京大さん第3問は,波の問題です.前半はX線,後半は中性子の物質波を扱います.解いてみての感想は「すっごい前振りをしておいて肩透かし」です.そのワケについては後ほど.
(1) 空気と結晶内の屈折率が同じであるときの干渉条件
結晶だなんだといってますが,計算は薄膜の干渉と変わらないわけで,補助線引いて物理的な経路差を求めるだけです.
- [あ]:点PからQを通る光線に垂線を下ろして,その足と点Qの長さを求めます.2倍にするのをお忘れなく.
- [い]:単に強め合う条件を書くだけですね(ブラッグ反射の条件).
(2) 結晶内の屈折率が であるときの干渉条件
- [う]:屈折率の式を立てるだけです.
- [え]:光学的距離の話ですね.
[お]は,ちょっとした計算量があります.次に引く補助線は,点Qを通る光線が面Iで屈折する点(点Q')から点Pを通る光線に垂線を下ろします(この足を点P'としておきます).位相差は光路差を波長で割ることで求められ,
[か]は,この位相差が の整数倍であることを書きくだすだけです.
(3) 物質波の干渉
ちょっと問題の設定がややこしいです.平行四辺形上に結晶を配置された平面が水平面と傾き:をもって置かれているという設定です.そして,結晶はハーフミラーのような役割をしています.経路ADCEと経路ABCEを通った中性子の速さは点Eでは同じになります.ただ,辺ABでは速さが のまま,辺DCでは速さが よりも小さくなって(先に減速している)おり,この区間での差が物質波の干渉として現れることになります.
で,「肩透かし」と言っているのは『結晶中の屈折率は近似的に として取り扱うものとする。』のところです.この時点で,(2)の内容はいらないということになります.上でハーフミラーと書きましたが,ほんとうにハーフミラーの扱いをしておけばいいという問題になっています*1.
と,気が抜けたまま解答です*2.
[き]は,まず辺DCにおける速さを とでも置いて,力学的エネルギー保存則から求めます.
あとは,物質波の波長の式から の比をとって,
結果のところをみると,分母の方が少し小さいので,となります*3.
問1 正弦波の位相差
(2)で一度位相差の計算をしているので,もしかするとここだけは(2)の内容が入っていると言えるのかもしれません.そして,いつもの近似大会です.求める位相差を と表すことにすると,
問2 平面を回転させたときの観測
まずは,この問題文の冒頭で与えられている数値について整理をしておきましょう.問1の答えである位相差の式にある変数を書き換えていきます.
- については,物質波の波長の式を用いて,
- 平行四辺形ABCDの面積は,そのまま となります.
(i) 中性子ビームが強め合う回数
平面の傾きが となったとき,先に計算した式のどこに影響が出るのかというと,中性子が「上がった高さ」を としているだけです.ですので,このときの位相差を と表すことにすると,
に対して,と変化するので,この間に の整数倍となる回数が何回あるのかをカウントすればいいわけです.
より,までの9回強め合いが起こります.
(ii) はじめて弱め合うときの角度
位相差がはじめて の奇数倍となるときを考えればよいので,
割り算を計算して,となります.度に直すと,約と小さな角度となります.上の強め合うときの角度は,おおよそ の間隔で起きていきますが,最後に強め合うのは約のときとなります.これは位相差が で与えられる「高さ」に依存していて,角度が小さいときは少しの角度でも高さの差は出やすいが,どんどん立ち上がってくるにつれて高さの差が出なくなってくることに起因しています.
三角比と近似計算ぐらいしかないので,難しい問題ではないと思います.第1問と第3問は問題設定のややこしさはあるものの素直な問題だったと思います.第2問は,普通は考えないところに話が突っ込まれているので,ちょっとクセありというところでしょうか?
それよりも,阪大さんの方がもっとクセが強かった印象です.