高校物理の熱力学が苦手という人は、結構多いように思います。中学校の理科でも出てこなかったような内容なので、苦手というよりも慣れていないということなのかもしれません。
熱力学の第1法則
何を表しているかと言われると、「気体におけるエネルギー保存則」ということになります。その「公式」とは次のとおりです。
(:外部より与えられた熱量、:内部エネルギーの増加量、:外部にした仕事)
公式よりも大事なモノ
教科書や参考書に書かれている公式は、上のタイプだけではなく、各項の位置が異なっているものもあります。物理の公式と呼ばれるものは、欲しい物理量を求めるものというよりも、物理現象を表しているものである。このことが、本質であり大事なことだと思います。熱力学第1法則は、そのことを色強く表しているものだと思っています。
じゃあ、何が大事なの?
本題に戻します。上で書いた公式は式自体を太字にしていますが、本当に大事なのは括弧内に書かれている物理量です。各項の位置が異なる式というのは、
が外部「へ与えた」熱量であったり、
が外部「からされた」仕事であったり、
しているわけです。力学を習うと、ベクトル量(大きさと向きをあわせ持った量)を扱いますが、熱力学でも「どちら向きにどれだけの量を動かしたか」ということが重要になってきます。
公式の覚え方
公式は物理現象を表しているのですから、何かわかりやすい物理現象を取り上げてあげればいいわけです。わたしは「風船を温める」ことで覚えるようにしています。
熱量:を与えたら、
風船の中の空気は温かくなり(内部エネルギー:だけ増加)、
風船は膨らんだ(風船の外へ向かって仕事:をした)。
という流れです。このようにすれば、それぞれの「向き」も合わせておさえることができます。熱が出ていく、中の気体が冷える、縮む(体積が減る)といった場合には、向きが逆なので負号をつければよいことになります。
厳密に言えば物理現象を「原因と結果(因果関係)」と関係として表したものが公式と呼ばれるものになります。できれば、公式は公式ではなく、物理現象を表していることを意識してもらえれば、公式自体も受け入れやすくなるのではと思います。