みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

「2021年京大物理第1問」のメモ

ほぼ1年ぐらいぶりのネタ書きになります*1.とりあえず京大さんと阪大さんのメモを書いていきます.全体的に近似など「物理的な計算」は増えてる印象です.

では,京大さんの第1問から.
ボールをぶつけて,小球をどんどん高く上げていくというアゲアゲな問題です.力学的エネルギー保存則/運動量保存則/弾性衝突の式を立てられれば解ける問題です.

(1) 1回目の衝突

まずは,ここで小手調べです.ちょっとていねいに書いておきます.図も載せておきます.

図1 1回目の衝突

  • [ア]は,力学的エネルギー保存則から
  • [イ]は.水平方向の速度が変わらないことと  \sin^2{\theta_1} + \cos^2{\theta_1} = 1の式変形から
  • [ウ]は,衝突直前での運動量の和(図1(b)に描かれている符号も確認しつつ)
  • [エ]は,これも符号に注意しながら,衝突直前の相対速度を書きます.

[ウ]の運動量保存則の式と[エ]の弾性衝突の式を連立させて解いて,[オ][カ]が求まります.
ボールの衝突直後の速度成分が 0となるように,ボールの質量を定めます([キ]).ボールが勢いを失った分,小球に勢いがつくというわけです.このときの  M = 3mを代入して,[ク] v_1 = 2 V_0を得ます.

(2) 衝突の繰り返し

ページを移った瞬間目に入ってくるのは,まさかの漸化式です.ただ,その前に書かれている文章を式に書き換えられていれば,なんてことありません.

  • 運動量保存則: m \cdot a_n V_0 = -m \cdot a_{n-1} V_0 + M_n \cdot V_0
  • 弾性衝突の式: \displaystyle{ 1 = - \frac{ a_n V_0 }{ -a_{n-1} V_0 - V_0 } }

図2  n回目の衝突

2つ目の式から,数列: \{ a_n \}の漸化式が導かれます([コ]).階差数列だなんだと言ったりすることもなく,「2からスタートして,1ずつ加えていくだけ」の数列の一般項を求めます([サ]).

[シ]のところは,最大高度では水平方向の速度しか持たないことに注意して,力学的エネルギー保存則の式を立てて変形するだけです.
  \displaystyle{ mg (h_n - h) + \frac{1}{2}m \left\{ (n+1)V_0 \cos{\theta_1} \right\}^2 = \frac{1}{2} m \left\{ (n+1)V_0 \right\}^2 }

左辺第2項を右辺に移項すれば, 1 - \cos^2 = \sin^2の変形が使えるので,この計算は全然難しくありません.
鉛直方向の変位の式(時刻を変数とする式)を考えて,完全平方の形から最大値を求める方法でも同じ答えは導けます.

問1 (2)の補足と計算問題

(i) ボールの質量を決定

これは,上の運動量保存則の式に  a_n = n+1を代入して, M_nを求めます.

(ii) 計算問題

(i)で求めたボールの質量を大きくできる上限から,衝突回数を決めて,そのときの最大高度を求めます.[シ]で導出した式に  h=0, \ n=4 h=0, \ n=0を代入して,その比をとるだけです.


図や問題文の説明が逆にていねい過ぎて*2,難しくみえる問題なのかもしれません.第3問もそんなところがある問題だなと思っています.
ということは,第2問はややこしいわけです.

*1:たまにこうやって書かないと, \TeXの書き方を忘れてしまう.

*2:言葉の定義などに正確を期すためというのが主になっていると思います.