理系男子の独り善がり

仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

ちょっと面倒くさい 1次変換の問題 ~その1~

むかし出会った 1次変換の問題です.問題のレベルは決して高くないのですが,ちょっと面倒くさいという問題です.いつもの備忘録も兼ねて,以下に記しておきます.

問題

座標平面上に相違なる 4点 P_1, \ P_2, \ P_3, \ P_4があり,1次変換 fにより
  P_1 \rightarrow P_2
  P_2 \rightarrow P_3
  P_3 \rightarrow P_4

と移されるものとする.また,P_2, \ P_3, \ P_4は同一直線 \ell上にあるとする.

  1.  f : P_4 \rightarrow P_5とするとき,点 P_5は直線 \ell上にあることを示せ.
  2.  f : P_0 \rightarrow P_1となる点 P_0が存在すれば,点 P_1は直線 \ell上にあることを示せ.
  3. 直線 \ellが原点を通らないならば,点 P_1は直線 \ell上にあることを示せ.


一応,図にしてみると以下のようになります.
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どう攻める?

ベタな方法としては,「点 P_n(n=1,2,3,4)の座標と 1次変換 fを表す行列 Aの成分を与え,条件を用いながら示していく.」ことになると思います.ただ,変数が非常に多くなってしまい,条件がつくとはいえ処理をするのは大変です.
そこで,
 点P_n(n=1,2,3,4)の位置ベクトルと 1次変換 fを表す行列 Aを用いる

ことを考えていきます.

  • 1次変換を行列とベクトルを用いて表すこと
  • 「直線上にある」をベクトルを用いて表すこと

ポイントは,この 2つだけです.とはいえ,面倒なのですけど...

「やっちまったなぁ〜!」という解法

自身もはじめはここに示す考え方をしていました.
恥さらしではありますが,しばらく書き進めてみますので,どこで間違いを犯しているのか粗探しをしてみて下さい.

【恥さらし,ここから】
以下,点 P_nの位置ベクトルを \overrightarrow{p_n}と表すことにします.すると,
  \overrightarrow{p_2} = A \overrightarrow{p_1}
  \overrightarrow{p_3} = A \overrightarrow{p_2} = A^2 \overrightarrow{p_1}
  \overrightarrow{p_4} = A \overrightarrow{p_3} = A^3 \overrightarrow{p_1}

とこれら 4つの点は \overrightarrow{p_1}Aだけで表すことができます.
そして,「直線上にある」は「定数倍」であるということから
  \color{red}{ \overrightarrow{p_4} - \overrightarrow{p_2} = s \cdot \left( \overrightarrow{p_3} - \overrightarrow{p_2} \right) }

と表すことができます.(sは実数)
実数 sについては,s \neq 0(P_4P_2は異なる点である),s \neq 1(P_4P_3は異なる点である)という条件がつきます.

\overrightarrow{p_2}, \ \overrightarrow{p_3}, \ \overrightarrow{p_4}を上で与えた式で書き換え,整理すると単位行列Eとして,
  \begin{align} (A^3-A) \overrightarrow{p_1} &= s \cdot (A^2-A) \overrightarrow{p_1} \\ A(A-E)\{ A-(s-1)E \} \overrightarrow{p_1} &= \overrightarrow{0} \end{align}

と変形できます.

  • A=Oだと,点 P_2, \ P_3, \ P_4は原点に移されてしまい,相違なることに矛盾
  • A=Eだと,4点が相違なることに矛盾

なので,
  A \overrightarrow{p_1} = (s-1) \cdot \overrightarrow{p_1} \ (s \neq 0, s \neq 1)

であることが示されます.
【恥さらし,ここまで】

間違いは,因数分解」をした後の場合分けです.あくまでも Aは行列なので,このような場合分けをすることはできません.これができてしまうと, A^2=0 \Rightarrow A=0も言えてしまうことになります.

もし上に挙げている関係式が確実に言えれば,点 P_5, \ P_0が直線 \ell上にあることを示すのは難しくありません.逆にここまでやってしまうとダメということなので,そこまでこねくり回さない方法を考えていくことになります.

問1

これは,あっさり片付きます.上で書いた関係式に左から Aをかけて,
  \begin{align} A \left( \overrightarrow{p_4} - \overrightarrow{p_2} \right) &= s \cdot A \left( \overrightarrow{p_3} - \overrightarrow{p_2} \right) \\ \overrightarrow{p_5} - \overrightarrow{p_3} &= s \cdot \left( \overrightarrow{p_4} - \overrightarrow{p_3} \right)\end{align}

すると,3点 P_3, \ P_4, \ P_5は同一直線上にあることがいえます.直線 P_3P_4は直線 \ellそのものですから,点 P_5も直線 \ell上にあることが示されました.

問2

さっきよりはちょっとひねりを加えます.これも上で書いた関係式から,行列 Aの関係式を書き出します*1
  A^3-A = s \cdot (A^2-A)

この式を \overrightarrow{p_0}にぶつけると
  \begin{align} (A^3-A) \overrightarrow{p_0} &= s \cdot (A^2-A) \overrightarrow{p_0} \\ \overrightarrow{p_3} - \overrightarrow{p_1} &= s \left( \overrightarrow{p_2} - \overrightarrow{p_1} \right) \end{align}

となって,3点 P_1, \ P_2, \ P_3は同一直線上にあることがいえます.あとは問1と同様です.


問3は,ちょっと違った視点から攻めることになります.それは次回にて.

2017/07/19補足

上の赤字で記した関係式から,
  \overrightarrow{p_4} - \overrightarrow{p_3} = (s-1) \cdot \left( \overrightarrow{p_3} - \overrightarrow{p_2} \right)

という関係が導かれます(式変形で導くのであれば,赤字の式の両辺に \overrightarrow{p_2} - \overrightarrow{p_3}を加える.図を描いても,すぐに導ける.).これは「次のとなりの点までの距離は,前のとなりの点との距離の s-1倍」ということを表しています.このことからも,

  •  s \neq 0:もし s = 0だと,点  P_1をはさんで「ピンポン」してしまう( -1倍ゆえに).
  •  s \neq 1:もし s=1だと,点  P_1から動かない.

という条件が必要であることがわかります.

*1:当然のことですが,\overrightarrow{p_1} \neq \overrightarrow{0}であることをしめした上でです.