \\ V_{34} = R_2 I_2 \sin{(\omega t + \phi)} \end{cases}

抵抗に相当するのは  \sqrt{r^2 + (\omega L)^2},位相差については  \displaystyle{ \tan{\phi} = \tan{\alpha} = \frac{\omega L}{r} }となります.

コンデンサーに流れる電流と位相差:(カ)〜(キ)
 \mathrm{P}_1 \mathrm{P}_2間と  \mathrm{P}_1 \mathrm{P}_3間の交流電圧が等しいことから』可変抵抗と可変コンデンサーにかかる電圧は  V_{12} = R_1 I_1 \sin{\omega t}に等しいことがわかります.
すると,コンデンサーに蓄えられている電気量は  Q_{\mathrm{C}_0} = C_0 V_{12}となり,これの時間変化量が電流となるので, \displaystyle{ I_{\mathrm{C_0}} = \frac{dQ_{\mathrm{C}_0}}{dt} = \omega C_0 R_1 I_1 \cos{\omega t} }が流れる電流となります.

すると,点 \mathrm{P}_3に流れ込む電流は, I_{\mathrm{C_0}}と可変抵抗を流れる電流との和になります.
  \displaystyle{ I_{\mathrm{C_0}} + \frac{V_{12}}{R_0} = R_1 I_1 \left( \omega C_0 \cos{\omega t} + \frac{1}{R_0} \sin{\omega t} \right) = \sqrt{(\omega C_0)^2 + \left( \frac{1}{R_0} \right)^2} R_1 I_1 \sin{(\omega t + \beta)} }

これが,抵抗 \mathrm{R}_2を流れる電流に等しいことから, \displaystyle{ \tan{\phi} = \tan{\beta} = \frac{\omega C_0}{1/R_0} = \omega C_0 R_0 }となります.ここは, \sin, \ \cosの形まで書き下せば,あとは係数の比として回答は導けます.

コイルの内部抵抗と自己インダクタンス:(ク)
解答欄は 1つですが,2つの物理量を求めることになります.書かれている文章がややこしいですが,意味がわかると「あ,そういうこと?」となります.先に,高校物理的な回答を書いておきます.

  1. 『Gに電流が流れていないことから  \mathrm{P}_1 \mathrm{P}_2 \mathrm{P}_2 \mathrm{P}_4 \mathrm{P}_1 \mathrm{P}_3 \mathrm{P}_3 \mathrm{P}_4はそれぞれ直列接続とみなせて, I_1 \sin{\omega t}の位相と同じ位相の電圧に対応するベクトル表現』
  2.  I_1 \sin{\omega t}の位相と  \displaystyle{ \frac{\pi}{2} }ずれた位相の電圧に対するベクトル表現』

これら 2つは同じベクトル図の中で考えるものになります.
インピーダンスを求める図において,水平方向の成分(1.)と鉛直方向の成分(2.)のそれぞれでつり合いを考えることを記しています.

  1. → 水平方向の成分について,電圧降下が等しい式すなわちホイートストンブリッジ回路の抵抗間で成り立つ比を書き下せばよく,
  2. → 鉛直方向の成分について,位相差を与える部分が等しい式を書き下せばいい(すでに,上の問いで等しいことが与えられている)

となります.それぞれの式を立てると,

  1.  R_1 : r = R_0 : R_2より, \displaystyle{ r = \frac{R_1 R_2}{R_0} }
  2.  \tan{\phi}に関する(オ)と(キ)の 2式より  \displaystyle{ \frac{\omega L}{r} = \omega C_0 R_0 }

これらを組みわせると, L = C_0 R_1 R_2と求まります.

これを先ほどまでの三角関数で解くと以下のようになります.それぞれの区間での電圧降下の式を書き下して表にすると,

 V_{12} = R_1 I_1 \sin{\omega t}  V_{24} = r I_1 \sin{\omega t} + \omega L I_1 \cos{\omega t}
 V_{13} = V_{12} = R_1 I_1 \sin{\omega t}  \displaystyle{ V_{34} = R_2 \left( I_{\mathrm{C_0}} + \frac{V_{12}}{R_0}  \right) = R_1 R_2 I_1 \left( \frac{1}{R_0} \sin{\omega t} + \omega C_0 \cos{\omega t} \right) }

この表の  \sin同士の係数比が上の 1., \cos同士の係数比較が 2.に相当します(実質,右側の 2つが同じになる条件を書き出せばいい).つまりは, \sinが水平成分, \cosが鉛直成分を表しているということです*4.そして,こちらの方だと 2.からダイレクトに答えが出てきます.

2024/02/25追記:『ベクトル表現』について

忘れないうちに追記をしておきます.(ク)については上で触れていますが,ほかの箇所の「表現」についても触れておきます.注釈にも記しているように

  • 位相  \omega tの方向を「基準」となる水平方向としていること(水平軸と鉛直軸自体が  \omega tで回転しているので相対的な関係をみるために)
  •  \displaystyle{ \cos{\omega t} = \sin{ \left( \omega t + \frac{\pi}{2} \right) } }であること

を意識してもらえばよいかと思います.

問題文中に現れている内容をそれぞれ言い換えをしてみると,

  • (エ)『電流の位相を基準にとり電圧に対応するベクトル表現で』→電流の位相: \omega tを基準とすると(水平方向にとれば),抵抗による電圧降下( \sin{\omega t}の係数)が水平成分,コイルによる電圧降下( \cos{\omega t}の係数)が鉛直成分となって
  • (キ)『電圧の位相を基準にとり電流に対応するベクトル表現で』→電圧の位相: \omega tを基準とすると(水平方向にとれば),可変抵抗に流れる電流( \sin{\omega t}の係数)が水平成分,可変コンデンサーに流れる電流( \cos{\omega t}の係数)が鉛直成分となって

といった感じになります.すみません,うまく問題文中の後に続くような表現にできていません.言葉だけで表現するのは(式と合わせて考えないと)少々無理があるなあと感じています.


交流回路の部分については,大学などでの電磁気学(どちらかというと工学部や電気技術者が使う方)では,ベクトルではなく複素数平面*5でこれらを取り扱います.すると,最後の内容は実部と虚部がそれぞれ等しいという式から簡単に導くことができるようになります*6
ベクトルを用いた図形的な解法が主ですが,三角関数を用いた解法も高校数学の範囲で考えられる内容ではあるので,一度なぞっておいてもよいのではと思います.
2020年の京大第2問で出てきた「昇圧チョッパー回路」*7といい,実際に利用されている回路を取り扱う問題は要チェックなのかもしれません.

(2024/03/10追記)
今年の北海道大前期で交流回路の問題が出ていました. I = I_0 \sin{(\omega t + \alpha)}と置くケースの問題でした.内容は RLC直列回路の典型的なものでしたが,電流の形を置くのはあまり見かけないかもしれません.参考になれば幸いです.

*1:抵抗に対してはレジスタンス,コイルとコンデンサーに対してはリアクタンスと呼ぶことがあります.

*2:積分定数を決めるために,時刻: t = 0における初期条件を与えるなどすればよい.また,この後で記している流れる電流を置くことからも導くことができる.

*3:2つ目の位相に関する式は厳密に言えば, \phi + \alpha = 2 \pi n

*4: \displaystyle{ \cos{\omega t} = \sin{\left( \omega t + \frac{\pi}{2} \right)} }より,これら 2つはつねに直交しています.つまり,互いに独立した成分と考えていいわけです.もう少しイメージを付け足すと,ベクトル図において横軸と縦軸の関係になっていて,かつ,その関係を保ったまま軸自体が角度: \omega tで回転している.という感じです.

*5:フェーザ図と呼ばれます.

*6:逆にその様子を見ていると,キーとなる素子や小さい回路をなぜ対角に置くのかもわかってくる.

*7:参考物件です.miwotukusi.hatenablog.jp