期待値の計算は、センタ試験ならではのコツがあります。タラレバの話も含め、また例題で考えてみます。
もう一つ例題
次は、2012年の数学IAからです。
1から9までの数字が一つずつ書かれた9枚のカードから5枚のカードを同時に取り出す。(中略)次のように得点を定める。
- 取り出した5枚のカードの中に5と書かれたカードがない場合は、得点を0点とする。
- 取り出した5枚のカードの中に5と書かれたカードがある場合、この5枚を書かれている数の小さい順に並べ、5と書かれたカードが小さい方からk番目にあるとき、得点をk点とする。
以下、0~3点を得るそれぞれの確率と得点の期待値を求める設問が続きます。結局、4点、5点を得る確率も計算しなければなりません。
最後に期待値を計算するような問題の場合、端っこの確率はすぐに求められることが多いです。いまの問題であれば、0点の場合と5点の場合です。特に、5点の場合は問題文には直接現れないものの、問題全体を考える中で重要な役割を果たしています。
- 0点の場合は、5のカード以外の8枚から5枚を選び出すので、その確率は となります。
- 5点の場合は、5のカードがもっとも大きくなる=1~5のカードが選び出されるということなので、となります。
5点のときには選ばれるカードが決まってしまう。ここがポイントです。選ばれるカードを太字で表すことにすると、以下のようになっています。
5点の場合 → 1 2 3 4 5 6 7 8 9
「逆に」1 2 3 4 5 6 7 8 9となれば・・・、これが1点の場合を示しています。
あとは、5のカードを「またいで」左右からそれぞれ何枚のカードが選ばれればよいのかを調べることになります。これが考え方の肝の部分です。上のように並べた数字のどこが選ばれているかというイメージができれば、ここへ落とし込むことができるわけです。
少し具体例を書けば、
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 → 得点は2点 → 左側から1枚、右側から3枚選ぶ
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 → 得点は3点 → 左側から2枚、右側から2枚選ぶ
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 → 得点は4点 → 左側から3枚、右側から1枚選ぶ
ということになります。
このように書いていくと、勘のいい人なら「なんだ、2点の場合と4点の場合は確率が同じか~」ということに気付くと思います。単に左右が逆なだけだからです。
期待値の計算には各事象の確率が必要
もう一度設問を見返すと、0~3点を得るそれぞれの確率の計算はしなければならないものの4点、5点は設問にありません。上のように気づいた人はそのまま期待値計算に持ち込めますが、気づかない場合や単純に求められない場合もあります。そんなときに使えるのが、確率の基礎とも言える内容なのです。
各事象の確率の総和は1である。
そうです。きちんとそれまでの確率を計算できていれば、残り1つの事象の確率は1から引いた答えになるのです。
- 0点の確率=
- 1点の確率=
- 2点の確率=
- 3点の確率=
- 5点の確率=
これらの確率(分子)をすべて足し合わせると、
分母は ですから、4点の確率は 1-110/126=16/126と求められます。2点の場合と同じ確率であることも確認できます。
期待値の計算においては、なるだけ通分は最後にした方がよいです。これは計算をしてみれば自ずと気づくとは思います。
期待値=(0×56 + 1×1 + 2×16 +3×36 +4×16 +5×1) ÷ 126=210÷126=5/3点
最悪の場合、樹形図を描き数え上げるという荒業もあります。これもシミュレーションです。そうしているうちに、規則性や考え方に気付くのではないかと思います。さいころを2回振る試行であれば、全事象でも36通りしかありません。全部書き出すのもアリといえばアリですね。