みをつくしのひとりよがり

2022/08/10にブログ名を変えました.仕事や生活に役立ちそうな(実際に役立つかは別として)数学・物理ネタをつらつらと書いていこうと思ってます.

2024年大学共通テスト「物理基礎」の簡易メモ

遅ればせながら,物理基礎の問題も至極簡単にですが,メモを残しておきます.

第1問(小問集合)

順に,熱容量の問題,仕事とエネルギーの問題,電気量とは?の問題,エネルギー効率の問題です.最後の問題が,公式というよりは割合の問題としてちょっと戸惑ってしまうかもしれないですね.

第2問(浮力の探究)

ジャガイモを使って,浮力についての実験と考察をしています.

問2

ジャガイモを沈めるにつれて,キッチンはかりの値が大きくなっています.これは,「浮力の反作用力」によると言われたりします.というのですが,ジャガイモを沈めていくと,水面下には(もとからある水の体積)+(水面下にあるジャガイモの体積)が存在しています.言い換えれば,水面が上がっているわけです.その上昇の分,水圧も大きくなります…という流れで計算すると,このキッチンはかりの増分を求めることができます.

問3

キッチンはかりの値が大きくなるにつれて,ばねはかりの値は小さくなるので,4〜6に絞り込まれます.キッチンはかりの値が一定の割合で増えていくとき,ばねはかりの値がどう変わっていくかという見方ができれば答えが導けます.いまは,両方のグラフともに直線的に増えたり減ったりをしているので,4になります.

問4

ここに触れたくてメモを書いたという経緯があります(笑).「ほかの立体で実験をしたときのグラフはどうなるの?」という話です.先にグラフを示しておきます.

2024年大学共通テスト物理基礎第2問問4(縮尺を合わせています)

立体の高さ(糸の下端と点Pとの距離)を合わせると,体積も合わないところがある*1ので,グラフの両端が合うようにスケールを変えています.球と立方体については,沈む体積の増え方(割合の変化)が徐々に大きくなって,真ん中を境に小さくなっていく(割合の変化は小さくなるが沈む体積自体は増えている)ことは想像できると思います.それが,想像できないと答えにたどりつかないですし...円すいは,最初から変化の割合が小さくなっていくので,ちょっと他とは違った曲線になっています.
以下の参考物件でも断面積が変化する話に触れていますmiwotukusi.hatenablog.jp

立方体の場合ですが,このグラフ(高さと体積の関数)を求めるのは,ちょっとややこしいです*2

  1. 立方体の対角線に沿って垂直に切った立体の体積がどのように変化していくかを調べなければいけません.
  2. たとえば,1辺の長さが 1である立方体を考えると,対角線の長さは \sqrt{3}となります.
  3. 水面下に沈む立体ですが,最初は三角錐(上面は三角形)ですが,途中上面の図形が六角形となり,また上面が三角形にもどります.Desmos3D(デモ版)なるものがあったので,そこで断面がどのように変化するかを描いてみました.www.desmos.com
  4. これを定量的に求めようとすると,図形だけを描いていても難しいので,空間座標を使います.原点と点(1,1,1)を対角線とする立方体を考えると,上面となる断面は  x+y+z=t \ (0 \leqq t \leqq 3)という平面の方程式として表すことができます.これと,xy平面,yz平面,zx平面とどのように交わっていくかを調べていきます.
  5. そこから断面の面積を求めて,それに微小な厚みをかけて積分をすればいいのですが, tは対角線に沿った量ではないので注意が必要です*3

上のグラフの描き方(体積変化の求め方)は,以下に記しました.
miwotukusi.hatenablog.jp

問5

ジャガイモが「着底」したら浮力はどうなる?という話です.[エ]の選択肢から考えると,わかりやすいかもしれません.ジャガイモが底に転がっているとき,水がまわりにあれば,浮力がはたらくのでその分垂直抗力は小さくなります.

問5の余談
沈んでいる立体の底面と容器の底面がともに真っ平だったら,浮力はどうなるの?という話があります.上の問いであれば,円柱や円すいの底面がぴたっと着底したら?という話です.上の参考物件でも,浮力の源は上面と下面の水圧の差だと書いています.なので,水という流体が底に入り込むことがない限り浮力ははたらかないという話になります.この件については,ネット上でもいろいろと議論があるようです.なので,この問題自体ちょっと意外でした.ジャガイモはそんな幾何学的な形ではないので,浮力がはたらくとして考えてよさそうです.

第3問(音速の測定)

音速を3種類の方法で測定していますが,ストップウォッチや同時に聞こえるといった人の感覚に頼っていると,ズレがでてきますよね.という結果を与えています.そして,真打ちとなる気柱の共鳴を用いた実験で正確な値が出てきます.「 v = f \lambda」の公式をいじっていくことが基本となります.
問3の選択肢は,「音速が遅くなる(遅く観測される)」→「音が届くまでの時間が長くなっている」→「届くまでの時間が長く測定されている」ということで,そのような観測結果を産むようなケースを選択すればよいです.
問4は,『ゆっくりと遠ざかっていった.』とあるので,ドップラー効果は無視して,単純に 70m先から届いてくるのに要する時間が音の鳴る間隔と同じと考えればよいです.


問われていることをきちんと理解できる(どのような量として表せばよいのか)かが問われているように感じる問題だったと思います.物理基礎なので,そういう問題だとも思います.

*1:たとえば,高さを合わせると,球の体積と立方体の体積の比は  \displaystyle{ \frac{\pi}{6} : \frac{1}{3\sqrt{3}} \fallingdotseq 0.52 : 0.19 }

*2:某大学理系数学の立体図形の体積問題にもありそうな感じです.

*3:平面の方程式の切片としての  tと対角線に沿った深さ  hとの関係を使う